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私たちと社会や政府・・・政治・政策リテラシー講座8

鈴木崇弘政策研究者、PHP総研特任フェロー

私たちは、いわゆる「社会」の中で生活しています。その「社会」は、一般的には「人間の集団としての営みや組織的な営み」であり、人間の共同生活の総称のことです(注)。

ではなぜ、そのような「社会」が必要なのでしょうか。

それは、原始的な生活をしているのであれば、生活し生きていくための様々なことを考え、活動していかなければなりませんが、自分や自分の家族のことだけを考えていれば十分ですので、個々人で対応できますので、自分たちだけで何とか生活をしていくことは可能です。

しかし、より豊かで恵まれた、より人間的な生活をするには、個々人が生活に関わるすべてのことをするのではなく、人々が「社会」を形成した方がいいのです。そこにおいて、お互いに助け合いあるいは分業し合って、自分のできることをした方が社会全体としての効率や生産性が上がり、全体としてより豊かになれるのです。

そのことは、私たちが自分のまわりをみてみればわかります。自分のまわりにあるモノのほとんどは自分がつくったわけではなく、別の誰かがつくったもので、そのおかげで生活が豊かになっているのです。つまり「社会」を形成することで、私たちはより恵まれた生活ができるのです。

また、「社会」を形成することで、個人のスキルや情報が、個人的なものであることを超えて、また時代や世代を超えて、他の人々や他の世代との共有物になるのです。このことは、テクノロジーの発展などの手助けもあり、場合によっては、限定された地域や国を超えて、世界に繋がれることも意味しています。これらのことも、「社会」の役割を示しています。

以上のことからもわかるように、「社会」をつくることで、私たち人間は、より豊かな生活を送ることが可能になるのです。

しかしながら、このような「社会」が構築されてくると、個々人がそのすべてをみて、すべてを判断することもなかなか難しくなります。そこで、個々の個人に代わって「社会」全体を調整し、運営していくような存在なり仕組みが必要になります。それが、「政府」です。その政府には、議会や行政などの仕組みが含まれています。

そして、その仕組みができてくると、それに関わり、運営していく人材が必要になります。それが,議員や官僚などということになります。

またそれらの人々を雇い、それらの仕組みを運営していくには、たくさんのお金が必要になりますが、そのお金のもとになるのが、現代の「政府」における税金となるわけです。つまり、税金は、自分が生活する国や地域政府(地方公共団体)の活動を行わせるために私たちが負担している費用なのです。別のいい方をすると、私たちが、自分の代わりに政府に「社会」を運営してもらうための費用であり、「社会」に生活していくための参加費用であるといえます。

このように考えてくると、私たち一人ひとりと「社会」や「政府」および「税金」との関係が改めてわかってくるのではないかと思います。いかがでしょうか。

(注)kotobankの「社会」の解説(http://kotobank.jp/word/%E7%A4%BE%E4%BC%9A)参

照。

政策研究者、PHP総研特任フェロー

東京大学法学部卒。マラヤ大学、米国EWC奨学生として同センター・ハワイ大学大学院等留学。日本財団等を経て東京財団設立参画し同研究事業部長、大阪大学特任教授・阪大FRC副機構長、自民党系「シンクタンク2005・日本」設立参画し同理事・事務局長、米アーバン・インスティテュート兼任研究員、中央大学客員教授、国会事故調情報統括、厚生労働省総合政策参与、城西国際大学大学院研究科長・教授、沖縄科学技術大学院大学(OIST)客員研究員等を経て現職。経済安全保障経営センター研究主幹等兼任。大阪駅北地区国際コンセプトコンペ優秀賞受賞。著書やメディア出演多数。最新著は『沖縄科学技術大学院大学は東大を超えたのか』

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