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Bリーグを盛り上げた千葉ジェッツの快進撃を支えた小野は、真のオールラウンダーに変貌する可能性あり

青木崇Basketball Writer
真のオールラウンダーへ進化する一歩を踏み出した小野(写真:アフロスポーツ)

千葉ジェッツのキャプテン、小野龍猛にとっての昨シーズンは、フラストレーションの連続だった。しかし、大野篤史が新ヘッドコーチとなった今シーズンは、本来のポジションであるスモールフォワードに専念。開幕前に「得点だったり、ミスマッチを突いてインサイドを攻めたりすることは、もっとできると思います」と語ったように、得点面での貢献度は非常に高かった。

レギュラーシーズン全60試合に先発し、37試合で2ケタ得点をマーク。12月11日の三遠ネオフェニックス戦では、7本の3Pシュートを決めるなど38点の大爆発。「今シーズンはコンスタントに毎試合2ケタ取っていければと思っています」という言葉に近いパフォーマンスは、平均12.3点という数字を見れば、十分に発揮できたと言っていいだろう。

ジェッツはオールジャパンとB1制覇の二冠を目指したが、チャンピオンシップのクォーターファイナルで、東地区のライバルである栃木ブレックスに2連敗。実力こそ拮抗していたものの、チームの完成度とメンタル面での成熟度が、シリーズの行方を大きく分けた。「勝ちたいという気持が栃木のほうが上回っていた。エナジーの部分で千葉は足りなかった」と振り返った小野は、後がないゲーム2の前半で得意のポストアップを生かして15点を奪った。ブレックスのディフェンスで違う対応をしてきたといえ、「もっと自分が(ボールを)要求して、ポストプレイをやればよかったな」という言葉が象徴するように、後半はまさかの無得点。22点リードを逆転されての悔しい敗戦で、シーズンは終わりを告げた。それでも、「あっという間に終わってしまった楽しいシーズンでした」と語ったように、小野が充実した日々を送っていたのはまちがいない。

この敗戦からゆっくり休む間もなく、小野は東アジア選手権に出場する日本代表候補として合宿に参加している。プレイの質とスキルをより高めるということで、代表の活動とオフの間のワークアウトは、来シーズンよりレベルアップするうえで大きな意味を持つ。レベルアップの可能性に目を向けてみると、4月29日のブレックス戦で大野コーチは、4Qで小野をシューティングガードで起用した。「なぜ?」と一瞬思いたくなるだろうが、今シーズン3P成功率39.8%、成功数が113本だったことからすれば、決して奇策でないという気がしている。

この試合での小野は、ポストアップで相手が1対1で対応すればアグレッシブに得点を奪い、ヘルプが来ればシュート力のチームメイトへのチャンスをクリエイトできることを示していた。2m超のサイズがない限り、小野を1対1で止めるのは難しいし、B1でポストアップが最もうまい日本人選手と言ってもいい。もし、小野が今後シューティングガードもこなせるスイングマンになれると、ジェッツはより破壊力を増すチームになるだろうし、日本代表にとってもプラスだ。

シューティングガードに対するディフェンスに関しては、スピードで不利になることは否めない。しかし、小野ならでは対応策がある。210cmというウイングスパンだ。小野の身長は197cmだが、両手を横に広げると多くの日本人にない長さを持っている。スピードの不利に対しては、腕の長さでカバーする術を身につければいいのだ。小野がシューティングガードをこなせるようになれれば、日本は世界レベルの戦いで直面するサイズのミスマッチを回避できる。B1であれば、ミスマッチで優位に立てる機会がより多くなるのだ。

29歳とベテランの域に入ってきたといえ、同年代の選手に比べると、小野はまだまだ飛躍の可能性を秘めている。ジェッツが来シーズンさらなる飛躍を成し遂げるためのカギは、キャプテンである小野が握っていると言っていい。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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