Yahoo!ニュース

さっそく記録更新で、「7月4日」がもっとも暑い日に

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
地球がもっとも高温だった2023年7月4日の衛星画像 (出典: NASA)

「7月3日が地球にとって観測史上もっとも暑い日だった」とニュースが流れた翌日、早速、記録が塗り替えられてしまいました。

「7月4日」はさらに暑くなって、この日が統計上もっとも暑い日となってしまったのです。

これはアメリカの環境予測センターが、世界の陸海両方のデータから、世界の平均温度を求めたものです。

3日(月)の平均は17.01度でしたが、4日(火)は17.18度となって、あっさりと記録を更新してしまいました。これまでの記録は、2016年8月14日(16.92度)でした。

記録を取り始めたのは1979年ですが、専門家の中には、今年7月4日が過去125,000年のうちでもっとも高温な日のひとつであったかもしれないと考えている人たちもいるようです。

ちなみに同日、アルジェリアのアドラールは49.6度、イランのアフヴァーズは48.4度、アメリカのフェニックスでは46.7度まで気温が上がっていました。

○+○+○=記録的高温

7月4日の海水温の偏差の図。太平洋東部が平年よりも高温=エルニーニョ現象。 (NOAA出典の図に筆者加筆)
7月4日の海水温の偏差の図。太平洋東部が平年よりも高温=エルニーニョ現象。 (NOAA出典の図に筆者加筆)

記録的な高温が生まれるときとは、どんなときでしょう。

オックスフォード大学のM.アレン教授は、ワシントンポストの取材でこう答えています。「それは、温暖化、エルニーニョ、そして一年の周期がすべて重なったときです。そしてそれは、次の数か月です。」

つまり、まだまだ記録の更新が考えられるということでしょう。

使いたくない一手

太陽光を遮る方法 (出典: NOAA / Eastham, S., S. Doherty, D. Keith, J. H. Richter, and L. Xia, etc.)
太陽光を遮る方法 (出典: NOAA / Eastham, S., S. Doherty, D. Keith, J. H. Richter, and L. Xia, etc.)

右肩上がりの温度上昇を目の前に、私たちはどう取り組んでいけばいいのでしょう。

なるべく電気を消しましょう、電気自動車に乗りましょう、そう呼び掛けてソフトなマンパワーで対処を促す方法もあるでしょう。しかし今アメリカ政府は、気候操作という急進的な方法への関心をより高めています

というのも、ホワイトハウスが30日(金)に発表した報告書(PDF)には、太陽光の人工的な操作に対する、現政権の開放的な姿勢が書かれてあるのです。

具体的に、上空に微粒子をばら撒いて光を遮ったり、雲を明るく白くさせて日光を反射させたりする方法などが紹介されています。

気候操作を行う予定がある、と言ったものでは決してありませんが、こうした方法に頼らざるを得ないほど大変な将来が、残念ながらも近づいているというのが現実のようです。

※追記(7/7)※

7月5日の世界の平均気温も17.18度まで上がって、前日7月4日と並び、観測史上1位タイの高温となりました。記録の更新は止まりそうにありません。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

森さやかの最近の記事