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大阪桐蔭 近江にまさかの敗戦! 何が足りなかったのか?

森本栄浩毎日放送アナウンサー
大阪桐蔭が近江にまさかの逆転負け。この強豪に足りなかったものとは?(筆者撮影)

 大阪桐蔭がまさかの2回戦敗退を喫した。序盤で4点を奪う上々の滑り出しも、近江(滋賀)のしつこい攻めに先発の竹中勇登(3年=タイトル写真)が苦しめられ、7回に追いつかれると、8回に救援した川原嗣貴(2年)が決勝点を奪われた。3年前の春夏連覇世代に匹敵するとまで言われた粒揃いの選手たちは、力を出し切ることなく甲子園を去ることになった。

急激にチーム力伸ばした近江

 例年以上に近畿のレベルが高いことは、昨秋から述べてきた。その中にあって、滋賀勢だけは、秋、春とも近畿大会で1勝もできず、やや取り残された感があった。盟主である近江の不振が原因で、秋、春とも県大会で敗れている。夏前には、「近江危うし」の声も聞かれるほどだった。しかし、滋賀大会を圧倒的な強さで制すると、日大東北(福島)との初戦も快勝甲子園にはいつもの強い近江の姿があった。大阪桐蔭が、急激に良化した近江のチーム状態を見誤ったとは考えられない。

近江が大阪桐蔭から「金星」

 先発に竹中を起用したのは、ある意味、当然だろう。ブルペンの様子を見る限り、西谷浩一監督(51)は、この試合を竹中と川原で乗り切るつもりだったと考えられる。しかし、2回で4点のリードも、意外に早く流れが変わった。打線が沈黙し始めると、近江に3回以降、小刻みにスクイズ、本塁打、犠飛で1点差とされる。7回に竹中が追いつかれると、8回にはエース・松浦慶斗(3年)ではなく、川原を救援に送った。先頭打者が失策で出塁する不運もあったが、川原は近江の勢いを止められず、2点の勝ち越しを許す。近江は山田陽翔(2年)から岩佐直哉(3年)へつなぐ完璧なリレーが決まって、6-4で大阪桐蔭に逆転勝利。優勝候補一番手を破る「金星」だった。

過密日程で名将の起用に迷い?

 大阪桐蔭は、エースを投げさせることなく、姿を消すことになった。これは、西谷監督が試合後、「日本一をめざしてきたが、うまく導けなかった」という言葉に象徴される。決して、近江を甘く見ていたわけではなく、トーナメントの戦い方を考えてのゲームプランだったのだろう。優勝するには、ここから一週間で5試合を乗り切らないといけない。西谷監督は、「今日の試合は状態のいい投手で」と竹中と川原をかばい、松浦の温存は否定した。ブルペンで待機させていたが、松浦を出すタイミングを逸したという見方もできる。この過密日程が、百戦錬磨の名将にも迷いを生じさせたか?

ツキに見放された今年の大阪桐蔭

 そしてここからが本題である。春夏とも優勝候補筆頭と評価されながら、わずか1勝に終わったチームに、何が足りなかったのか。まずは、抽選運だ。センバツは、近畿でしのぎを削る智弁学園(奈良)と初戦で当たり、立ち上がりに大量失点して逃げ切られた。秋の近畿大会決勝の再戦で、相手の気迫に圧倒されたようだった。例年ならセンバツで近畿同士は、準々決勝までは対戦しない。夏は、1回戦の登場が最も遅い5日目に入る不運。長雨による順延続きで休養日が1日になってしまい、前述のような過密日程に巻き込まれた。敗れた相手がまたも近畿勢で、大阪桐蔭に対しては、甲子園でなくとも牙をむいてくる。対戦相手、日程とも、ツキに見放されたと言えよう。

ワンプレーで流れを変えられる選手が不在

 チームとしては、秋から「一体感」という指摘をしたが、夏の大阪大会の苦戦続きで、かなりそれは解消されたように思う。ただ、3年前との違いは、根尾昂(中日)や藤原恭大(ロッテ)のように、ワンプレーで流れを変えられるような決定力のある選手が不在だったことを挙げたい。トータルの戦力は遜色ないが、要所でチームに勢いをもたらす選手は必要だ。あとは、投手陣がやや伸び悩んだことに目がいく。入学時から大物揃いと言われながら、順調だったのは松浦だけで、右のエースと期待された関戸康介(3年)は、ブルペンでも姿を見なかった。本来の調子なら、松浦と関戸を交互に先発させ、球威のある竹中を救援に回せたと思う。個人名を挙げて申し訳ないが、関戸には次のステージで飛躍してもらいたい。

松浦の肩で泣きじゃくる川原

 クールダウン後、決勝点を献上した川原が、松浦の肩に顔をうずめて泣きじゃくっていた。「すみません」と言っていたのだろう。松浦は、川原の背中を優しくさすっていた。先輩から後輩へ。高校野球の尊いシーンである。この日、本塁打を放った正捕手の松尾汐恩(2年)も新チームに残る。この悔しさを胸に、新しい大阪桐蔭がスタートする。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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