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非日常な遠い世界へ! 異国情緒あふれる旅の気分が体験できるエッセイ【3選】

旅に出よう!

読んだら旅に出たくなること間違いなし。旅に出なくても、本を読むだけで日本にいながら異国の空気を存分に味わうことができるエッセイ3冊をご紹介します!

(1) 遠い太鼓(ギリシャ・イタリア)

「遠い太鼓」村上春樹(講談社、1993)
「遠い太鼓」村上春樹(講談社、1993)

まずは、村上春樹さんの「遠い太鼓」(講談社、1993)。村上春樹さんが1986年から3年ほどヨーロッパに住んだ時の記録が綴られています。少し古い本ですが、今読んでも十分に新鮮な空気が味わえます。

特にギリシャ編は、ものすごく地中海の空気感が漂ってきます。ギリシャのいろんな島に住んで、現地の人と何気ない交流をする。もちろん、楽しいことばかりじゃなくて、大変なことやハプニングもたくさん発生するのですが、「くすっ」と笑える村上春樹さん独特のユーモアを交えて描かれているので、それを含めて全部愛おしい記憶という感じです

本当に、読んだら行ってみたくなります。村上さんの小説とはまた一味違った雰囲気なので、村上さんの小説を読まないからという理由だけで読まないのは勿体無いです!

そう、もちろんギリシャにだって嵐は来るのだ。しかし正直に言って、まさか自分がエーゲ海で嵐に出くわすかもしれないなんて想像もしなかった。雨具といえば、日本を出るときに「雨が降ることもあるだろう」とふと思って、壊れかけた小型の傘をひとつ持ってきただけだし、それもどこかに置き忘れてきてしまった。そしてそこにーー傘の一本も持たない人間の頭上にーーまさに晴天の霹靂とでも言うべく、激しい嵐が襲いかかってきたのである。

(2) ロバのスーコと旅をする(トルコ・イラン・モロッコ)

「ロバのスーコと旅をする」高田晃太郎(河出書房新社、2023)
「ロバのスーコと旅をする」高田晃太郎(河出書房新社、2023)

こちらは、超・個性派エッセイ。馴染みのない中東や北アフリカなどの国を、一人の青年が旅をするエッセイ。しかも、ロバを連れて!!「えっ!???」

著者の高田晃太郎さんは、「太郎丸」という名前でXのフォロワー12万人越え(@taromar_u)の、知る人ぞ知る人気インフルエンサー。大のロバ好きで、新聞記者を辞めてまで、この旅に出たそうです。

場所が場所なので、ありえないようなトラブルも多発。全体的には、比較的真面目なトーンなのですが、現地の情景などが伝わってくる丁寧な描写が魅力です。なかなかこのような思い切った個性的な旅を経験できるひとはいないと思うので、ぜひこのエッセイで「刺激的な個性派の旅」の魅力を味わってみてください。

モロッコの旅をスタートさせた私の最初の関心は、スーコはどんな性格をしたロバなのだろう、ということだった。ソロツベは破天荒はロバだったが、スーコはどうなのだろう。初日は、おとなしいロバだという印象を持った。町を出るとすぐに鳴き叫び、遠のく故郷への郷愁に駆られていたソロツベに対して、スーコは一度も鳴かず、スタスタと歩いた。他のロバが視界に入っても気にする様子はなく、私が立ち止まるとスーコも止まり、「どうした?」という顔で振り向いてくる。こいつは優等生タイプなのかもしれないと私は思った。だが、そんな印象は早々にくつがえされた。

(3) カミーノ!(フランス・スペイン)

「カミーノ!女ひとりスペイン巡礼、900キロ徒歩の旅」森知子(幻冬舎、2013)
「カミーノ!女ひとりスペイン巡礼、900キロ徒歩の旅」森知子(幻冬舎、2013)

こちらも、笑いあり涙ありの巡礼記です。「ヨーロッパ版のお遍路さん」と呼ばれている、スペイン巡礼を歩いた、森知子さんのエッセイ。「カミーノ!女ひとりスペイン巡礼、900キロ徒歩の旅」森知子(幻冬舎、2013)

離婚後の傷心旅行をつづったエッセイでもあるのですが、著者の社交的な性格による面白い人たちとの交流と、明るくてユーモアのある文章で、読みながら声を出して笑ってしまうほど。楽しく読めて、読後感がよく、なんか元気がでます。

辛いことがあった時、元気がない時や、人生の転機に読むのもおすすめ。ただし、これを読んだら、絶対スペイン巡礼に行きたくなるので、覚悟して読んでくださいね。

今朝出てきたサント・ドミンゴ・デ・ラ・カルサーダという町の教会には”おんどり伝説”があるらしい。・・・・・ということだけは、オーストリア人のポールおじさんが歩きながらしてくれた30分にもおよぶ話の中で唯一理解できた(聞き取れた)。ともかく「チキン・ストーリー」。ポールの英語はただでさえドイツ語訛りが強くて聞き取りにくいのに(人のことは言えないが!)、低い声が口内で響きすぎる上に、いつも最後に自分で「オッホホホホホ〜」という笑い声をかぶせるからヒアリングが英検1級以上に難しい(たぶん)。とりあえず一緒に笑ってごまかしているのが現状だ。出身地をきかれた時の、「オーストリアです、ウィーン・カンガルーの国(つまりオーストラリア)じゃございませんよ〜、オーッホッホホホホホ〜」というジョークも、3回目くらいでようやく聞き取れたよ。今日またそれを誰かに話しているところに遭遇して、相手はもちろんポカンと口をあけていたから横から通訳入れてあげちゃったもんね、オーーッホッホッホ。

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以上。個性的な海外旅を扱ったエッセイ3選でした。気になった方は、ぜひ書店や電子書籍でチェックしてみてくださいね。

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