日本初の交直流通勤電車「E501系」 令和7(2025)年3月ダイヤ改正で水戸以南から撤退
12月20日、JR東日本労組水戸地方本部が、令和5(2027)年3月ダイヤ改正について、会社側から提案を受けた内容について発表した。
提案内容としては、特急ときわ53号・54号の品川発着への変更、常磐線・水郡線でのワンマン運転拡大、水郡線の中小川駅・東館駅棒線化などが挙げられていたが、特に鉄道ファンの注目を集めたのが「E501系運用終了に伴う対応」の文字だった。
これを受け、すわ引退かとネット上では騒がれたものの、翌日の続報で「土浦~水戸間での運用終了」であったことが判明。引退は免れたものの、活躍の場をさらに狭めることとなった。首の皮一枚のところで繋がったという印象で、完全引退もそう遠くないであろう。
E501系は平成7(1995)年12月1日より運用を開始した電車で、交直両用の通勤電車としては日本初の存在である。当時、常磐線では403系・415系など3扉車が中心に運用されており、通勤圏拡大に伴う朝夕の混雑の激化が問題視されていた。そこで導入されたのが、京浜東北線などで活躍する209系を基本に設計した4扉車で、取手以北の交流区間では初の存在となった。
編成は10両の基本編成と5両の付属編成からなっており、最大で15両編成を組むことができる。平成7(1995)年にまず基本編成と付属編成が1本ずつ製造され、平成9(1997)年にそれぞれ3本ずつが増備されて、4本ずつの60両が揃った。
平成9(1997)年3月22日ダイヤ改正では常磐線の運行系統を土浦で分断する形となり、60両が揃ったE501系は上野~土浦間での運用に投入されたが、この分断には土浦以北の乗客からの不評が多く、わずか一年で終了となっている。
当初の計画ではさらに増備されて直流区間の103系も置き換えることも視野に入れられていたE501系だが、ダイヤ再編の目論見の失敗に加え、ロングシートでトイレがなく、長時間走る列車には向いていないこともまた、運用を限定的なものとした。結局、製造は60両で打ち切られ、少数派として活躍していくこととなった。
平成17(2005)年7月9日にはE501系に次ぐ交直両用4扉車であるE531系が登場。こちらはセミクロスシートも備えた近郊型電車で、収容力を確保しつつもE501系の欠点も補った車両であった。次第に勢力を拡大し、老朽化した415系だけでなく、少数派であるE501系も追われることとなる。
平成19(2007)年3月18日ダイヤ改正で、常磐線上野口の中距離電車はE531系に統一され、追われたE501系は活躍の場を土浦以北と水戸線に移すこととなった。トイレの増設や機器更新も行い、基本編成と付属編成では運用も分けられることとなった。15両編成で颯爽と上野駅に乗り入れていたのが、デビューからわずか12年でローカル運用に「都落ち」というのは少数派ゆえの運命と言えよう。
その後、付属編成の一時的な常磐線からの撤退はあったものの、平成30(2018)年9月5日には水戸線から撤退し、E501系は常磐線土浦~いわき間を主な活躍の場とすることとなる。
令和5(2023)年3月18日ダイヤ改正では水戸~いわき間でE531系付属編成によるワンマン運転が開始され、これに伴いE501系の運用が減少した。令和6(2024)年3月16日ダイヤ改正ではワンマン運転が土浦~水戸間、いわき~原ノ町間にまで拡大され、E501系付属編成の運用は消滅している。ついに廃車も発生し、付属編成のK751編成が8月2日付で廃車となり、郡山車両センターで解体されている。さらなる運用の減少により他の編成もいずれは後を追うことが予想される。
日本初の交直流通勤電車としてのデビューから29年、少数派として細々と命脈を繋いできたE501系の活躍も、ついに最終章を迎えることとなりそうだ。気になるのはイベント用として改造された「E501 SAKIGAKE」のK754編成の去就で、改造からの日が浅く引退とするにはまだ早い気もするが、それほど大きな改造でないところを見ると、初めから長期間の使用は見込んでいないのだろうとも考えられる。
いずれにせよ最後まで無事故で走り続けることを祈るばかりだ。撮影や乗車の際には、くれぐれもマナーを守って、この少数形式を見送ろう。
※(12.22 7:18追記)続報を受け、タイトルと内容を一部変更しました。誤報によりご迷惑をおかけしたことをこの場を借りてお詫び申し上げます。