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ネット・ゲームの厳しすぎる使用制限は逆効果? 専門家が勧める「ペアレンタルコントロール」

森山沙耶ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i 臨床心理士
(写真:アフロ)

ペアレンタルコントロールとは、子どもによるパソコンや携帯電話・スマートフォンやゲーム機などの情報通信機器の利用を、親が監視して制限する取り組みのことです。

最近では、スマホやタブレット、ゲーム機などのデバイスにも、子どもが安全に利用できるように見守り、管理するための制限機能が搭載されています。機能の内容は、デバイスによって異なりますが、不適切なサイトへのアクセスを制限するもの、子どもの位置情報を確認するもの、購入やダウンロードの制限、使用時間に関する設定など多岐にわたります。

その中でも今回は、子どもがスマホやゲームをやりすぎてしまうことを防ぐことを目的とした、ペアレンタルコントロールの活用方法について解説します。

厳しすぎる制限は逆効果になるので注意

思春期にあたる年代の子どもの場合、ネット使用に関する厳しすぎるルールや親による監視は、ネット・ゲーム依存のリスク要因になりうることが研究によって分かっています(1)。また、10〜12歳の子どもを対象に調査を行なったところ、子どもが親によるペアレンタルコントロールが多いと認識するほどスマホへの依存度が高かったと報告しています(2)。これらの研究から、ペアレンタルコントロールによる過度な制限は依存を助長させてしまう可能性があるので注意が必要です。

一方で、子どものネット依存を防ぐ上で、親は子どものネット使用にまったく関わらないのではなく、子どもの行動を見守ったり、ネット使用について話し合ったりなど、ある程度関わりを持つことが重要であることもわかっています(3)。

ペアレンタルコントロールを活用する場合には、その機能に頼ったり、絶対視するのではなく、子どもとのコミュニケーションを土台としながら、その補助手段としてペアレンタルコントロールの機能を活用するくらいの心構えがよいのではないかと考えられます。

ネット依存における親の関わりについて詳しくはこちらの記事もご参照ください。

インターネット依存と家族の関係 私たちが親としてできることとは

モニタリングとして活用する

ペアレンタルコントロールでは、子どもに持たせたスマホの利用時間やその時間帯、利用しているアプリやWebの閲覧履歴などをモニタリングすることができます。iPhoneやiPadではスクリーンタイムの中で、利用状況を確認することができます。子どもが1日に何時間スマホを利用しているのか、特に長時間使用してしまいがちなゲーム、SNSなどのアプリについても個別に利用時間をみることができます。Nintendo Switchなどのゲーム機でも、親がアプリ内で1日にプレイした時間や遊んだゲームが確認できるものがあります。

おすすめの活用方法としては、親が子どもに内緒で利用時間を把握するのではなく、1日1回程度子どもと一緒にスクリーンタイムを確認する時間を作ってみることです。

スマホを使っていると、気がつけばかなりの時間が過ぎていたということは大人でも経験したことがあると思います。実際に、どのくらいの時間を費やしているのか主観的には把握しにくいものです。客観的な利用時間をみてみると意外と長時間になっていることに気がつくこともあります。一緒に確認する機会を習慣化していくことで、子どもが自分で使いすぎに気づくことを促すことができます。

また、子どもが勉強に取り組んだ日はスマホの使用時間が減っているとか、決めたルールの範囲内で使えているなど、うまくいっている点や頑張っている点に目を向けることも忘れないでください。できていることを確認することで、子どもがデバイスと上手に付き合っていくことに前向きになれるかもしれません。

もし使いすぎが続くようであれば、子ども本人を責めるのではなく、「最近、動画を見る時間が長いことを心配に思っている。あなたはどう思う?」と子どもの考えや気持ちを傾聴しながら、改善点やネット以外の楽しい活動を増やすことなどを親子で一緒に考えてみてください。

iPhoneのスクリーンタイムの画像。筆者作成
iPhoneのスクリーンタイムの画像。筆者作成

家庭内の使用ルールの補助として活用する

ネットやゲームの使用について家庭で決めたルールを子どもが守れるようになるためには、気合いや根性ではなく、守りやすい環境をいかに作るかが大切です。

例えば、ゲームは1日2時間というルールを親子で話し合って決めたとします。その際に、ゲーム機のみまもり機能でも2時間30分など少し余裕を持った時間でシャットダウンするように設定するとよいでしょう。ゲームの場合、試合の途中だと時間ぴったりで終わることが難しいといった事情があるため、子どもと話し合った上で、余裕を持った設定にしておくことをおすすめします。

こうした設定をしないで口約束だけになってしまうと、親も子も「今日はいいか」と延長してしまう日がだんだん増えてきて、ルールがなし崩しになってしまうことがあります。決めたルールを効果的に運用していくためにも、ルールに合わせて最低限のペアレンタルコントロールを設定してみてください。

また、夜は21時にスマホなどデバイスの使用を終了するというルールがある場合は、その時間にデバイスが使えなくなる設定をしておくことも有効です。寝る前にスマホを使うと、ブルーライトの影響やゲームや動画に夢中になることで寝付きが悪くなることはよく知られているところです。枕元でいつでもスマホやタブレットが使える状態にあると、なんとなくスマホを触ったり、通知に反応して見てしまうことがあります。そういった何となく見てしまう状況を防ぐことができます。

ただし、前述のとおり、ペアレンタルコントロールを厳しくしすぎると、子どもが隠れて制限を解除する、親に嘘をつくといった別の問題が出てくることがあります。そのため、あらかじめ何か問題が起きたときや、ルールを超えて使いたいときには、親に相談してほしいということを子どもに伝えておくことが大切です。

そして実際に、今日は延長させてほしいとかアプリで課金したいものがあるといった相談があった場合には、初めから「ダメ!」と言ってしまうと今後子どもが相談しにくくなってしまいます。まずは子どもの気持ちや考えを否定や批判をせずに傾聴してほしいと思います。その上で、メリットとデメリットを考慮して、一緒に対応を決めるようにしてください。

日頃から子どもとスマホやゲームの使い方についてコミュニケーションを取りながら、その中でペアレンタルコントロールを上手に取り入れてみてください。

それぞれの家庭の状況や子どもの特性などによって、具体的にどのような機能が有効かは異なりますので、悩む場合には専門家に相談することも検討してください。

〈引用文献〉

(1) Wu, C., Wong, H., Yu, K., Fok, K., Yeung, S., Lam, C., & Liu, K. (2016). Parenting approaches, family functionality,and internet addiction among Hong Kongadolescents. BMC Pediatrics, 16, 130.

(2)Lee, E., & Ogbolu, Y. (2018). Does parental control work with smartphone addiction?: A cross-sectional study of children in South Korea. Journal of Addictions Nursing, 29(3), 128-138.

(3)Martins, M., Formiga, A., Santos, C., Sousa, D., Resende, C., Campos, R., Nogueira, N., Carvalho, P., & Ferreira, S. (2020). Adolescent internet addiction – role of parental control and adolescent behaviours. International Journal of Pediatrics and Adolescent Medicine, 7(3), 116-120.

ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i 臨床心理士

臨床心理士、公認心理師、社会福祉士。一般社団法人日本デジタルウェルビーイング協会代表理事。東京学芸大学大学院教育学研究科修了後、家庭裁判所調査官を経て、病院・福祉施設にて臨床心理士として勤務。2019年 独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センターにて「インターネット/ゲーム依存の診断・治療等に関する研修(医療関係者向け)」を修了後、同年 ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i(ミライ)を立ち上げ。現在はネット・ゲーム依存専門のカウンセリングや予防啓発のための講演・セミナー活動を行う。2021年から特定非営利活動法人ASK認定 依存症予防教育アドバイザー。

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