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【英会話】夏の特別編1 a(an) I played the piano に首を振られた なんで?

英語雑学エッセイスト 徳田孝一郎英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

 仕事で英語を20年ほど話していますが、話し始めたころに困ったのは、a やthe と言った冠詞です。かなりの確率で間違える。
 普通に会話している分には多少間違えたっていいんですけど(本当は良かないですけどね、カジュアルなときは勘弁ってことで)、人様に英文法を伝えたり、英文法をネタにした小説を出版社に頼まれて上梓したりするとなると、勝手が違ってくる。そんなに間違えることができませんからね。こまった。

 間違える原因ははっきりしてるんです。それは丸覚えで対応してたから。
楽器にはthe、
会話の初めに出て来る名詞にはa(an) 、
school には何もつけない 
てな感じです。でも、理窟が判ってないから、応用が利かなくてすぐ間違える。楽器にa がつくこともあるし、school にthe がつくこともあるんですよ。

 これじゃあマズいなと思って、Native English Speakerたちにしつこく聞いて、
どういう基準でthe, a(an), 何もつけない というのを決めているか
を聞き出しました。もちろん、各人それぞれにちょっとずつ違っていたんですけど、それを参考に大学で習得した現象学を使って、自分なりの理窟を組み立てた。
 手前味噌でお恥ずかしいですが、この理窟なかなか優秀で、今ではほとんど間違えずにすんでいます。英語学的なものではない、あくまで私家版ですが、徳田流冠詞の奥義を夏の特別企画として今日から4日連続で公開します。

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昨日、楽器店でピアノを弾いたんだ。

 Native English Speakerと冠詞に関して話していて、すぐに問題になったのはこの 昨日、楽器店でピアノを弾いたんだ という文でした。高校・大学受験の英語講師や英語の編集者をやっていた時に、私が作ったオリジナルテキストのなかにあったんです。英文はこうです。

I played the piano at the music store yesterday.

 見せたとたんに、Native English Speaker全員がそれはa piano かpianos だって言いやがる。私は丸覚えで楽器にはthe って使って来たし、恐ろしいことに教えて来たし、さらに恐ろしいことに編集してきたんで、ぞっとする。
 当然、なぜpiano なのにthe じゃないのか? と尋(たず)ねるわけですが、まずもって、その質問がおかしいと言われました。代表して長年の友人でEnglish man のRichに登場してもらいますが、こうのたまう。

pianoにthe とかa がついてるんじゃないよ。the やa にpiano がついてるの。

 私としてはキョトンとして、どういうこと? というしかない。そしたら、Rich、

I played のあとに、見えてるモノをカテゴライズする(抽象のレベルを決める)のさ、それから名詞を置く。

というんです。
 どういうことかと言うと、見えているモノは、
特定のレベルか?⇒the
どれでもいいレベルか?⇒a(an もしくは複数のs) 
ふわっとした概念のレベルか?⇒無冠詞 

と考える(Native English Speakerとっては反射神経でしょうけど)んだそうです。

 私は目から鱗(目に鱗が入ったのかもしれませんが(by 星新一 もうすぐホシヅルの日ですね))、どうもNative English Speakerたちは、現実を切り取る際に、抽象のレベルを決めてから、名詞を置くみたいなんです。

 みなさん、そういう基準で、

昨日、楽器店でピアノを弾いたんだ。

が、どうして、

I played a piano(s) at the music store yesterday.

となるか、お判りになるでしょうか?

 いかがでしょう? うまく理窟を組み立てられましたか?
 問題は 楽器店で という言葉があることです。
 自分が楽器店に行ったとして、その入り口に立って見える風景を想像してください。そこにあるものは特定のレベルでしょうか? どれでもいいレベルでしょうか? それともふわっとした概念のレベルでしょうか? 
 そう、どれでもいいレベルの風景が広がっているはずです。ずらっとピアノが並んでいて、そのどれを弾いたっていい。つまり、そういうなかでたまたま一台のピアノ(もしくは複数台のピアノ)を弾いたということを伝えたい。そんな時に使うのが、a もしくは複数のs ということになります。

 じゃあ、the piano ってどういうこと? という疑問を持たれると思いますが、それは、第2回をどうぞ。こちらです。

イラスト 大橋啓子

英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

英語嫌いだったが、仕事で必要に迫られ日本語を英語にする方法で英文法をマスター。その実績を買われて英会話習得カリキュラムを作成するために英会話スクールに転職し活躍する。この時期に英文法をネタにした小説「英語の国の兵衛門」も上梓。その後Vice-presidentに就任。Native English Speakerのマネージメントを経験し、日本人とは違った価値観や思考法に振り回されるという経験を多々する。現在は独立し、英会話スキルだけではなく、Native English Speakerとうまく交渉できるスキル習得を目指した英語・英会話研修スクール「英語・直観力」を経営している。

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