一度は入ってみたい!豪快にしぶきが落ちる天然の滝つぼがそのまま露天風呂に「吹上温泉 峯雲閣」
温泉ライターの泉よしかです。
以前訪れて、「滝がそのまま温泉」「滝つぼがそのまま天然の露天風呂」という、たぐいまれなロケーションに感激した宮城県・鳴子温泉郷の「吹上温泉 峯雲閣」!
今回再訪して取材してきたので、詳しくご紹介します。滝つぼ温泉のベストシーズンや、熱すぎる温泉を冷ます苦労、宿泊予約に関するお話など盛りだくさんです。
鬼首(おにこうべ)にある秘湯の宿「峯雲閣」!
「湯滝の川のお風呂に入りたければ、予定ありきではなく天気ありきで来てほしい」と言うのは、「峯雲閣」三代目館主の大場さん。それだけ自然そのままであり天候や気温に左右される環境の温泉ということです。
鳴子温泉・東鳴子温泉・川渡(かわたび)温泉・中山平温泉・鬼首(おにこうべ)温泉という5つの温泉地を抱える宮城県の鳴子温泉郷でも、一番北に位置し、山深い環境にある鬼首温泉は、その恐ろし気な字面からも強い印象を受けますが、その鬼首温泉に複数ある旅館の中でも、ひときわ奥まった自然の中にあるのが、今回ご紹介する「吹上温泉 峯雲閣」。
秘湯の一軒宿といった風情で、客室数は8室。日帰り入浴も受け付けていて、時間は10時から13時までとタイトですが、有名な滝つぼの露天風呂にぜひ入りたいと、はるばる遠方からもお客さんが訪れます。
それでは気になる滝つぼのお風呂からご紹介しましょう。
なお滝つぼのお風呂と混浴露天風呂は湯あみ着とバスタオル巻きOKです(水着は禁止)。だから女性も臆さずぜひ入ってみてください。
温泉が落ちてくる豪快な滝と、そのまま露天風呂になる天然の滝つぼ
「峯雲閣」には、男女別の内湯と混浴の露天風呂があり、内湯から混浴露天風呂を経由して滝つぼに移動できます。
これはなかなかありがたい作りで、まず内湯で体を洗ってから露天風呂や滝つぼに移動できますし、女性は内湯で湯あみ着やバスタオルを装着して露天風呂に出て、また戻ってきた時は内湯でそれを脱ぎ、絞ったりすることができるからです。
混浴露天の横を通って滝つぼへ
女湯から外に出ると狭い通路があります。
数段階段を下りると、右手に大きな混浴露天風呂、左手に川。
さらに歩みを進めると、滝つぼに出ます。すごい!本当にこれが全部温泉とは!?
滝つぼに入るのに、数歩ほど川原の部分を歩きます。ただの川原なので足の裏を鍛えていない人にはちょっと痛い。後からご主人に伺った話ですが、川のお風呂に移動するときは、草履、クロックスなどを履いても構わないそう(金具の付いた履物は安全のため禁止しています)。
というわけで、さっそく滝つぼに入浴!
この時は水量も温度もベスト(取材は9月初旬)。暑い日はアブが出ることもあるそうですが、幸いにもそれもなく、天候は爽やかな快晴!川岸の緑が木陰を作り、もう最高に気持ちの良い露天風呂日和でした。これは素晴らしい。こんな環境で温泉に入れるなんて、幸せ過ぎます!
こちらの滝は「峯雲閣」のお風呂の源泉とは異なりますが、すぐ近くの地獄谷で100度ぐらいで湧いている温泉が、そのまま川になって沢水などと混ざり流れてきています。まさに自然が作り上げた最強の露天風呂。
取材日の滝つぼのお湯の温度は37.3度と、いつまでものぼせずに入っていられる絶妙のぬる湯で、滝そのものも触って気持ちの良いシャワーでしたが、人為的に温度をコントロールできるわけではないので、季節によっては激熱になったり凍える冷水になったりします。
滝つぼのお風呂のベストシーズンは真夏を除きGW頃から秋まで
滝つぼの温泉に入れるシーズンについてもご主人に伺ってみました。年によって変動が大きく一概にはいえないようですが、真夏の川は50度を超えることもあり、一方で一番冷たくなる雪解けシーズンでは一桁の5~6度まで下がるとか。
また真冬は雪解けよりは入りやすい温度ですが、その場合に一番危険なのは川の温度よりも川原の凍結で、けがをするリスクや上がる時の寒さなどからお勧めできないとのことでした。
なにしろこのあたりは、冬にはダイヤモンドダストが見られるほど凍てつくそうです。それはそれで見てみたい!
最近は春から暑い日が多く、今年(2024年)はGWから入りやすい温度だったといいます。例年は6月上旬からお湯の温度が熱くなり始めるので、GWから秋の間で、川の温度が上がりすぎない時期か、あるいは気温が高くてもお湯がぬるい頃ならプールのように快適に入れるというお話でした。
というわけで、滝つぼのお風呂に入れる時期は、おおむね真夏を除きGW頃から秋までです。ただし天候やお湯の温度によっては入れません。
滝つぼのお風呂の持ち主は「峯雲閣」ではない?
ところで、実はこの滝つぼ自体は「峯雲閣」の敷地ではありません。というよりも全国の河川は全て自治体が所有しているので、結果的にこの滝つぼのある川も公共の場所ということになるのです。
といってもこの滝つぼの周辺の陸地は全て「峯雲閣」が所有しているので、実質的に「峯雲閣」の土地を通らずに滝つぼのお風呂に入ることはできません。
「峯雲閣」の内湯と混浴露天風呂
さて、内湯と混浴露天風呂は「峯雲閣」の自家源泉です。源泉2本を合わせて使っていて、泉質は弱アルカリ性の単純泉です。成分的にはナトリウム―塩化物泉寄りなので、かなり保温保湿の働きが高く、かつ弱アルカリ性の働きでお肌のクレンジング効果にも優れる温泉といえます。
そして温度が高い。湧出場所で80~90度近くあります。このままではとても入れない熱さですが、「峯雲閣」では安易に加水しません。基本的には清掃後にお湯を張り替えたら、そのまま一晩冷まします。
日帰り入浴が13時までなのは清掃時間を確保するため
日帰り入浴を受け付ける時間が3時間と短いのですが、それもお湯の温度を下げるために必要な時間。お風呂の清掃は13時に日帰りのお客さんが帰った後に行われ、デッキブラシで浴槽内を磨いて消毒した後、お湯を貼り直して冷まします。
夏場は本当に冷ますのに苦労するそうで、一晩おいてもまだ50度近くある場合はとても入れません。なので、特に気温が30度を超えるような日は、訪問前に電話で「今日は入れますか?」と問い合わせた方が安心。
朝の露天風呂の温度次第で、日帰り入浴の開始時間を遅らせたり中止することがあるからです。
混浴露天風呂に洞窟!?
「峯雲閣」の混浴露天風呂には一部洞窟のようなところがあります。これは何かというと、もともとは麹(こうじ)の室(むろ)として使っていたもので、後から露天風呂の方が作られました。露天風呂を作ったのは初代館主で、このあたりには珍しい大きな露天風呂がほしいと考えて作らせたそうです。確かに大きく、滝つぼとともにお宿の名物露天風呂になっています。
ちなみに今は室として使っていませんが、ちゃんと洞窟の中に入れます。浅くなっていますよ。瞑想スポットとしても良いかも。
熱い温泉の熱も再利用
先ほど温泉の温度を下げるのに苦労しているという話を書きましたが、源泉は湯船に注ぐ前に熱交換をしています。温泉の熱で水道水を温めて、シャワーや客室の温水暖房機に使うのです。エコロジーです。
熱交換をしてもまだまだ熱い時があります。滝つぼから斜面を見上げると生い茂る草の間にパイプが見えるかもしれません。実は暑い季節は湯船に注ぐ前に、このパイプの中に流して少しでも温度を下げているのです。
冬は冷えるのでこのパイプは通さずに直で湯舟に注ぎます。こうしてオールシーズン少しでも快適に入浴できるように工夫されています。
鬼首には地熱発電所があるぐらいですから、本当に熱いんです。地熱発電所が建て替えのために一時期運転を停止していた時には、さらに温泉の温度が高くなったらしいです。もうアッツアツです。
「峯雲閣」の客室は8室、予約は電話で
「峯雲閣」の客室は8室ですが、予約は電話のみ。オンラインでの宿泊予約は受け付けていません。
また準備の都合から当日の飛び込み予約は受けられないので、遅くとも3日前までに予約してほしいとのお話でした。
館内のWi-Fiはロビーのみ使えます。安全のため、夜間は露天風呂と滝つぼは入浴禁止です。
その他の注意点
宿泊または日帰りで「吹上温泉 峯雲閣」を訪問するにあたり、事前に知っておいた方が良いことをまとめます。
- 支払いは現金のみ(クレジットカードやQRコード決済は使えません)
- 脱衣所・お風呂は撮影禁止です(この記事の写真は、取材で許可を頂いて特別に撮影させてもらっています)。
- 貴重品は受付に預けて入浴してください(脱衣所にロッカーがありません)。
- 日帰り入浴の時間帯はお風呂のアメニティは石けんのみ(宿泊の時間帯にはシャンプーも置いてあります)。
- 混浴露天風呂・滝つぼは湯あみ着・バスタオル巻き可ですが、日帰りの場合はレンタルはありません(バスタオルの販売はありますが売り切れることもあります)。必要な方は忘れず持参してください。
- 夏はアブ、冬はカメムシが多いことがあります
山の中のお宿ゆえに、いろいろと不自由な面もありますが、それも含めて自然いっぱいの環境と、たぐいまれな天然の滝つぼ風呂をぜひ現地で体験してみてください。これが全部温泉!と、めちゃくちゃ感動できます。
吹上温泉 峯雲閣
住所:宮城県大崎市鳴子温泉鬼首吹上16 地図で場所を確認する
電話:0229-86-2243
定休日:不定休
日帰り入浴時間:10:00~13:00
日帰り入浴料:大人500円、子供300円(鳴子温泉郷湯めぐりチケット利用なら大人2枚、子供1枚)
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