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センバツ・相手投手がニヤッとした……ここまでの秀逸コメント集②

楊順行スポーツライター
こんなふうにメモをします(撮影/筆者)

 開催中の第96回選抜高校野球は、ここからがクライマックス。某出版社の「X」でつぶやいた秀逸なコメントがわりあい好評だったので、続編を。

・1回戦 常総学院1—0日本航空石川

「お客さんが入ると、甲子園練習のときと雰囲気が全然違くて、最初は緊張しましたが楽しかったです」とは、決勝犠牲フライの常総学院・武田勇哉。島田直也監督は「変な勘違いをしていい」と指示したそう。相手は被災地からの出場なので、同情の応援が盛り上がるだろうが、相手への応援も自分たちへのものだと勘違いしろ、というワケです。

・2回戦 星稜3—2八戸学院光星

9回表、佐宗翼がはじいたゴロを俊敏にカバーする好プレーでアウトにした星稜の二塁手・中谷羽玖。「いつもピッチャーには、『ゴロには触らないで』といっているんです」。つまり、へんに打球方向が変わると処理できるはずのゴロもセーフになる。「でも投手は、本能的に手を出しますよね」。一方の佐宗、「中谷の守備には、中学時代から助けられています」。

・2回戦 健大高崎4—0明豊

9回2死走者なしから、147キロの速球を三遊間に弾き返した明豊・末吉冴太朗。「最初の149キロで相手のピッチャーがニヤッとしたので、また得意のまっすぐでくると絞っていました」。末吉の課題は、この日エラーを記録した守備。「せめて、守備固めと交代させられないようにしたいです」。

・2回戦 中央学院7—6宇治山田商

敗れはしたものの、3安打にホームスチールも決めた宇治山田商の郷壱成。打席での応援歌は郷ひろみの『2億4000万の瞳』で、自分からリクエストしたそうです。「でも郷ひろみさんはあまりよく知りません」。まあ、そりゃそうか。

・2回戦 青森山田6—5広陵

追いつかれた9回、一時は勝ち越し打を放った広陵・土居湊大。「相手のタイムの間、次打者の只石が『まっすぐ狙いだろうけど、お前なら甘くきた変化球も打てる』と」。その通り、スライダーを左中間に二塁打しました。広陵の高尾響は7回までノーノーでしたが、ナインの目からは調子が悪かったとか。「だからこそ、早い回から援護してあげなくてはいけませんでした」。

・2回戦 大阪桐蔭4—2神村学園

5回を1失点と好投した大阪桐蔭の中野大虎。この冬大事にしてきたのは「リズム、テンポ、コントロール」の練習で、2月からは二段モーションに取り組みました。「2度目に足を上げたところからリズムに乗るのがチャームポイントです」。なかなかユニークな表現でしたが、ストロングポイントでは……?

・準々決勝 星稜5—0阿南光

7回、三遊間の難しいゴロを処理したのはいいけれど、一塁に悪送球した星稜の萩原獅士。「捕球した勢いで反時計回りに回ったら、お客さんが多くて一塁がどこかわからなくなって」と苦笑い。次にゴロを処理したときには、「ボールを置きに行って」ショートバウンド送球と守備はさんざん。それでも、先制打で四番の役割は果たしました。

・準々決勝 健大高崎6—1山梨学院

前年優勝の山梨学院は、連覇の夢叶わずベスト8。それでも、ここまで来られたことに吉田洸二監督は目を細めます。「なにしろスタート当初は『飛ばないバットを先取りして使うなんて、さすが』とか『(控え選手の)Bチームですかね』とかいわれたんです。従来のバットを使っていますし、レギュラーで臨んでいるのに……それほど弱かったんです」。そこからベスト8の成長をほめましょう。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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