なぜバイエルンはトゥヘルを呼んだのか?ナーゲルスマンからの変化とキミッヒの躍動。
初陣で勝利を飾るというのは、重要だ。
バイエルン・ミュンヘンはブンデスリーガ第26節でボルシア・ドルトムントと対戦した。トーマス・トゥヘル監督就任後、初めての試合で4−2と勝利を収めている。
バイエルンは先月、監督交代を行ったばかりだ。ユリアン・ナーゲルスマン監督の解任が決まり、後任にトゥヘル監督が招聘された。
「ブンデスリーガに爆弾」(スペイン『マルカ』)と欧州メディアで伝えられたように、ナーゲルスマンの解任は青天の霹靂だった。
■ナーゲルスマンの成績
ナーゲルスマン監督は2021年夏にバイエルンの指揮官に就任した。バイエルンは、彼をライプツィヒから引っ張ってくるために、違約金の2500万ユーロ(約30億円)を支払っている。監督としては、史上最高額の値段だ。
昨季、ナーゲルスマン監督の下、バイエルンはブンデスリーガを制した。今季、チャンピオンズリーグでは、8試合で8勝と全勝記録を打ち立てた。ラウンド16でパリ・サンジェルマンを撃破して、準々決勝でマンチェスター・シティと対戦するはずだった。
「バイエルンのスポーツディレクターとして、最も難しい決断だった。私はナーゲルスマンとオープンな関係にあった。そこには信頼があり、友情があった。この別れは残念だ」
「だがスポーツ的側面の成長を考慮して、ナーゲルスマンとの別れを決断した。とりわけ、今年の1月以降、また昨シーズンの後半戦の分析を行い、このような決断に至った。ナーゲルスマンのこれまでの貢献に感謝している。彼の今後の幸運を祈っている」
これはハサン・サリハミジッチSD(スポーツディレクター)の言葉だ。
バイエルンはナーゲルスマン監督と2026年夏まで契約を結んでいた。残りの契約年数分の年俸を支払うことになると言われており、その額は2700万ユーロ(約32億円)に上る。
資金的な意味でも、リスクがあった。それでも、バイエルンは監督交代に踏み切った。
■トゥヘルの就任と変化
トゥヘル監督は初陣からチームに変化を加えてきた。ダブルボランチを諦め、【4−1−2−3】のワンアンカーシステムを採用した。
このシステムで躍動したのがジュシュア・キミッヒだ。アンカーで起用されたキミッヒは、パス本数(69本)でチームトップの数字を記録して、パス成功率においては91.3%を誇った。
また、ウィングの起用でも、「トゥヘル色」が見て取れた。左ウィングにキングスレイ・コマン、右ウィングにレロイ・ザネを配置。逆足のアタッカーを両翼に据えた。バイエルンの黄金期にはアリエン・ロッベンとフランク・リベリが両サイドで活躍した。それを彷彿とさせる戦い方だった。
とはいえ、課題は残されている。
「もっと試合をコントロールしなければいけない。ポゼッションの時間を増やす必要がある」とドルトムント戦後に語ったのはキミッヒだ。
「システムが少し変わった。トゥヘルは僕たちに合うシステムを見つけようとしてくれている。バイエルンの選手が、それぞれストロングポイントを出せるようにね」
ドルトムントに勝利して、バイエルンはブンデスリーガで単独首位に立った。
トゥヘル監督は稀代の戦術家として知られる。多くの時間が与えられているわけではない。だが、指揮官とチームにはタイトル獲得が求められている。勝利のDNA、それがバイエルンに植え付けられているからだ。