動物の夢が教えてくれる、あなたの夢の意外な役割 - 記憶力アップの鍵は睡眠にあり?
ぐっすり眠っているはずの動物が口をチャムチャム動かしたり、ヒゲをひくひくさせているところを見たことはありませんか?実は犬や猫を含むいろんな動物が人間と同じように夢を見ると考えられています。
しかしそもそも夢とは何のためにあるのでしょうか?動物の夢に関する研究を見てみると、夢の役割が見えてきました。
この記事では動物の夢の研究をサイエンスライターである筆者がわかりやすく解説し、人間も知っておきたい夢の役割や睡眠を記憶に役立てるヒントをご紹介します。
動物の夢の研究でわかった夢の役割
私たちが眠っている間、脳は「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」を繰り返しています。レム睡眠のレム(REM)とは急速眼球運動(Rapid Eye Movement)の略称です。レム睡眠の段階では、体は眠っているものの、目や脳は活発に動いていて、夢を見ることが多いとされています。
このレム睡眠は、人間だけでなく、犬、猫、スズメ、インコなどほとんどの哺乳類や鳥類にもある現象です。動物たちもレム睡眠のときには目が急速に動いており、脳波も覚醒時のものに似通っていることから、夢を見ていると考えられています。
動物たちは一体どのような夢を見ているのでしょうか?Journal of Neuroscienceに掲載された研究によると、起きているときに迷路を走る動きをさせられていたマウスは眠ってからも迷路を走っているときと同じ脳波を示したそうです。つまり、マウスは夢の中でも、迷路を走っていると考えられます。
同論文の著者は、こうした夢の中での経験の繰り返しが、学習を強化し、記憶を定着させるのに役立つという可能性を示しています。夢を見ることで、昼間に学んだことを脳がしっかりと整理し、必要な情報を選り分けているのかもしれません。
夢は記憶力アップと問題解決の強い味方
私たちが何かを学んだり経験したりすると、脳はその情報を整理して記憶として定着させようとします。夢を見ている間に起きているときに行っていたことを脳内で何度も反復することで、記憶が定着するのです。
イギリスのラフバラー大学数学的認知センターが行った研究では、複雑な掛け算の問題を解いたあとに眠りについたグループと、ずっと起きていたグループで、どちらが翌朝の計算精度が高かったか調査されました。その結果、計算問題を解いたあと眠りについたグループの方が、翌朝のテストの点数が高くなったといいます。
参考:Positive impact of sleep on recall of multiplication facts
また、スポーツのパフォーマンス向上にも、睡眠中の学習が効果的だと言われています。運動後の睡眠時間が長いほど、脳が動作のイメージを繰り返し、記憶として定着させやすくなるのだそうです。
夢の力は、記憶力アップだけにとどまりません。睡眠中は、いつも私たちを合理的に制御している前頭前野の活動が抑えられるため、自由な発想が生まれやすくなります。さらに夢を見ている間は不安を司るノルアドレナリンの働きも抑制されるため、余計な心配ごとに邪魔されることもありません。夢の中では、脳のリソースをポジティブな問題解決に集中させることができ、日中には思いつかなかった斬新なアイデアがひらめくこともあるのです。
動物も人間もいっぱい夢を見て育つ!
野生の動物たちは、人間のように親や年長者から何かを教わる機会がありません。それでも彼らが狩りや巣作りなど、生きていくために必要なスキルを見事に身につけています。これは動物たちが、日中に見たことや経験したことを夢の中で何度も繰り返し、自分の動きの精度を高めているからかもしれません。
私たち人間も、夢の力を最大限に活用することで、効率的にパフォーマンスを上げることができます。寝る前に覚えたい内容を復習したり、解決したい問題について考えてみたりすると、特に効果的でしょう。夢日記をつけるのも良い習慣かもしれません。夢の内容を思い出して書き留めておくことで、脳内で反復される回数が増え、記憶がさらに強固になる可能性があります。
何よりも大切なのは、しっかりと睡眠をとることです。ぐっすり眠らないと、せっかくの夢の力も発揮されません。規則正しい生活習慣を身につけ、質の良い睡眠を確保しましょう。