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WBOインターナショナル・スーパーフェザー級チャンピオン

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Mikey Williams/Top Rank

 第3ラウンド2分、チャーリー・スアレスの放ったロングの左フックがホルへ・カスタネーダの顎を捉える。赤いトランクスを身に纏ったテキサス在住のファイターはキャンバスに崩れ落ちた。

 起き上がり、試合続行を望んだカスタネーダだが、更に右ストレート、左フックを浴び、もう一度沈んだ。レフェリーはそこで試合終了を宣言。公式ノックアウトタイムは、同ラウンド2分22秒。勝者はデビュー以来18連勝を飾った。 

Mikey Williams/Top Rank
Mikey Williams/Top Rank

 WBOインターナショナル・スーパーフェザー級タイトル空位決定戦は、カスタネーダとスアレスによって争われた。

 2016年のリオ五輪にフィリピン代表として出場したスアレスは、初回から右ストレートをヒットしてカスタネーダをグラつかせる。 2019年1月のプロデビュー時点で30歳を迎えていたが、ここまで18戦全勝10KOと順調に歩を進めている。

 ただ、大手プロモーターに見出され、契約を締結したのは2023年7月。Top Rankの興行に出場するのは、今回が3度目である。

 身長168cmながら、スアレスのリーチは188cm。カスタネーダは、身長もリーチも178cm。元五輪代表選手は、常に自身の距離を保った。KOに結び付けるまでの組み立てが、選手としての年輪を示していた。

Mikey Williams/Top Rank
Mikey Williams/Top Rank

 ボクシング界を席巻したマニー・パッキャオの「次」を目指すフィリピン人ファイターたちだが、道は険しい。パッキャオをプロモートしたボブ・アラムは、当時フィリピンの英雄にチューンナップ戦を与えず、その時点で最も話題になる強敵との試合を組み続けた。それでも相手をことごとく倒し、狂い咲きのようにトップを獲ったのがパッキャオだった。

 サウスポーのフィリピン人KOキングは、"PACMAN"と呼ばれたが、まさにTVゲームの黄色いキャラクターのように、相手を食いまくった。ファーストラウンドから試合終了のゴングまで、常に獲物を沈めようとするスタイルも、ボクシングファンの溜飲を下げた。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 そのパッキャオがヨルデニス・ウガスに敗れて引退をアナウンスしたのは、2021年8月。早くも3年が経過した。

写真:Action Images/アフロ

 スアレスがこれまでに巻いたベルトは、WBOインターナショナルだけでなく、IBFインターコンチネンタル、WBAオセアニア、WBCアジア、WBAアジアなどが挙げられる。PACNANに追いつくのは現実的に不可能だが、36歳の彼はどこまでインパクトを残せるか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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