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認知症に気づくきっかけ【物をため込む・収集癖】どう対応する?介護福祉士が漫画でわかりやすく解説

こんにちは。介護と認知症の支援サポーター『夢 はるか』です。わたしはデイサービスや訪問介護の現場で15年以上働く介護福祉士です。
介護の仕事と同時に、子どもの頃から好きだった漫画を描くことを通して、一人でも多くの人に、認知症や介護のことを知っていただければと思っています。

認知症に気づくきっかけには、いくつかのパターンがあります。

今日は、不要な物をため込むようになったCさんのケースをご紹介します。

(わたしが体験した、いくつかの実話に基づくフィクションです)

調理ゴミをしまい込むCさん

80歳代後半のCさんのご自宅へ、わたしはホームペルパーとして週に2回訪問していました。

部屋の掃除、買い物の同行と調理の手伝いなどが、わたしの仕事の内容でした。

Cさんは簡単な調理は自分でできましたが、ゴミを適切に捨てることができなくなってきました。

訪問するたびに調理後のゴミが、キッチンの戸棚に詰め込まれていました。

ある日、わたしが調理のお手伝いをしていたときのことです。

わたしが使用済みの空のプラ容器を捨てようとすると、Cさんから声がかかりました。

『それ、捨てるの?とっておきます』『もう使いませんよ』『また使います』(ちょっと口調強め)
『それ、捨てるの?とっておきます』『もう使いませんよ』『また使います』(ちょっと口調強め)

『保存容器なら戸棚にたくさんあるので、なくても大丈夫ですよ』『わたしの家だから構わないで!ここに置いておきます!(怒)』
『保存容器なら戸棚にたくさんあるので、なくても大丈夫ですよ』『わたしの家だから構わないで!ここに置いておきます!(怒)』

Cさんが激しく怒ってしまったので、その日は戸棚をそのままにして帰ることにしました。

次の訪問日に、戸棚の中を見てみると…

先日のプラ容器が、そのままありました。

使われた形跡はありませんでした。

数日後。「全然変わってない…むしろ増えてる…」
数日後。「全然変わってない…むしろ増えてる…」

さらに、洗っていない使用済みの使い捨て容器などが、いくつも増えていました。

汚れた容器は衛生的によくないと判断し、Cさんが見ていない間に、さりげなく処分しました。

Cさんが、なくなった容器を探し出すのでは…

と心配しましたが、全く気にしている様子はありませんでした。

あれだけ強く「捨てないで!」とこだわったプラ容器のことも、すっかり忘れているようでした。

そんなCさんの様子に、わたしは

「なんだか以前と違うな…」と感じたのでした。

判断力・理解力の低下

認知症の初期症状に『判断力・理解力の低下』があります。

Cさんは、わたしがヘルパーとして通い始めた頃は、ゴミをため込むことはありませんでした。

その後のある時期から、捨てるものと保存するものを、適切に区別することができなくなったようです。

記憶力の低下

一般的に、認知症に気づくきっかけになることが多いのは『記憶力の低下』です。

Cさんは、ヘルパーと言い争いをしてまで、使用済みのプラ容器を捨てることを拒みました。

しかし、そのプラ容器を自分で戸棚にしまったことを忘れ、その後使うこともありませんでした。

自分で戸棚を開けたときに、

「こんなのいつ入れたかな?」

と話すこともありました。

ヘルパーがプラ容器を処分しても、全く気にすることがなかったのは、自分がしまったことを忘れていたのだと思われます。

もともと、どんな物も大切に使っていたCさん。

そんなCさんだからこそ、

「まだ使えそうだから、今度また使おう」

という気持ちが、認知症の進行とともに極端に強くなったのでしょう。

今回のケースでは衛生的に問題のあるものは、わたしが処分しました。

それと同時に、Cさんの『物を大切にする』気持ちは否定しないようにしました。

戸棚を定期的に一緒に整頓したり、間仕切りや箱を用意して、自分で整理しやすくするのもおすすめです。

孤独や不安から、収集癖の症状が現れることもあります。

物をため込むことを頭から否定せず、その気持ちに寄り添うことも大切です。

周りに理解者がいることで、認知症になっても穏やかな日々を過ごすお年寄りを、わたしは何人も見てきました。

介護福祉士としてデイサービスや訪問介護の現場で働いてきました。職場の上司の指導で、研究会での発表や、学術誌へのケースレポートの投稿なども積極的に行なっています。また、子どもの頃から好きだった漫画やイラストを描くことで、認知症の知識や介護のコツをわかりやすく伝えることを心がけています。

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