【パリ】「リュクス」とはなにか? めくるめく贅沢にひたり、これからの贅沢を想う
いまパリの装飾芸術美術館で「Luxes(リュクス)」展が開かれています。
「リュクス」
つまり、「贅沢」「豪華」「豊か」という言葉をタイトルにした展覧会です。
内容は、時代も地域も超えて「リュクス」という大命題のもとに選ばれたモノと空間装飾。
あらゆる贅沢品や時代ごとの趣味の変遷そのものを眺めるだけでも見応え十分ですが、さまざまなカテゴリー、解釈の「リュクス」を経巡るうちに
(ではわたしにとっての、そしてこれからの「リュクス」とはなんだろう?)
と考えさせられる。そんな気持ちになる人はきっと多いと思います。
またこの展覧会の面白さは、日本の銘品もキーポイントで登場しているところです。
洋の東西、さまざまな時代を旅しているような気分になるくらい大規模な展覧会ですが、ダイジェスト版を動画にまとめましたのでこちらからご覧ください。
前半のアンティークゾーンでは、日本の陣羽織が登場します。江戸後期のもので、絹と毛織の生地を孔雀の羽根がびっしりと覆っている、かなりインパクトのある作品です。そしてそれと呼応するように展示されているのが、クリスチャン・ルブタンの靴。赤い靴底で有名ないまとても勢いのあるブランドですが、この靴にも孔雀の羽根が丹念にあしらわれているのです。
こうしてみると、200年ほど隔たりのあるはずの最新モードにまったく差がないように見えてきます。
そして現代の贅沢まで巡って来たあとに登場するのが、エルメスのバッグと鼠志野の抹茶茶碗の対比。茶碗はしかも金継ぎがされているもので、あえてそれを選んで展示していることが、横に添えられた解説でわかります。
この2つのオブジェのダイアローグはどういうことだろうと思われるかもしれません。かたや茶道具、もういっぽうは世界で最も有名なモードのひとつ「ケリー」。しかしながらこの2つは、リュクスなオブジェということでは共通しています。洗練、美的、社会的、感情に訴える価値をもち、世代を超えて継承してゆきたいと思わせるもの。この器には、金継ぎが施されていて、捨てられずに修理されました。同様に、バッグも使い込まれた持ち手の部分が修理され、世代を超えて使い続けられるようになっています。
とういうように、この展覧会は単に贅沢品のオンパレードという以上に、さまざまなメッセージが込められています。
まさに不確実な時代にいるわたしたちにとって、真の贅沢とはなにか、これからの「リュクス」とは? 経巡るうちに、見る人の内側にそんな問いがわいてくるのではないかと思います。
そして最後に戻ってくるスタート地点でふたたび目の前に現れる金の砂時計。なかなかに示唆に富むお膳立てなのでした。
※会期は2021年5月2日まで。