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トランプ・ファミリーも“裏口入学” ? 金が物を言うアメリカの教育界

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
クシュナー氏は父親がハーバード大学に多額の寄付をしたことで入学できたのか?(写真:ロイター/アフロ)

 今、アメリカを騒がせている、セレブの子供たちの裏口入学スキャンダル。2人の著名なハリウッドスターをはじめとする50人のリッチ&パワフルな親たちが、金の力で、ブローカーを通じて、イェール大学やスタンフォード大学などの名門大学に子供たちを入学させたことで訴追された。

 しかし、実は、トランプ・ファミリーも、金に物を言わせて入学したのではないかと指摘する記事をワシントン・ポスト紙やヴォーグ誌などが掲載していて興味深い。

150万ドルを寄付

 トランプ氏自身、“裏の手”を使った可能性があるという。トランプ氏は、現在、眞子さまの婚約内定者・小室圭氏が学んでいるフォーダム大学で2年間学んで学位を取得後、アイビーリーグ8校の一つで、アメリカでも難関なビジネス・スクールの一つであるペンシルベニア大学ウォートン校に編入した。

 グエンダ・ブレア氏の著書「ザ・トランプス:帝国を築いた三代」によると、編入する際、トランプ氏はウォートン校の入学担当者の面接を受けたが、その担当者はトランプ氏の兄の元クラスメートだったというのだ。つまり、そこには、“コネ入学”したのではないかという疑惑がある。

 また、トランプ氏の長男トランプ・ジュニアと長女イヴァンカも父親と同じペンシルバニア大学ウォートン校に入学しているが、『トランプ・ネイション』の著者、ティム・オブライエン氏によると、トランプ氏は同校に少なくとも150万ドルを寄付しているという。しかも、大学新聞デイリー・ペンシルバニアンによると、トランプ氏が寄付をしたのは90年代後半で、その頃は、1996年にトランプ・ジュニアが、2000年にイヴァンカがそれぞれ入学しているというのだ。

ハーバードに入れる成績ではなかった

 また、イヴァンカの夫で、トランプ政権ではアドバイザーを務めているジャレッド・クシュナー氏も、父親が莫大な寄付をしたことでハーバード大学に入学できたのではないかと言われている。

 ダニエル・ゴールデン氏の著書「入学の値段」によると、不動産デベロパーをしていたジャレッド・クシュナー氏の父チャールズ・クシュナー氏は、彼がハーバード大学に入学する前に、大学に250万ドルを寄付する約束をしたという。

 実際、クシュナー氏は、ハーバード大学に入学できるような成績ではなかったようだ。クシュナー氏が通学していた高校の関係者は、

「学校の事務所の誰もが、彼が実力でハーバード大学に入れるとは思っていなかった。彼は入学できる成績ではなかったから。それなのに、驚いたことに、彼は入学を許可された。実力でハーバード大学に入れる生徒が他にいたのに、その生徒は入れなかったから、ちょっとがっかりしたわ」

と話している。

リッチ&パワフルは優遇される

 もっとも、アメリカには「レガシー制度」と呼ばれる制度がある。卒業生の子孫が優先的に入学できるという制度で、ジョージ・W・ブッシュ元大統領は、祖父も父親もイェール大学を卒業していたために、イェール大学にレガシー制度を利用して入学したといわれている。トランプ・ジュニアやイヴァンカも、そんな制度の下、父トランプ氏と同じ大学に優先的に入学することができた可能性はある。

 しかし、ジャレッド・クシュナー氏の場合、父親はハーバード大学の卒業生ではないことを考えると、やはり、莫大な寄付によるところが大きいのかもしれない。前述のゴールデン氏も著書で「元副大統領のアル・ゴア氏やチャールズ・クシュナー氏の子供達は、ファミリーの影響力と莫大な寄付で、プレステージの高い学校から優遇措置を受けていたようだ」と書いている。

 日本的視点から行くと“裏口入学”となってしまう、大学への莫大な寄付による富裕層の子供たちの入学。しかし、これはアメリカでは珍しいことではなく、法にも反していないのだ。ある意味、寄付という名目で、裏口入学が正当化されているようなところがある。

 そして、莫大な寄付で子供たちを名門校に入学させている富裕層がいるという現実は、今回の裏口入学スキャンダルに影響を与えたのではないだろうか?

 今回のキャンダルでは、親たちは、ブローカーに賄賂を払うだけではなく、テスト点数を改竄してもらったり、スポーツ推薦枠に入れるためにスポーツをしているよう写真を加工してもらったりするなど様々な裏工作による詐欺行為もしたために訴追に至ったが、彼らがそうまでして子供たちを入学させようとした背景には、トランプ・ファミリーのような富裕層の子供たちが、お金に物を言わせて、大学に優遇されてきたというアメリカのアンフェアーな現実があったからではないか。そして、そんなアンフェアネスの影で、コツコツと真面目に勉強している、貧困層の子供たちが入学できずに泣いてきたのだ。

 今回のスキャンダルは、貧富の格差が如実に反映されているアメリカの教育界のアンフェアネスを露呈した。

参考記事:Why Trump Jr. mocked the parents caught up in the college admissions scandal

People Are Talking (Again) About How Jared Kushner Got Into Harvard

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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