日本代表らとの相性は? セルティック入り韓国代表オ・ヒョンギュの人柄と移籍背景【関係者取材】
スコットランドの名門セルティックが韓国人選手の獲得を発表した。
獲得したのはKリーグ1(1部)の水原三星(スウォン・サムスン)ブルーウィングスに所属する韓国代表オ・ヒョンギュ。身長183cm、体重72kgの頑丈なフィジカルが自慢のストライカーだ。
サッカー専門誌『FourFourTwo KOREA』の元編集長で現在はフリーランスのサッカージャーナリストとして活躍するリュ・チョン氏はオ・ヒョンギュについてこう話す。
「鄭大世に近いイメージ」「斎藤学とも仲良く」
「オ・ヒョンギュは典型的なフィニッシャーです。中盤まで下がってボールを受けようとすることはなく、あくまでもペナルティボックスの中こそが自分の持ち場であると自覚しており、積極的にゴールを狙う。相手とのフィジカルコンタクトを楽しみ、挑戦的な動きで真価を発揮する。相手の挑発や執拗なマークにも屈しない精神的な強さもあります。日本のサッカーファンにわかりやすく伝えるなら、かつて水原三星でもプレーした鄭大世に近いでしょうか。若いのに精神力も強いですよ」
2001年4月12日生まれの21歳。水原三星のU-18でもあるメタン高校在学中の2019年に水原三星とプロ契約を交わし、高校生ながらKリーグ・デビューしたオ・ヒョンギュ。
その後、2020年シーズン途中から国軍体育部隊である金泉尚武(キムチョン・サンム)に。在籍2シーズンで38試合出場7得点だったが、兵役を務めあげて復帰した水原三星で大きく開花。
昨季リーグ戦ではチーム最多の13ゴール(36試合出場)をマーク。チーム総得点(44ゴール)の3分の1に近い数字を記録した。
水原三星は昨季、降格の危機にあったが、宿命のライバルであるFCソウルとのナショナルダービーでは2ゴールを決め、Kリーグ2(2部リーグ)・FC安養(アニャン)との入れ替え戦第2戦では、延長後半に劇的な決勝ゴールを決めてチームの1部残留に大きく貢献した。
「ソン・フンミンのスペアとしてW杯」「バチバチやり合う負けず嫌い」
その勝負強さにクラブ関係者も舌を巻く。水原三星のイ・ウノ氏が教えてくれた。
「勝負強いというか、かなりの負けず嫌い。試合に負けることはもちろん、練習中の些細な遊びでも負けたくない(笑)。ゴールを外したら地面を叩きながら悔しがる。年上の相手DFともバチバチにやり合って怯まない。ある試合ではかなり激しく神経戦をやりあって、相手の年上DFが頭に血が上ってカッとなることもありました。それでも真っ向からやり合う。まだ若いのに怖いもの知らずです(苦笑)」
そんな強気な姿勢も買われて、カタールW杯直前の2022年11月のアイスランド代表戦で韓国代表デビュー。W杯最終メンバー26人には選ばれなかったものの、眼底骨折で出場が危ぶまれていたソン・フンミンにもしものことがあったときの“スペア”として予備エントリーに登録され、カタールW杯期間中は韓国代表に帯同。ベスト16進出を現地で経験した。
リュ・チョン氏が語る。
「まだ20代前半ですが、高校生でプロ・デビューしたこともあり、今なお成長中です。以前はただシュートを打つだけの選手でしたが、昨年はそのプレーの幅を広げ、試合への関与度も高くなった。韓国代表監督だったパウロ・ベントがオ・ヒョンギュをカタールW杯の予備メンバーに加えた理由も、そこにあったと思います。オ・ヒョンギュは着実にプレー範囲を広げ、プレースタイルも多様化している。韓国サッカー界期待の成長株と言ってもいいでしょう」
W杯2得点の韓国代表FWを狙っていたセルティック
ただ、そのカタールW杯直後、セルティック行きが噂された韓国人は別のストライカーだった。
チョ・ギュソン。カタールW杯の韓国代表対ガーナ代表戦で1試合2ゴールを決めたFWだ。
彼にはセルティックだけではなく、ブンデスリーガのマインツも興味を示しているとされていたが、いずれもチョ・ギュソンが所属する全北現代(チョンブク・ヒョンデ)との交渉が難航してまとまらず。チョ・ギュソンは今冬の欧州進出を諦めた。
(参考記事:「正直、日本が羨ましい」韓国代表欧州組が心情吐露…自国サッカー界に“緊急提言”したワケ)
そこでセルティックはターゲットをオ・ヒョンギュに変えたと言われている。
オ・ヒョンギュはチョ・ギュソンより年齢が若いだけではなく、韓国人選手について回る兵役問題をすでにクリアしていることも魅力だったのだろう。また、移籍金交渉でもセルティックが譲歩し、水原三星が求める額に合わせたと言われている。
オ・ヒョンギュも水原三星のイ・ビョングン監督のもとを数回も訪ねて欧州進出の意思を強く表明。クラブ、指揮官ともに若いFWの成長とさらなる飛躍のために送り出すことを決めたらしい。
古橋や前田ら日本代表らとの関係は?
イングランドやスコットランドなど現地メディアによると、セルティックとは5年契約で合意。報道によると、オ・ヒョンギュの移籍金は250万ポンド(日本円=約4億円)になるそうだが、韓国が注目しているのはオ・ヒョンギュがどれだけ早くチームに溶け込み、スコットランド・リーグに適応できるかだ。
特にセルティックにはFW古橋亨梧、FW前田大然、MF旗手怜央、MF井手口陽介、DF小林友希、MF岩田智ら6人の日本人選手がいるだけに、彼らとの化学反応や競争には注目が集まりそうだが、オ・ヒョンギュは日本人選手とうまくやっていけるだろうか。
水原三星のイ・ウノ氏は語る。
「若くしてプロになり、兵役のために軍隊チームも経験してきたので、新しい環境にも比較的早く適応するタイプだと思います。性格も明るく、人付き合いも良い。昨季まで一緒にプレーした斎藤学選手とも仲良くやっていましたから、セルティックの日本人選手たちともうまくやるでしょう」
リュ・チョン氏も期待する。
「オ・ヒョンギュは性格が明るく、チームメイトとの関係を大切にするタイプ。日本の選手たちともうまくやるでしょう。良いパスをくれたり、攻撃的にコンビを組む選手とはすぐ仲良くなるはずです」
Kリーグでは得点力だけでなく、空中戦やフィジカルコンタクトを好み得意とする“頑丈さ”でも頭角を現したが、スコットランドではいかに。セルティックで日本人選手たちから刺激を受けながら、“共闘”する姿を期待したい。