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「チャットGPTの生みの親」サム・アルトマン氏がオープンAIのCEOを突然解任、そのインパクトとは?

平和博桜美林大学教授 ジャーナリスト
解任発表前日の11月16日にサンフランシスコのAPEC会合に出席したアルトマン氏(写真:ロイター/アフロ)

「チャットGPTの生みの親」として知られたサム・アルトマン氏が突然、オープンAIのCEOを解任された――。

チャットGPTの開発元であるサンフランシスコのAIベンチャー、オープンAIが11月17日、その顔であるCEOのサム・アルトマン氏の解任発表した。

アルトマン氏自身もXへの投稿で解任を認めている。

2022年のチャットGPT登場からわずか1年足らずで、グローバルな生成AI旋風を巻き起こし、オープンAIを約900億ドル(約13兆5,000億円)という評価額に押し上げたアルトマン氏の突然の解任は、衝撃を広げた。

生成AIブームの顔であり、AI規制論者としてグローバルなAI政策を巡る論客でもあったアルトマン氏の退場で、AIをめぐる潮流はどう変わるのか。

●「オープンAIを率いる能力なし」

アルトマン氏の退任は、取締役会の熟議に基づくプロセスを経たものだ。アルトマン氏は取締役会とのコミュニケーションにおいて一貫して率直さを欠き、取締役会の責任遂行を妨げたとの結論に至りました。取締役会は、同氏が引き続きオープンAIを率いる能力について、もはや信任できないとの判断を下した。

オープンAIの11月17日付の発表文は、きわめて厳しい調子で、アルトマン氏の解任を説明している。

だが、その具体的な理由については、何も述べられていない。

暫定CEOとして、テスラ出身の最高技術責任者(CTO)、ミラ・ムラティ氏が着任。会長のグレッグ・ブロックマン氏も退任し、CEOの補佐役となるという(※追記:ブロックマン氏は現地時間(以下同)17日16:09のXへの投稿で、今回の事態を受けて同社を辞めた、と表明している)。

オープンAIで過ごした時間はとても楽しかった。個人的には多少の変革につながるものだったと思うし、世界にとってもそうであったとすればうれしい。次のことについては、また後日。

アルトマン氏は11月17日午後1時46分、Xにそう投稿している。

●マスク氏と共同代表として立ち上げ

チャットGPTは2022年11月30日に発表され、わずか2カ月で1億ユーザーを達成。当時としては最速の成長を見せたサービスとなった。

その後も成長は止まらず、11月6日の初の開発者会議では、チャットGPTは週あたり100億のアクティブユーザーを抱える、と公表された。

オープンなAI開発によって、そのリスクよりもメリットを確実にする、という目標を掲げて、イーロン・マスク氏と、サンフランシスコのベンチャー支援企業「Yコンビネーター」社長だったサム・アルトマン氏が共同代表として2015年に当初は非営利法人として立ち上げたのが「オープンAI」だった。

両氏のほか、ビジネス向けソーシャルメディア「リンクトイン」の共同創業者、リード・ホフマン氏、オンライン決済「ペイパル」共同創業者、ピーター・ティール氏といったシリコンバレーの著名起業家らが10憶ドルの支援をした。

だがマスク氏は、2018年にオープンAIと袂を分かつ。オープンAIの主導権を巡る確執があったとされる。

オープンAIは2019年に、「利益の上限付き営利企業」に衣替えをし、同年、マイクロソフトから10憶ドルの投資を受け、提携している。

●「アップルのジョブズ氏解任のようなもの」

テックイベント「TED」代表のクリス・アンダーソン氏は、アルトマン氏の突然の解任に、Xへの投稿でこう述べている

唖然とした。オープンAIがアルトマン氏を解雇するというのは、アップルがスティーブ・ジョブズ氏を解雇したようなものだ。 真相を知っているのは誰ですか?どうか教えてほしい!

元グーグルCEOのエリック・シュミット氏はXにこう投稿した。

サム・アルトマン氏は私のヒーローだ。 彼は無一文から900億ドルの価値を持つ会社を築き上げ、私たちの世界を永遠に変えた。

アルトマン氏の解任が衝撃を広げるのは、オープンAIが、まさに急成長の局面にあるためだ。

ウォールストリート・ジャーナルによれば、マイクロソフトはこれまでに、130億ドルをオープンAIに投資し、株式の49%を取得しているという

また、オープンAIの評価額は、2023年に入ってから3倍にも拡大。最大900億ドルにも上るという

11月6日の開発者会議では、個人でも独自の「チャットGPT」が作成・販売できる「マイGPTs」などの新サービスを発表。同サービスが利用できる有料アカウント(チャットGPTプラス)への新規登録が殺到し、受付を中止する事態となっていた。

一方でアルトマン氏は、AIの急速な進化によるリスクについても警告を発し続けてきた。

米上院の公聴会に出席した際には、高度なAI開発に関するライセンス制導入などを提言。高度なAIによる人類絶滅の危機を訴える署名に賛同するなど、AI規制にも、積極的な発信を続けてきた。

※参照:「AIによる絶滅のリスクに備えよ」オープンAI、グーグル、マイクロソフトが規制を掲げる理由とは?(06/01/2023 新聞紙学的

AI開発と規制の両面の旗振り役でもあったアルトマン氏の退場は、現在の潮流に、かなりのインパクトを与えそうだ。

(※2023年11月18日付「新聞紙学的」より加筆・修正のうえ転載)

桜美林大学教授 ジャーナリスト

桜美林大学リベラルアーツ学群教授、ジャーナリスト。早稲田大卒業後、朝日新聞。シリコンバレー駐在、デジタルウオッチャー。2019年4月から現職。2022年から日本ファクトチェックセンター運営委員。2023年5月からJST-RISTEXプログラムアドバイザー。最新刊『チャットGPTvs.人類』(6/20、文春新書)、既刊『悪のAI論 あなたはここまで支配されている』(朝日新書、以下同)『信じてはいけない 民主主義を壊すフェイクニュースの正体』『朝日新聞記者のネット情報活用術』、訳書『あなたがメディア! ソーシャル新時代の情報術』『ブログ 世界を変える個人メディア』(ダン・ギルモア著、朝日新聞出版)

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