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「私の旦那は、アスペルガー、もしくはサイコパスですよね」とおっしゃる、離婚したい奥さんへ。

竹内成彦心理カウンセラー(公認心理師)

こんにちは。
精神医学と性格心理学に詳しい
心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。

私は、心理臨床家です。
ほぼ毎日、カウンセリングをしています。

私が主に使う心理療法は、来談者中心療法です。
支持的・非指示的療法とも呼ばれています。
クライアントに寄り添い、クライアントの話を、邪魔することなく、ひたすら傾聴します。

もちろん、クライアントから質問されれば、誠実に丁寧にお答えしますが、クライアントの人生を左右しかねない問題については、安易に「ああしなさい」「こうしなさい」と助言することはありません。あくまでも、どうするか決めるのはクライアントであり、カウンセラーはクライアントの頭の中の整理をお手伝いするだけです。

さて、ここからは、私の作り話ですが、
先日、ある女性のクライアントがご来室され、自分のご主人の悪口をずっと言い続けました。そう、犬も食わない夫婦喧嘩の話です。私は、ひたすら傾聴に努めます。「〇〇さんにだって、キレやすいといういけないところがあるのではないですか?」なんてことは、決して言いません。
すると、ご主人の悪口を1時間近く言い続けたそのクライアントは、突然「私の旦那は、アスペルガー(もしくはサイコパス)ですよねぇ!」とおっしゃるのです。私はハッとし、「わかりません。アスペルガー症候群かもしれないですし、あるいはそうじゃないかもしれません」と答えます。
さらに、怪訝そうな顔をしているクライアントに、私は言葉を続けます。「〇〇さんがご主人に不満を抱かれているのは、よくわかりました。けれど、○○さんのいっぽうてきな話を聴いただけでは、ご主人には会ってないわけですし、ここで断定的に『ご主人は、アスペルガー症候群ですよ』とはとても言えません」と静かに答えました。

その女性は、あきらかに不満げな表情を浮かべました。案の定です。
私がここで、「酷いご主人ですね。ご主人は、間違いなくアスペルガー症候群ですよ」と答えていたら、その女性も、溜飲が下がり満足するかと思うのですが、私も専門家としてデタラメなことを言うわけには参りません。

女性は、さらに食い下がります。「竹内先生は、専門家なのでしょう? 私の話から、旦那がアスペルガーかどうかわからないのですか?」と。
私は答えます。「世の中には、アスペルガー症候群の人とアスペルガ症候群じゃない人がいるわけではありません。限りなくアスペルガー症候群だろうと思われるごく一部の人と、限りなくアスペルガー症候群じゃないだろうと思われるごく一部の人がいるだけで、残りのほとんどの人は、その中間、グレーゾーンにいるのです。〇〇さんのご主人は、限りなくアスペルガー症候群だろうと思われる人に近い、グレーゾーンにいる人ではないでしょうか?」と。

女性は、だんだん不機嫌になっていきます。「じゃ、私はどうしたらいいのですか?」 私は答えます。「『どうしたら』というのは、『何をどうしたら?』という意味ですか?」 女性は答えます。「結婚を継続したほうがいいかどうかってことですよ!」 私は答えます。「〇〇さんは、どうしたいのですか?」 女性はキレ気味に答えます。「それがわからないから、訊いているんですよ!」と。

私は、来談者中心療法を使うカウンセラーですから、「結婚を継続したほうがいい」とか、「離婚したほうがいい」とか、1時間も話を聴いてないのに、答えることなど出来やしませんし、実際しません。私の仕事は、ただクライアントの話を丁寧に聴き、クライアントの頭の中の整理を手伝うだけです。

10人カウンセラーがいれば、女性クライアントの〇〇さんの話を聴いたうち、2人は「アスペルガー症候群でしょうね」と言うでしょうし、2人は「アスペルガー症候群じゃないでしょうね」と言うでしょうし、残りの6人は私と同じように「わかりません」と言うでしょう。

「私の旦那は、アスペルガー、もしくはサイコパスですよね」とおっしゃる奥さんへアドバイス申し上げるのですが、「そんなこと訊いてどうするのですか? あなたは、それを聞いてどうしたいのですか? 専門家でもハッキリ診断など下せないのですよ。あなたは、これからも、自分の気に入った診断名を言ってくれる専門家と称する人を、探し続けるつもりですか?」

いい加減でもデタラメもいいので、とにかくズバリ答えを言ってくれる専門家と称する人に相談したいのであれば、とりあえず、来談者中心療法を使うカウンセラーの所には行かないことを、あなたにはおススメしたいと思います。
そう、来談者中心療法を使うカウンセラーは、あなたの心に寄り添いはするものの、「ああしたほうがいい」とか「こうしたほうがいい」とかいう指示はしないものなのです。

あなたが、「この夫とは、とってもやっていけないわ。話し合いをすることさえ無理だもの」と思うのであれば、あなたのことを親身になって考えてくれる人と相談しながら、夫がアスペルガーかサイコパスかどうかに拘らず離婚を視野に入れて冷静になって考えてみればいいかと思うのですが、如何なものでしょうか?

最後に、今はアスペルガー症候群という言葉はなくなりつつあります。これからは、自閉スペクトラム症という言葉に統一されることでしょう。

今日も最後までお読みくださって、どうもありがとうございます。
心から感謝申し上げます。

      この記事を書いた人は、心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。

心理カウンセラー(公認心理師)

1960年、愛知県名古屋市で生まれ育つ。1997年06月、地元愛知でプロのカウンセラーとして独立開業を果たす。カウンセリングルーム「心の相談室with」名古屋 の室長。臨床歴25年、臨床数15,000件を超える。講演・研修回数は800回、聴講者は10万人を超える。【上手に「自分の気持ち」を出す方法】など、電子書籍を含め、20数冊の本を出版している。カウンセリング講座などを開催し、カウンセラーを育てることにも精力を尽くしている。

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