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阪神タイガース・谷川昌希が 注目のデュオ「THE REMAIN」の後押しでフル回転する

土井麻由実フリーアナウンサー、フリーライター
「THE REMAIN」のふたりと谷川昌希投手(写真提供:鮫島成彬氏)

前回の続き)

■「そこから得られるメリットとは」―考え方の転換

進化した谷川昌希投手
進化した谷川昌希投手

 プロ入り3年目の今年、たしかな力をつけて初の開幕1軍入りを狙っている阪神タイガース谷川昌希投手

 開幕だけではない。シーズンを通して活躍するためにストレートの質を上げ、これまでほとんど使えていなかったフォークをブラッシュアップした。(参照記事⇒3年目の覚醒。谷川昌希は優勝するためのピースだ

 そしてメンタル面でもマイナスをプラスに変えるようになった。その“術”を身につけたのは昨年のことだ。

 「考え方、めっちゃ変わったっすよ、メンタルトレーナーをつけて」。

自ら行動を起こし、メンタルトレーナーに出会った
自ら行動を起こし、メンタルトレーナーに出会った

 なんと、自らの力でメンタルトレーナーを見つけて師事したという。きっかけは1冊の本だった。

 「この本、おもしろそうやな」と買って読んだ本、『弱いメンタルに劇的に効くアスリートの言葉』が刺さり、インスタでその作者名を検索した。

 そして即、「阪神タイガースの谷川といいます。話を聞かせてもらえませんか」とDMを送った。何か感じるものが、谷川投手を衝き動かしたのだ。

 「ちょうどいろいろ考えてたときで、タイミング的に『うわ!今しかない』って思って。そういうの、ピンとくるっすね」。

望月惇志投手と(やはり萌え袖)
望月惇志投手と(やはり萌え袖)

 その著者であるメンタルトレーナーの鈴木颯人氏に会い、自分の思いを聞いてもらった。

 「たとえば自分と同じようなポジションのピッチャーが1軍に行って、投げてるのをテレビで見て『打たれろ!』『チャンス回ってこい!』って思うのが、すごい嫌やったんすよ。なんか、しょーもねぇなと思って」。

 そう打ち明けると、鈴木氏は「逆に、その人が活躍することによって、自分に得られるメリットって何?」と問うてきた。谷川投手は必死で考えた。

 鈴木氏の答えは「その人が活躍すればするほど、自分にチャンスが来たときにそこを超えられれば、もっと評価される」だった。

さらに萌え袖
さらに萌え袖

 「たしかにそういう考えもあるなと思って。逆に、じゃあ活躍してくれっていうふうな気持ちになった。今、チャンスが来ているけど、たとえば去年活躍した選手を超えられれば、自分の評価はもっと上がるなっていうモチベーションや考え方になっている。そういう考え方をするようになってから、心の余裕が出てきた」。

 相手が落ちることを願うのではなく、その相手より自身が上回ろうというような心の在り方に変わり、それがモチベーションとなって頑張れるようになったのだ。

 「そこから得られる自分のメリットっていうのを、すごく考える」。

 前向きな、プラス方向でしかない考え方だ。

■最初の実戦形式でインパクトを残す

矢野燿大監督と藤川球児投手
矢野燿大監督と藤川球児投手

 だからこそフォークを完成させることにも繋がったし、さらにそのメンタルは春季キャンプ中にも発揮された。

 今年初のシート打撃でのことだ。

 谷川投手は江越大賀選手に死球を当ててしまった。そして次の打者・北條史也選手と対峙したときだ。

 その初球、インサイドを厳しく攻めたのだ。チームメイトだ。当ててしまったあとには、なかなか内にいけるものではない。しかし、きっちりインサイドを攻めたことが、矢野燿大監督からも高く評価された。

 このシーンを谷川投手は種明かしする。

 「あれね、一番最初の実戦(形式)じゃないですか。普通にやっても目立たないから、何かインパクト残そうと。ちょうどシート行く前に(藤川)球児さんと話したんですよ。球児さんも『おまえの今のポジションなら、何かインパクトを残したらいい』って」。

キャッチボールを見守る藤川投手
キャッチボールを見守る藤川投手

 藤川投手との“作戦”はこうだった。

 「まず『バット1本、折りたくない?』って言われて。実際、先頭の陽川(尚将)さんのを折ったし」。

 内のシュートで詰まらせて折る予定だったのが外のストレートになったが、それでも初球で“任務”は遂行できた。

 続いての死球はもちろん、当てるつもりなどなかった。しかし当ててしまった。その瞬間、考えた。

 「これ、次は絶対にインコースにいかなあかんな。これいったらインパクト残るやろな」。

 しっかりとインサイドに投げきったことで、大きなインパクトを残すことができた。

矢野監督はルーキーイヤーからファームで評価してくれていた
矢野監督はルーキーイヤーからファームで評価してくれていた

 「試合になったらまた違うけど、シートだし、『谷川、こういうこともできるな』みたいなことはできたかな」。

 そして、こういった出来事の情報はチーム内に留まらない。今の時代、すぐに伝播する。他球団の打者に対しての意識づけにもなっただろう。

 常に「得られるメリット」をプラス方向で考えることができている。

 こうしてキャンプからオープン戦と順調に歩を進め、現在に至る。

■友人の「THE REMAIN」がオリジナル曲を提供

ルーキーイヤーの登場曲「for you」をソロで歌ってくれた鮫島成彬さん(写真提供:鮫島成彬氏)
ルーキーイヤーの登場曲「for you」をソロで歌ってくれた鮫島成彬さん(写真提供:鮫島成彬氏)

 そんな谷川投手を発奮させるできごとがある。今年また友人が、マウンドに上がるときの登場曲を提供してくれることになったのだ。

 2年前のルーキーイヤーにもオリジナル曲の「for you」を歌ってくれた鮫島成彬さんだ。(参照記事⇒ルーキーイヤーの登場曲「for you」

 かつてはソロボーカリストだったが、5ヶ月前からは西川輝さんとのデュオ「THE REMAIN(ザ・リメイン)」として活動している。

昨年末、「THE REMAIN」の路上ライブに行った(写真提供:鮫島成彬氏)
昨年末、「THE REMAIN」の路上ライブに行った(写真提供:鮫島成彬氏)

 昨年末、帰省したときに谷川投手は博多駅前で歌う彼らの路上ライブを聴きに足を運んだ。その後、一緒に食事をし、3人で大いに語り合ったという。

 そこでぜひ登場曲を作らせてほしいと持ち掛けられた。

 「2人とも真面目で、超熱いんすよ。なんか熱い話を3人でして、肉食いながら(笑)」。

 鮫島さんはバスケットボールに、西川さんは野球に、それぞれ高校まで打ち込み、大学に入って音楽に目覚めた。

 「声が対照的だけど似ている」という2人が一緒に組むことで、お互いにないよさを持ち寄って幅広い表現ができているというデュオだ。

「THE REMAIN」の鮫島成彬さん(右)と西川輝さん(写真提供:鮫島成彬氏)
「THE REMAIN」の鮫島成彬さん(右)と西川輝さん(写真提供:鮫島成彬氏)

 元々ジャイアンツファンだった西川さんは、今ではすっかりタイガースファンに鞍替えし、毎日タイガース情報をチェックしているそうだ。

 この日は食事をしたあと、カラオケに興じた。歌手の鮫島さんをして「大学のときからうまかった」と言わしめる谷川投手の歌は、昨年の「ファン感謝デー」で披露されたことで虎党にもすっかり周知されている。カラオケも大いに盛り上がった。

首脳陣とも気さくに話せる雰囲気が作られている
首脳陣とも気さくに話せる雰囲気が作られている

 「3年目って大事なシーズンだと思う。最強の相方と一緒に昌希を応援したい」という鮫島さんが、谷川投手に贈った曲「Pallet(パレット)」について語る。(歌詞は文末参照)

 「僕たち3人の決して交わらないはずの個(色)が音楽と野球を通じて混ざり合って、1人じゃ出せない色(未来)を出していく。それぞれを応援してくれる人たち(色)がもっともっと多くの色を重ねて、より強い一つのものになっていくように」。

今年は過去2年とは全く違う
今年は過去2年とは全く違う

 鮫島さんはさらに続ける。

 「甲子園で流れることをイメージして作った。1番の歌詞には、これまでの昌希の悔しかったこと、辛かったことに思いを巡らし、本人にも思い返して奮い立ってもらいたいという気持ちを込めた。2番は今、この瞬間のこと、ここから頑張っていくんだと思ってもらえるようにという思いで書いた」。

 サウンドプロデュースはFREAK森岡大地さんが担ってくれた。

 谷川投手は「最初聴いたとき、『おっ!いいやん!』って思った。すごく明るい曲」とすぐに気に入ったという。

 「THE REMAIN」は3月14日に「24/7」をデジタル配信し、「Pallet」も追ってリリースする予定だ。

昨年57試合に登板した守屋功輝投手を超えるか?
昨年57試合に登板した守屋功輝投手を超えるか?

 「たくさんの人に聴いてもらいたい」という谷川投手だが、もちろん自身が数多く登板すればそれだけ多く人々の耳に触れることもわかっている。

 「まぁ60回登板するとして、その半分がホームだとしたら30回くらいか…」。

 そんな計算をしてニッと笑う。自分が活躍すればするほど、友の音楽活動をバックアップすることになる。そしてそれは、自身にとっても励みにもなる。

 「成彬たちのこと、たくさん書いといてくださいよ」と、敏腕マネージャーのごとく口添えも忘れない。

今季、何回その名がコールされるだろうか
今季、何回その名がコールされるだろうか

 仮定として「60試合」と挙げた。それは望むところではあるが、実際は数字の目標設定はしていないという。

 「目標は最後まで1軍にいるってこと。完走?そうそうそう。そうなると必然的に歯車になれていると思うし。もちろん開幕1軍にもいなきゃいけない。投げきるということ。シーズンが終わったときに『めちゃくちゃ肩使ったな』っていうくらいのシーズンを送りたい」。

 谷川投手にとっての“パレット”であるマウンドで存分に自分の色を出し、優勝するための歯車として開幕からラストまでフル回転することを誓った。

Pallet

        作詞:鮫島成彬

N)溢れる思いを抱いて 果てしないこの道で挑む

I just wanna make it trues on my way

1人じゃない always by your side

oh yeah〜

1人じゃない always by your side

A)誰にも知れぬ 悔し涙が続く

その度"次こそは"と 未来(あす)見る

弱い自分を枯らして

わずかでも踏み出すhope

N)孤独迫りくるこの場所で

不安に押し潰されても

見渡せば沢山の強さをくれる

only one your color

A)溢れる思いを抱いて 果てしないこの道で挑む

I just wanna make it trues on my way

1人じゃない always by your side

oh yeah〜

1人じゃない always by your side

N)臆病な自分も 弱さも受け入れmy pallet

自分だけの色を 塗り重ねる oh life goes on

A)他の誰かと比べて 自分に無い色嘆くより

踏み出せば輝き出す

描く先はonly one my pallet

N)溢れる思いを抱いて 果てしないこの道で歌う

I just wanna make it trues on my way

1人じゃない always by your side

oh yeah〜

A)溢れる思いを抱いて 終わりなきこの道で歌う

I just wanna make it trues on my way

1人じゃない always by your side

oh yeah〜

1人じゃない always by your side

この道は only one your pallet

THE REMAINザ・リメイン)】

歴史ある日本歌謡曲を歌うデュオ歌謡ヴォーカルユニット。

メンバーは鮫島成彬西川輝

耳、心、記憶に残る歌を届けている。

*阪神タイガース・谷川昌希投手に2020年シーズンの登場曲「Pallet」を提供。

*3月14日、「24/7」をデジタル配信。

*3月29日、ワンマンライブを福岡市のROOMSで開催。

(表記のない写真の撮影は筆者)

フリーアナウンサー、フリーライター

CS放送「GAORA」「スカイA」の阪神タイガース野球中継番組「Tigersーai」で、ベンチリポーターとして携わったゲームは1000試合近く。2005年の阪神優勝時にはビールかけインタビューも!イベントやパーティーでのプロ野球選手、OBとのトークショーは数100本。サンケイスポーツで阪神タイガース関連のコラム「SMILE♡TIGERS」を連載中。かつては阪神タイガースの公式ホームページや公式携帯サイト、阪神電鉄の機関紙でも執筆。マイクでペンで、硬軟織り交ぜた熱い熱い情報を伝えています!!

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