気候ストライキの熱意はどこへ?オスロ若者が感じる無力感
12~19歳までの首都オスロに住む若者を対象とした気候調査が発表された。
調査をした若者団体「UngOrg」によると
- 若者は数年前に比べて気候問題に乗り気ではない・熱心になれない
- 若者は気候というテーマに関する知識は高い、特に15歳以上
2019年に連続していた学校・気候ストライキから数年が経過し、自分の無力さを感じる若者が増加していることが明白となった。
若い人は気候に関する情報を大人が思っている以上に身につけている
日本では若い人が気候や環境について意見を言う時、「もっと勉強してから」「まずは学校でちゃんと勉強して」と若さゆえに知識が足りないのだろうと言い返されることがあるだろう。スウェーデンの気候活動家のグレタさんも、学校の成績は優秀でも、そう言われていた。
だが、今回の調査でも指摘されているように、「若い人はSNSなどで情報収集をしており、大人が思っているよりも気候に関する情報と知識を備えている」のだ。これはノルウェーの環境団体の大人たちなど、さまざまな現場で聞く指摘でもある。
気候ストライキが連続していた数年前に比べて「行動しても意味がない」という感覚
数年前には若者の団結を促していた「熱い空気」は今は衰え、「エンゲージしても効果が感じられない」と脱力感や無力感を感じる若者が増えているということが同調査で指摘された。
15~25歳を対象とした別の気候調査でも同じような結果が出ており、2021年に47%と最高潮にあった気候に対するエンゲージメントは2023年には31%と16%下落した(ノルウェー公共局)。
気候ストライキやライフスタイルを変える努力を若者は続けてきたが、「やっても意味がない」と感じる人が増えたのだ。
調査で分かったオスロ若者の傾向
若者団体「UngOrg」の調査では以下のような傾向もみられた
- 若者の気候に関する情報ソースはInstagramとTikTokが中心
- 2019年の気候ストライキや気候エンゲージメントは一時的なトレンドだった
- 熱心に気候活動をしても「むくわれない」という思いが増加
- メディアは経済危機や紛争ばかりを報道して、気候は優先されないと若者は感じている
- 気候というテーマが複雑で難解すぎると若者は感じている
- 家族や周囲の友人が気候問題に熱心ではない
自分の自治体政策への影響力には自信あり
気候ストライキが話題だった数年前より無力感を感じるという結果が出ている一方、75.6%の若者がオスロ自治体の気候活動に「自分は影響を及ぼせる」と感じているという結果も出ている。これは若者が自分の影響力を信じる高さを反映する驚きの数字だと筆者は思う。
大人よりも若者のほうが気候に配慮した暮らしをしている
大人を対象とした調査と比較すると、若者は大人よりも「肉を食べる量を減らし」「気候に負担のならない方法で移動」「電化製品の消費を減らし」「食品ロスを減らし」「ゴミを分別し」「飛行機での移動を減らしている」。
責任を実感して行動すべき大人はだれか?
「気候変動の責任があり、そのための行動を起こすべきだと思うのは誰だと思うかと聞かれ、若者の答えは「政治家」「金持ち」「産業界」「首都に住む人」「団体」「両親」「祖父母」「団体」となった。
若者がオスロ市に望む「お願いリスト」20
9月に統一地方選挙を控えていることもあり、オスロに住む若者は市に望んでいるものも発表された。
- よりよい公共交通機関(安い切符とより多くの発車本数)
- ゴミ箱
- 緑のエリアと公園
- ヴィンテージショップ
- 自転車道
- 地元でのアクティビティや行事
- 若者が出会える場所
- 情報
- 気候・環境フレンドリーな選択肢
- 遊び場
- カフェ
- 地産地消のフード
- 木と花
- より厳しい規則
- 気候熱心な市民
- カーフリー中心地
- 植物が生えた建物
- 歩道
- ベンチ
- 職場
政治家や自治体へのお願いが「もっと気候に熱心な人が欲しい」という発想は北欧らしい。
「気候はそもそも大人の責任」
オスロ市の環境局ハイディ・ソレンセン局長は、気候の仕事に30年以上携わっている立場からの見解を話した。
「気候に対する若い人のエンゲージメントというのは、上に行ったり下に行ったりする波のように変化を遂げてきました。上がった後は下がるけれど、また上がるので、実は少しずつ上昇しています。だから私は楽観主義者でいられるんです」
そして彼女の最後の言葉は、ぜひ日本の若者にも届けたいと筆者は思った。
「気候というのは、そもそも大人・私の世代の責任なんです。だからあなた方若い人は『自分たちがやったことの後片付けを、ちゃんとしてよ』と言い続けてください」
Photo&Text: Asaki Abumi