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いよいよ開幕するプロ野球!! セ・リーグの見どころはここだ

横尾弘一野球ジャーナリスト
菅野智之を中心に連覇を狙う巨人は、若手の働きがポイントになりそうだ。(写真:ロイター/アフロ)

 8年ぶりに日本一も奪還したいセ・リーグは、巨人と阪神による伝統の一戦が東京ドーム、何としてもAクラス入りを果たしたい東京ヤクルトと中日は神宮球場、投打にバランスのいい横浜DeNAと広島は横浜スタジアムと、首都圏の球場でいずれも6月19日の18時にプレイボールとなる。

 巨人は12球団最多のオープン戦16試合をこなしながら、2勝10敗4引き分けと開幕に不安を残していた。あらためて6月2日から練習試合が始まっても、坂本勇人と大城卓三が新型コロナウイルスのPCR検査で陽性と診断されて戦列を離れるなど、どうもピリッとしない状態が続く。エースの菅野智之は投球フォームの修正も上手く運び、本来の安定感を発揮してくれそうなだけに、先発ローテーションを早く整備したいところだ。また、野手陣ではベテランの中島宏之に復活の気配があるのは心強い。坂本や丸 佳浩はきっちりと合わせてくるはずで、ポイントになるのは主砲の岡本和真ら若手がどこまで力を発揮してくれるかだろう。7月まで勝率5割前後で戦えば、夏場以降は主役になれるのではないか。

 Aクラス入りの力は十分に蓄えている横浜DeNAは、ペナントレースのみで順位が決まるシーズンだからこそ真価を問われる。開幕投手が有力な今永昇太を筆頭に、濱口遥大、石田健大、新人の坂本裕哉と、先発候補にサウスポーが揃っているのは対戦相手にとって脅威だ。

4年目で中軸を任される佐野恵太は、横浜DeNAのキーマンだ(写真提供=小学館グランドスラム)。
4年目で中軸を任される佐野恵太は、横浜DeNAのキーマンだ(写真提供=小学館グランドスラム)。

2年連続本塁打王のネフタリ・ソトが二番に入ったり、下位にも乙坂 智ら長打力を備えた打者が並ぶ打線は面白い。筒香嘉智(現タンパベイ・レイズ)に代わってレフトで中軸を任される佐野恵太が、目の前の結果に一喜一憂せず、堂々と打席に立ち続けられれば得点力もアップするはずだ。年を追うごとに手堅くなっていく印象があるアレックス・ラミレス監督のマネジメントにも注目したい。

 阪神は、話題の中心となっている外国人の成績が順位を左右するのは確かだろう。左打ちのジャスティン・ボーアがサウスポーを打てないことがクローズアップされているが、長打力があって左腕もきっちり打ちこなすならメジャー・リーグで主軸を担っている。来日する外国人は、どこかに欠点を抱えながらも、日本のスタイルに順応することで数字を残していく。左腕にやられても、それなりの成績ならいいと大らかに見ていたい。西 勇輝が牽引する先発ローテーションは、右サイドの青柳晃洋、左腕の岩貞祐太やオネルキ・ガルシアらバラエティに富んだ布陣になりそうで、ブルペンの層も厚くなっている。昨年もチーム防御率でリーグトップだった投手力を前面に出した戦いで、僅差の勝負をものにしてもらいたい。

昨年Bクラスのチームにも大きなチャンスがある

 広島のセ・リーグ3連覇からのBクラス転落は、ファンに大きなショックを与えた。そんなタイミングで監督に就任した佐々岡真司は、1965~67年に指揮した長谷川良平以来53年ぶりの投手出身監督。これまでに築かれたチーム力を生かしても、戦い方は大きく変化するだろう。鈴木誠也という柱がしっかりしている打線は、選手の調子や相手の先発投手によって組み替えていくか。いずれも右打ちのホセ・ピレラとアレハンドロ・メヒアが、8月あたりから何番に固定されていくかがポイントになる。大瀬良大地とクリス・ジョンソンが先発の軸になる投手陣では、二番手以降の起用法が勝敗に直結するのではないか。そんな中で、ルーキーの森下暢仁がどんな投球を見せてくれるか楽しみだ。

 オープン戦が6勝7敗、開幕直前の練習試合が4勝6敗2引き分けという成績が、優勝争いに加わるかBクラスのままか、中日にはどちらの可能性もあることを示している。象徴的だったのは、6月12日の横浜DeNA戦だ。大野雄大と今永が初回に2点ずつを取られ、今永は2回からは持ち直したが、大野雄はさらに4失点した。最優秀防御率を手にした大野雄が、チームが苦しい局面で完封勝利を挙げるなど、先発投手が勝負の分岐点で踏ん張れば、昨年はチーム打率.263でセ・リーグトップだった打線も効率よく援護してくれるだろう。その打線は、両打ちでパンチ力もあるソイロ・アルモンテをどう使うかに関心が集まる。そして、高橋周平や京田陽太には、さらに貪欲にチームを牽引してもらいたい。

 昨年のチーム防御率は6球団中唯一の4点台で、しかも5点台に近い4.78。一方、チーム打率もセ・リーグ6位の.244なら、東京ヤクルトが最下位になるのも不思議ではない。投打に戦力を整備していくなら、まずは投手力を中心としたディフェンスの安定だ。その意味では、投手出身の高津臣吾が監督になり、メジャー・リーグも経験している斎藤 隆の投手コーチ就任には期待が持てる。村上宗隆の大ブレイクで、山田哲人との相乗効果を含めて攻撃力がさらにアップしそうな打線では、塩見泰隆や濱田太貴が大きく成長できるか。ゴールデン・ルーキーの奥川恭伸が注目される投手陣では、今野龍太や長谷川宙輝の移籍組に新しい風を吹かせてもらいたい。きっかけをつかめば、最も勢いに乗るチームと言っていい。

 例年なら夏場に力を発揮したチームがペナントに近づくが、投手がベストな状態ではない中で開幕する今季は、投手力が整ってくるのが夏場になりそう。秋に向けての展開が読めず、昨年Bクラスのチームの下克上にも大いに期待できる。

いよいよ開幕するプロ野球!! パ・リーグの見どころはここだ

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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