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【ラグビーW杯2023開幕戦フランス対ニュージーランド】なぜオールブラックスは敗れたのか!?

斉藤祐也元ラグビー日本代表/ラグビー解説者
ラグビーワールドカップ2023フランス大会 開幕戦フランス対ニュージーランド(写真:ロイター/アフロ)

ラグビーワールドカップ2023フランス大会 開幕戦

 開幕戦フランス対ニュージーランドは27-13で開催国フランスが勝利した。ニュージーランドはワールドカップ予選プール初の敗戦となり、大会の波乱と前回大会を超える感動を予感させる。

 試合開始前は恒例のニュージーランドのハカで士気を高めた。フランス相手には「カ・マテ」でなく「カパ・オ・パンゴ」を選択。絶対に負けられない戦い、因縁の相手に対しては「カパ・オ・パンゴ」を披露すると言われているが、当国は明らかにしていない。

ハカとは、本来ニュージーランドのマオリ族の戦士が、戦いの前に手を叩き足を踏み鳴らして自らの力を誇示し、相手を煽る時にする舞踊である。

カ・マテ(Ka mate)は、1905年イギリス遠征の際にオールブラックスが戦いの踊りの要素を取り入れたものを初めて踊り、以後代表チームに受け継がれている。カパ・オ・パンゴ(Kapa o Pango)は、2005年8月に開催されたトライネイションズの「南アフリカ戦」で披露された。

ニュージーランドのハカ「カパ・オ・パンゴ」
ニュージーランドのハカ「カパ・オ・パンゴ」写真:ロイター/アフロ

 開始早々、ニュージーランドのトライで先制し口火を切ったが、フランスは3連続PG(ペナルティーゴール)で逆転し前半を9-8で折り返す。

 後半開始3分、ニュージーランドは前半同様にトライを見事に決めるが、74分フランスは落ち着いたゲームコントロールによって2PGとトライ1本を得て、9点差でリード。76分、勝利を確信したかのように主将SHデュポンと17得点を叩き出したFBラモスを交代させた。

フランスの勝因とは

 フランスの勝因は、少数のペナルティ(フランス4/ニュージーランド12)とPGを選択したことである。ペナルティ数の差が5本のPGに反映する形となったが、勝負の綾は4点差を追う後半14分にあった。ペナルティを得たフランスは、PGで点差を詰めるのではなく、ラインアウトからトライを狙う選択が功を奏したのだ。

フランス代表FBラモスは1コンバージョンゴール5ペナルティゴールを成功させた
フランス代表FBラモスは1コンバージョンゴール5ペナルティゴールを成功させた写真:ロイター/アフロ

 ラグビーはトライ5点、トライ後のコンバージョンゴール2点、ペナルティゴール3点を時間と点差の配分によってプレーの選択をする。

 トライ数1に対してPG数2で逆転する構図がゲームを面白くする。

 フランスの得意とするトライ傾向は、キックカウンターやターンオーバーなどによるディフェンスラインが整っていない状況で力を発揮するが、開幕戦においてはキックを巧みに使い、ニュージーランド陣内で戦う時間を長くした。

 見事なゲームメイクであった。

オールブラックスが受けたプレッシャー

 ニュージーランドは、ラインアウトから大きくゲインするプレーを成功させ、周到な準備が見られたが、自ら犯したペナルティによってゲームをコントロールできずに勝利を手放した。微妙なプレーやレフリーの判定に大観衆のブーイングの嵐に合うことは予想できたであろうが、ワールドカップ開催国と戦う難しさを物語っている。

 ワールドカップ優勝国は、欧州勢唯一2003年オーストラリア大会のイングランドである(ニュージーランド3回/南アフリカ3回/オーストラリア2回/イングランド1回)。

 フランスは2度目の開催国(前回2007年)ということもあり、若手の育成と強化が捗り、優勝するための準備が整っている。緊張感高まる開幕戦で勝利し、優勝への道を一歩踏み出した。

元ラグビー日本代表/ラグビー解説者

高校1年からラグビーを始め、若干2年で高校日本代表に選出される。東京高校では、攻撃の要である NO.8(ナンバーエイト)として活躍し、全国高等学校ラグビーフットボール大会(花園)へ初出場の立役者となる。明治大学時に全国大学ラグビー選手権に出場し優勝。4年時には主将を務める。2000年にサントリーに入社、一年目のシーズンからレギュラーを獲得し、「日本ラグビーフットボール選手権大会」連覇などタイトル獲得に貢献。2002年フランス1部リーグ・ USコロミエに海外移籍。フォワードとして日本人初のプロ契約選手となった。帰国後、プロ契約選手として、神戸製鋼、豊田自動織機などで活躍した。

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