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日本に連敗は許されない北朝鮮女子サッカー! 雪辱を果たせるか? 今夜大一番の「日朝戦」

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
五輪第2次予選のタイ戦(赤のユニフォームが北朝鮮選手)(アジアサッカー連盟から)

 パリ五輪の出場権をかけたサッカー女子アジア最終予選の日本対北朝鮮の第1戦が日本時間の今夜10時(現地時間午後4時)にサウジアラビア・ジッダのプリンス・アブドゥッラー・アルファイサル・スタジアムで行われる。

 最終予選はホームアンドアウェー方式で2試合を戦うことになっており、第1戦は本来ならば、北朝鮮の首都・平壌でやる筈だった。それが、どういう訳か、北朝鮮が返上したため急遽第3国での開催に変更され、それもすったもんだしたあげく時間切れ寸前で中東のサウジアラビアに決まったようだ。

 サウジアラビアは「中立国」と日本では報じられているが、確かにスポーツに関しては中立的な立場にはある。が、サウジアラビアと北朝鮮は国交がなく、日本と違って政治、外交的には友好な関係にはない。大使館もなければ、海外僑民もいない。過去には中東で行われる試合には近隣のカタールやUAEなどに出稼ぎに来ていた労働者やレストラン従業員あるいは貿易マンらが国旗を持って駆け付けていたが、国連安保理の制裁で追放されたため北朝鮮の応援席はがらがらである。

 それだけに北朝鮮がなぜ不便なサウジアラビアでの開催に同意したのか知りたいところだが、おそらく希望していた北朝鮮の国境に近い中国・丹東での試合が中国から許可が得られなかったため仕方なく選択せざるを得なかったのだろう。敢えて一つだけ利点を上げるとすれば、サウジアラビアは北朝鮮男子が2010年の南アフリカW杯への44年ぶりの出場を決めた予選最後の試合が行われた縁起の良い地というぐらいであろう。

 どちらにしても、日朝共に地理的条件、移動時間、時差、そして気候的には全く同じ条件下で対戦することになるが、成田空港を20日に出発した日本の選手のほうが21日に平壌を出発した北朝鮮の選手よりも現地に1日早く着いた分、コンディション的には日本が若干有利と言えるかもしれない。

 日朝の過去の対戦成績は12勝5分け7敗で北朝鮮が勝ち越しているものの直近の5試合に限っては日本が3勝2敗と、北朝鮮を上回っている。また、FIFA(国際サッカー連盟)ランクでも日本は8位と、9位の北朝鮮よりもランクが上である。

 国際試合の成績を比較すると、日本はW杯に9回出場し、優勝を1回(2011年のドイツW杯)、準優勝を1回(2015年のカナダW杯)しているが、北朝鮮のW杯出場は4回で、過去最高は2007年のベスト8である。また、オリンピックも日本は過去、5回出場し、2012年のロンドン五輪では準優勝しているが、北朝鮮の五輪出場は2回(2008,2012年)のみでいずれも予選落ちしている。

 唯一、アジア大会に限っては日本の9回出場に対して北朝鮮も8回とほとんど差はなく、優勝回数も3対3対と、互角である。日本は2010年、2018年、2023年に、北朝鮮は2002年、2006年、2014年にアジアを制している。

 綜合的に見ると、実力は明らかに日本の方が上だ。昨年10月に中国の杭州で行われたアジア大会でその差は歴然としていた。

 日本と決勝でぶつかった北朝鮮女子チームは男子が準々決勝で日本に1ー2と惜敗したことから「男子の敵は女子が討つ」とばかり、金メダルを目指し、日本との決勝戦に臨んだが、後半に立て続けに3点を入れられ、1ー4と惨敗した。それもなでしこではない若手主体の相手に大差を付けられ、負けたのである。北朝鮮にとっては屈辱の敗北である。

 北朝鮮の選手、監督、役員、そして応援団のショック、落胆は想像を絶するものがあった。誰よりも当然金メダルを持って凱旋するものと期待していた金正恩(キム・ジョンウン)総書記が大いに失望したはずだ。

 金総書記は大のサッカー好きである。権力を継承して以来、サッカーを観戦したのは1,2度ではない。頻繁に観戦している。この2年間だけで3度もスタジアムに足を運んでいる。2015年8月に女子チームが東アジアカップで優勝した時には嬉しさのあまり、空港まで行って選手団を出迎えたほどだった。

 北朝鮮の国営放送は韓国との準々決勝で勝利した試合は大々的に伝えながら、決勝で日本に敗れたことについては触れずじまいだった。国民の期待に反し、1対4で大敗したとはとてもではないが、人民には伝えられなかったはずだ。

 それだけに、北朝鮮の女子選手は今夜の日本との試合でアジア大会の屈辱を晴らそうとするであろう。おそらく「優勝して金正恩首領様に喜びを与え、労働党に忠誠の報告をする」と必勝を誓っていることであろう。

 アジア大会の日本戦で背後からのタックルなどラフプレーで物議を呼んだ北朝鮮の男子の監督は敗因について「主審が公正ではない」とウズベキスタンの主審のジャッジに責任を擦り付けていたが、女子の監督は「ディフェンスに問題があった。またゴールキーパーの動きに一定の欠点があった」と敗因を冷静に分析していた。そのうえで「日本選手は伝統的な試合運営方式を生かしながらとても上手に戦っていた」と褒め称え、日本の実力を率直に認めていた。

 1966年のロンドンW杯のゴールキーパーだったリ・チャンミョン選手の息子でもあるこの女子の監督はさらに「今後(日本とは)重要な競技で再び対戦する機会、相まみえる機会が来ると思うが、両チームとももっと素晴らしいプレーを見せることができることを望んでいる」と記者会見で日本にエールも送っていた。

 これまでに北朝鮮には欠けていたこうした謙虚さとスポーツマンシップを忘れていなければ、また、前回の試合の反省をきっちり生かせば、北朝鮮にも勝算があるかもしれない。

 いずれにせよ、日本もそうだが、北朝鮮もまた、今夜の試合は絶対に負けられない試合であることに変わりはない。

(参考資料:北朝鮮スポーツ界の「歴代トラブル」 2度の東京五輪ボイコットを含め23件

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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