アジア人ヘビー級のパワー。張志磊のKO勝ち!
第5ラウンド、元WBO暫定ヘビー級チャンピオン、張志磊の右ショートが、デオンテイ・ワイルダーの顔面を捉える。ワイルダーはリング上で、時計回りに一回転した。
張はチャンスを逃さず、更に右を浴びせる。すると元WBCヘビー級王者は、リング上で大の字になった。同ラウンド1分51秒で、試合は終了した。
サウジアラビアから同ファイトを中継していたアナウンサーは「ワイルダーのキャリアは、これで終わった!」と興奮気味に捲し立てた。
北京五輪ヘビー級の銅メダリストとしてプロ入りし、WBC王座を10度防衛したワイルダーも38歳。2020年2月22日に同タイトルを失った試合を含め、ここ5試合で4つの黒星と、衰微を見せている。今回の倒れ方は、これ以上、ワイルダーに現役を続けさせるのは危険だと感じさせた。
『USA Today』紙のジョッシュ・ピーター記者は、「もしかしたら、これが最後の試合になるかもしれない」と書いたが、どんなに衰えても、元世界王者にはそれなりの価値がある。プロモーターにとって、名前のあるかつてのチャンピオンを期待の若手にぶつければ、ある程度の集客が期待できるからだ。
張戦の前、ワイルダーは「勝負の時だ」と話し、引退の可能性を示唆していた。 5ラウンドに張の右を2発受けてキャンバスに沈んだ折、今後の彼には<咬ませ犬>の道しか残っていないように見えた。
両者の身長は、共に2メートル1センチだったが、30kgもの体重差があった。張は、2回の前半からワイルダーをコーナーに詰め、左ストレート、右フックでダメージを与えた。元WBC王者は、サウスポー対策がまるで出来ていなかった。
中国人である張も北京五輪の銀メダリストだ。が、まさかアジア人が最重量級のベルトを巻くなどと誰が信じていたか。近年、ヘビー級は激しく低迷しているが、黄色人種にはとても無理とされていたのだ。そのWBO暫定タイトルは手放したが、41歳にして38歳の元チャンピオンに引導を渡すことで、張は、もう一度脚光を浴びた。
筆者は、2020年2月22日にワイルダーがタイソン・フューリーにKO負けした時点で、限界を感じていた。負け方のみならず、タオルを投入して自身の命を救ったトレーナーに対し、不平を述べる姿は見苦しかった。
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/de70e7663d0752e795a05c578cf9993ff6bfb91c
しかし、よく今日までファイターとして延命したと思う。愛する家族の為にも、リングを降りるのが相応しい。まだ、彼の人生は長いのだ。