「チャットGPTの生みの親」サム・アルトマン氏がオープンAIのCEOを突然解任、そのインパクトとは?
「チャットGPTの生みの親」として知られたサム・アルトマン氏が突然、オープンAIのCEOを解任された――。
チャットGPTの開発元であるサンフランシスコのAIベンチャー、オープンAIが11月17日、その顔であるCEOのサム・アルトマン氏の解任を発表した。
アルトマン氏自身もXへの投稿で解任を認めている。
2022年のチャットGPT登場からわずか1年足らずで、グローバルな生成AI旋風を巻き起こし、オープンAIを約900億ドル(約13兆5,000億円)という評価額に押し上げたアルトマン氏の突然の解任は、衝撃を広げた。
生成AIブームの顔であり、AI規制論者としてグローバルなAI政策を巡る論客でもあったアルトマン氏の退場で、AIをめぐる潮流はどう変わるのか。
●「オープンAIを率いる能力なし」
オープンAIの11月17日付の発表文は、きわめて厳しい調子で、アルトマン氏の解任を説明している。
だが、その具体的な理由については、何も述べられていない。
暫定CEOとして、テスラ出身の最高技術責任者(CTO)、ミラ・ムラティ氏が着任。会長のグレッグ・ブロックマン氏も退任し、CEOの補佐役となるという(※追記:ブロックマン氏は現地時間(以下同)17日16:09のXへの投稿で、今回の事態を受けて同社を辞めた、と表明している)。
アルトマン氏は11月17日午後1時46分、Xにそう投稿している。
●マスク氏と共同代表として立ち上げ
チャットGPTは2022年11月30日に発表され、わずか2カ月で1億ユーザーを達成。当時としては最速の成長を見せたサービスとなった。
その後も成長は止まらず、11月6日の初の開発者会議では、チャットGPTは週あたり100億のアクティブユーザーを抱える、と公表された。
オープンなAI開発によって、そのリスクよりもメリットを確実にする、という目標を掲げて、イーロン・マスク氏と、サンフランシスコのベンチャー支援企業「Yコンビネーター」社長だったサム・アルトマン氏が共同代表として2015年に当初は非営利法人として立ち上げたのが「オープンAI」だった。
両氏のほか、ビジネス向けソーシャルメディア「リンクトイン」の共同創業者、リード・ホフマン氏、オンライン決済「ペイパル」共同創業者、ピーター・ティール氏といったシリコンバレーの著名起業家らが10憶ドルの支援をした。
だがマスク氏は、2018年にオープンAIと袂を分かつ。オープンAIの主導権を巡る確執があったとされる。
オープンAIは2019年に、「利益の上限付き営利企業」に衣替えをし、同年、マイクロソフトから10憶ドルの投資を受け、提携している。
●「アップルのジョブズ氏解任のようなもの」
テックイベント「TED」代表のクリス・アンダーソン氏は、アルトマン氏の突然の解任に、Xへの投稿でこう述べている。
元グーグルCEOのエリック・シュミット氏はXにこう投稿した。
アルトマン氏の解任が衝撃を広げるのは、オープンAIが、まさに急成長の局面にあるためだ。
ウォールストリート・ジャーナルによれば、マイクロソフトはこれまでに、130億ドルをオープンAIに投資し、株式の49%を取得しているという。
また、オープンAIの評価額は、2023年に入ってから3倍にも拡大。最大900億ドルにも上るという。
11月6日の開発者会議では、個人でも独自の「チャットGPT」が作成・販売できる「マイGPTs」などの新サービスを発表。同サービスが利用できる有料アカウント(チャットGPTプラス)への新規登録が殺到し、受付を中止する事態となっていた。
一方でアルトマン氏は、AIの急速な進化によるリスクについても警告を発し続けてきた。
米上院の公聴会に出席した際には、高度なAI開発に関するライセンス制導入などを提言。高度なAIによる人類絶滅の危機を訴える署名に賛同するなど、AI規制にも、積極的な発信を続けてきた。
※参照:「AIによる絶滅のリスクに備えよ」オープンAI、グーグル、マイクロソフトが規制を掲げる理由とは?(06/01/2023 新聞紙学的)
AI開発と規制の両面の旗振り役でもあったアルトマン氏の退場は、現在の潮流に、かなりのインパクトを与えそうだ。
(※2023年11月18日付「新聞紙学的」より加筆・修正のうえ転載)