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マイナーリーグ時代に「代理教師」として働いた選手は日本プロ野球にも割と多い!? 現在の阪神には…

宇根夏樹ベースボール・ライター
スティーブン・ライディングス(ニューヨーク・ヤンキース)Aug 15, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 8月3日にメジャーデビューしたスティーブン・ライディングス(ニューヨーク・ヤンキース)は、5登板で計5.0イニングを投げて7三振を奪い、自責点は1にとどめている。スタットキャストによると、その速球は最速100.9マイルを記録した。ただ、新型コロナウイルスに感染したジョーダン・モンゴメリーの復帰に伴い、入れ替わりにロースターから誰かを外さなくてはならず、ライディングスは8月17日にAAAへ戻された。

 ここまでなら、そう大きなニュースにはならない。だが、ライディングスは、ハードボーラーというだけではない。昨オフは高校で代理教師を務め、化学を教えていた。MLB.comのマット・モナガンは「100マイルを投げる代理教師」と題した記事を発表し、他にもいくつかのメディアが、ライディングスを話題にしている。

 オフの間、違う仕事に就くマイナーリーガーは少なくない。収入を得るためだ。FAとなった選手はもちろん、球団に在籍していても、選手としての収入は、シーズンが終わると途絶える。代理教師と訳すのが適当かどうかはさておき、サブスティテュート・ティーチャーとして働いたことのある選手も、ライディングスが最初ではない。現役選手では、他にもいるかもしれないが、5月5日にノーヒッターを達成したジョン・ミーンズ(ボルティモア・オリオールズ)や、8月19日に4年ぶりのメジャーリーグ復帰を果たしたアンドルー・アルバース(ミネソタ・ツインズ)がそうだ。

 過去3シーズン、アルバースはオリックス・バファローズで投げた。日本プロ野球でプレーした代理教師の経験者も、アルバースに限らない。2011~12年に北海道日本ハム・ファイターズとオリックスで計165試合に出場したボビー・スケールズ、2012年に横浜DeNAベイスターズで2登板のボビー・クレイマー、2016年に広島東洋カープで2登板のスティーブ・デラバー……昨シーズンから阪神タイガースでプレーしているジェリー・サンズも、その一人だ。メジャーデビューはしていないが、サンズとチームメイトのジョー・ガンケルも、代理教師として働いていたことがある。

 そこには、こんな図式が浮かび上がる。ドラフト上位指名ではないので、高額な契約金はもらっていない→なかなかメジャーデビューできず、オフは別の仕事で収入を得る必要がある→メジャーデビューしてもそこで成功を収められず、海外のプロ・リーグへ移る、といった具合だ。

 もっとも、デラバーはそうではない。2012~13年は2年続けて55試合以上に登板し、どちらも奪三振12.50以上と防御率3点台を記録した。2013年はオールスター・ゲームに出場し、投げたのは5球ながら、ホームランを打たれれば同点という場面でバスター・ポージー(サンフランシスコ・ジャイアンツ)を三振に仕留めた。また、ミーンズはずっとオリオールズにいるのに加え、エースとして投げている。こちらも、2019年はオールスター・ゲームのメンバーに選ばれた。

 ライディングスは、8月14日に26歳となったばかり。メジャーリーガーとしてのキャリアは、まだこれからだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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