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コメダの和喫茶「おかげ庵」本店オープン。トップ不在の和甘味喫茶シーンで全国を席巻するか?

大竹敏之名古屋ネタライター
「おかげ庵」ではおだんごや抹茶オーレなど和のスイーツ、ドリンクが目玉

コメダにはないぜんざい、きしめん、おにぎりモーニングも

名古屋を本拠地とするコメダ珈琲店(以下「コメダ」)の姉妹ブランド、「コメダ和(なごみ)喫茶 おかげ庵」(以下「おかげ庵」)の本店が、2023年2月20日、名古屋市瑞穂区にオープンします。

おかげ庵はコメダの“くつろぎ”を和のコンセプトで表現した喫茶店。あんみつやぜんざいなどの和甘味、自分で焼くおだんご、きしめんをはじめとする食事類、おにぎりのモーニングなど、コメダにはないメニューが充実。インテリアにも和の要素を取り入れ、コメダよりもちょっぴり上質なくつろぎを提供しています。

和甘味のセット、おにぎりのモーニング、抹茶シロノワール、レトロスパゲティ―など、コメダにはないメニューが多彩
和甘味のセット、おにぎりのモーニング、抹茶シロノワール、レトロスパゲティ―など、コメダにはないメニューが多彩

コメダ920店舗超に対しおかげ庵は20余年で12店舗

1号店のオープンは1999年と歴史は意外や長く、現在は愛知、東京、神奈川で12店舗。今や全国に920店舗以上を擁するコメダに対して、出店ペースは非常にゆるやかでした。

誕生から20余年、13番目の店舗にして「本店」と冠する狙いはどこにあるのでしょうか?

「これまではコメダの出店に注力し、今では全国のお客様に知っていただけるまでになりました。コメダに続くブランドとしておかげ庵が発展していくために、旗艦店となる本店を設けることにしたのです」(コメダ本部担当者)。

この言葉からも、“本店”のオープンはおかげ庵の本格多店舗化の布石であることがうかがえます。

右手奥に見えるのがコメダ珈琲店本店。旧本店跡に昨年10月リニューアルオープンした。おかげ庵本店も同じ敷地に併設。全80席とスケールはほぼ従来通り。地下鉄杁中(いりなか)駅より徒歩10分の郊外立地にある
右手奥に見えるのがコメダ珈琲店本店。旧本店跡に昨年10月リニューアルオープンした。おかげ庵本店も同じ敷地に併設。全80席とスケールはほぼ従来通り。地下鉄杁中(いりなか)駅より徒歩10分の郊外立地にある

出店場所は昨年秋にリニューアルオープンした「コメダ珈琲店本店」と同じ敷地内。2つのブランドの本店が並び立つことになりました。

店舗の特徴はこれまで以上に和を感じられるデザイン、インテリアを採用していること。外観では瓦をふいた屋根に赤い野点傘や松の木が目を引き、店内にも木の梁や盆栽、提灯と雅なエッセンスがふんだんに取り入れられています。

「併設するコメダの本店との対比でより和を強調しました。和のテーマパークとしても楽しんでいただきたいと考えています」(同)

木の梁を多用し盆栽や提灯もある店内。既存のおかげ庵と比較しても和の要素が強くなっている。デザイン面ではこれがスタンダードではなく、立地性などに応じて今後も様々なスタイルを取り入れていく意向だという
木の梁を多用し盆栽や提灯もある店内。既存のおかげ庵と比較しても和の要素が強くなっている。デザイン面ではこれがスタンダードではなく、立地性などに応じて今後も様々なスタイルを取り入れていく意向だという

コメダよりも若い女性客が多い(!)。コメダにはない強みも 

愛知や関東、郊外の独立型、商業施設内、コメダとの併設など、これまで様々な立地や条件で出店してきたおかげ庵。客層や利用動向でコメダとの違いはあるのでしょうか?

コメダと比べて女性客がやや多く、関東地区では特に若い女性のお客様が多い印象です。コメダと同様のくつろぎに加えて、より“映える”要素があり、おだんごを自分で焼く楽しさや和甘味や和食のヘルシーさもご支持につながっていると考えています」(同)。

和甘味をメインにすえた業態ゆえシニア向けかと思いきや、意外や若い世代にもウケているとのこと。他にも、デザートや食事メニューの充実から午後や夜間まで集客しやすくなる、というビジネスモデルとしての強みも。また、今回の本店のようなコメダとの併設店でも「その日の気分や混雑具合で両方を使い分けてくれるお客様が多い」(同)といい、お客の奪い合いをするのではなく、むしろ相乗効果も期待できるようです。

焼き台を使って自分で焼ける焼き物メニューが人気。写真はだんご三昧(630~700円 ※地域によって価格が異なる)。醤油、きなこ、あんこの3つの味を楽しめる
焼き台を使って自分で焼ける焼き物メニューが人気。写真はだんご三昧(630~700円 ※地域によって価格が異なる)。醤油、きなこ、あんこの3つの味を楽しめる

実は全国チェーン不在の和甘味喫茶。またもコメダがNo 1ブランドの座を?

出店ペースがこれまでなかなか伸びなかったおかげ庵ですが、これはひとえにメインブランドであるコメダが繁盛モデルとして強力すぎるゆえ。コメダは店舗のほとんどがフランチャイズ加盟店による経営で、おかげ庵も現在は直営店が多いもののフランチャイズによる多店舗化を見すえたビジネスモデルです。加盟店オーナーが、喫茶チェーンとして圧倒的ブランド力を誇るコメダを選択肢として優先するのは当然のこと。おかげ庵自体はそのコメダが業態・商品開発しているのですから完成度も高いのですが、知名度、ブランド力からどうしてもコメダの方が優先順位が高くなるのです。

しかし、コメダが喫茶シーンでナンバーワンの地位を確立したからこそ(テーブルサービス式の喫茶チェーンでは店舗数1位。セルフ式ではスターバックスコーヒー約1700店、ドトールコーヒーショップ約1000店舗が業界1、2位)、今後はセカンドブランドであるおかげ庵の出店増の可能性が膨らみます。特に地元・愛知県や関東圏では既にコメダがいたるところにあるため、コメダを新規出店しにくいエリアも少なくありません。そんな時、おかげ庵なら自社内競合せず出店しやすいのです。

今後は中京地区や関東から店舗を増やし、その他の地域でも順次出店していきたい」(同)とのことなので、いよいよ多店舗展開は本格化することが見込まれます。

全店舗に設えられている茶釜は特注品。細部へのこだわりが上質のくつろぎをもたらす
全店舗に設えられている茶釜は特注品。細部へのこだわりが上質のくつろぎをもたらす

コメダが本格的に全国展開する以前は、喫茶店チェーンはセルフ式以外は外食ビジネスとして成立しない、と思われてきました。和甘味をメインとする喫茶も、実は全国規模でチェーン展開しているブランドはほとんど見当たりません。業界の常識を覆してきたコメダだからこそ、トップブランド不在の和甘味喫茶の分野でも全国を席巻する可能性は大いにありそうです。かつてコメダがそうだったように、気づいたらあなたの町にもおかげ庵ができているかも、そしてあなたもそこでくつろぎの時を過ごしているかもしれません。

□ 関連記事:「業界トップのコメダとココイチ。名古屋発チェーンの実はスゴい!セカンドブランド」(2021年5月13日)

(写真撮影/すべて筆者)

名古屋ネタライター

名古屋在住のフリーライター。名古屋メシと中日ドラゴンズをこよなく愛する。最新刊は『間違いだらけの名古屋めし』。2017年発行の『なごやじまん』は、当サイトに寄稿した「なぜ週刊ポスト『名古屋ぎらい』特集は組まれたのか?」をきっかけに書籍化したもの。著書は他に『サンデージャーナルのデータで解析!名古屋・愛知』『名古屋の酒場』『名古屋の喫茶店 完全版』『名古屋めし』『名古屋メン』『名古屋の商店街』『東海の和菓子名店』等がある。コンクリート造型師、浅野祥雲の研究をライフワークとし、“日本唯一の浅野祥雲研究家”を自称。作品の修復活動も主宰する。『コンクリート魂 浅野祥雲大全』はその研究の集大成的1冊。

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