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話題にしたくない原発問題。でも、再稼働だけはやめてほしい

大宮冬洋フリーライター

●今朝の100円ニュース:「原発ありき 命は二の次」(朝日新聞)

友人知人と話しているときに、楽しくなる議題と微妙な空気になる議題がある。前者は、「男と女の間に友情はあるか?」などの人間関係ネタが多くて、差別表現に気をつければ率直に言葉を交わし合っても誰も傷つかず、鋭い反論をされても笑えてくる。

後者の代表格は政治や宗教だろう。言い負かされたり「折伏」されそうになったりすると、自分の価値観や家族を否定された気がしてしまう。それは相手も同じだろう。だから、よほど親しい相手でお互いを深く知っている場合ではないと政治・宗教の話は避けるようにしている。

「日本人は政治と宗教をタブーにしすぎる。フランス人はもっと自由に議論する」などという言説をたまに目にするけれど本当なのだろうか。階層社会と言われるフランスの場合、日本のように多種多様な人とおしゃべりをする機会は少なく、同じような教育環境で育って同じような信条を持つ人たちが集まって、「移民排斥は国の恥だ」などとワイン片手に語り合っている気がする。

この3年間で最も避けたい話題は原発問題だった。反原発デモに毎回参加するような友人もいれば、「日本経済のためには原発は必要だ」と公言する仕事仲間もいる。僕はどちらと一緒に飲んでいても居心地の悪さを感じてしまう。この大問題に関して、ちゃんとした知識と意見を持っていない自分が恥ずかしくなるし、楽しい飲みの場で微妙な話題を一方的にし始める相手にもちょっと腹が立つ。

普段は政治や宗教の話をしない人であっても、原発問題だけは別であることが多い。小さな子どもがいたり、大きな組織で責任ある立場で働いていたりすると、原発という巨大なエネルギーは、「遠い政治問題」ではなくて「身近な緊急問題」なのだろう。情報の量と意思の強固さも半端ではなく、原発から遠くて依存度も低い愛知県に住んでいて子どももいないフリーライターの僕とは比較にならない。

だから、原発のことは話題にしたくない。この連載コラムでも2回ほど話題にしたところ、原発の賛否両陣営から「勉強不足だ!」と強烈なお叱りを受けた。でも、どんなに不勉強な僕でも1つだけ確かなことがある。福島原発のような事故が起きると、その周辺は何十年(何百年?)にも渡って汚染されてしまうことだ。次世代だけでなく、人間以外の自然に対してもやってはいけないことだと思う。愛国心の薄い僕でも、「国土を決定的に汚す」ことだけは許せない。

原発を再稼働しないことで日本がどのような経済的ダメージを受けるのは知らない。今朝の朝日新聞によれば、大間原発を推進する立場の青森県大間町の人たちは「原発ができないと大間は死んでしまう」と危機意識を持っているという。破たん寸前の地方自治体を原発以外で救おうと思ったら、日本政府の財政はパンクしてしまうのかもしれない。

それでも再び「想定外」の事故が起きて放射能汚染が広がるよりはマシだ。原発の建設や再稼働だけはやめてほしい。ただし、原発を支え支えられて来た人たち(東電社員や大間町民だけでない)の誇りと生活を損なわないように、ゆっくりと時間をかけて廃止をしていかねばならない。「悪者」探しをやめて、原発卒業後の日本人の生き方をみんなで模索していく時期だと思う。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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