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【5月1日廃止】世界でも広島にしかないゴンドラとモノレールを合わせた不思議な乗り物「スカイレール」

清水要鉄道・旅行ライター
スカイレール

2月29日、国土交通省は広島市安芸区のニュータウンを走る新交通システム「スカイレール」について、5月1日での廃止を許可した。スカイレールは廃止前日の4月30日正午に出発する便を最後に営業を終了。四半世紀に渡る歴史に幕を下ろすこととなった。

200形
200形

スカイレールは正式名称を「スカイレールサービス広島短距離交通瀬野線」と言い、広島市安芸区の山陽本線瀬野駅に隣接する「みどり口」駅と、山の上のニュータウンにある「みどり中央」駅との間、1.3キロを結んでいる。山の上にあるニュータウンのための交通手段で、四半世紀に渡って住民の足となってきた。

200形
200形

開業は平成10(1998)年8月28日。翌月にはソニー製FeliCaを採用した非接触型ICカード乗車券「スカイレールICカード」を定期券に導入した。今でこそ多くの人が当たり前のように利用しているIC乗車券だが、採用されたのはスカイレールが日本で初めてである。JR東日本がSuicaを導入したのは平成13(2001)年11月18日のことで、スカイレールの方が3年も早かった。

200形
200形

スカイレールはロープウェイと懸垂式モノレールを合わせたような乗り物で、鉄道の種類としては「ポートライナー」や「ゆりかもめ」「リニモ」「山万ユーカリが丘線」などと同じ新交通システムに分類される。ロープウェイやスキー場のゴンドラのような車両を駅間ではワイヤーロープ、駅構内ではリニアモーターを使って動かす方式で、「ロープ駆動懸垂式短距離少数輸送軌道システム」「ロープ駆動式短距離交通システム」という名前もある。モノレールや他の新交通システムと比べて安い工費と短い工期で建設でき、ロープウェイよりも風に強く安定感があるのがメリットだ。神戸製鋼所や三菱重工業が未来の交通を担う技術として開発したものだったが、スカイレール以外で採用されることはなく「ガラパゴス」な存在で終わってしまった感がある。特殊な機構ゆえに維持や設備更新にも多額な費用がかかることが廃止の理由の一つだ。

ホームから見た車両
ホームから見た車両

スカイレールで用いられる車両は200形で、乗車定員は25人、最大で37人まで乗ることができる。扉は進行方向向かって左側にしかない。見た目はまんまスキー場の大きめのゴンドラといった感じである。

車内の座席
車内の座席

車内に座席は8席。前後の壁に沿って設けられており、向かい合って座る形になる。見た目だけでなく車内の雰囲気もロープウェイのようだ。スカイレールは160mの高低差を一気に駆け上がるだけあって眺めもいいが、それなりに揺れるので、立っての乗車の際はしっかり吊革に掴まった方がいいだろう。

券売機
券売機

乗車券は各駅に設けられた券売機で購入、またはIC乗車券へのチャージを行う。券売機はちょっと懐かしいデザインだ。切符にはQRコードが印刷されていて、それを改札機にかざして通る。改札システムは平成25(2013)年1月に刷新されたもので、QR乗車券もまた時代を先取りしたものだった。

みどり中街に向けて下る200形
みどり中街に向けて下る200形

日本はおろか世界で唯一の「珍交通システム」であるスカイレール。未来の交通の姿を模索した過程で生まれた乗り物に乗れるのもあと2か月だ。遊園地のアトラクションのように「乗って楽しい乗り物」だが、あくまでも地域住民の足であるということを忘れず、ルールを守ってお名残り乗車を楽しもう。

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鉄道・旅行ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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