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パリSGも韓国のアジア大会金メダルを願っている?イ・ガンインに訪れた兵役免除のチャンス

金明昱スポーツライター
アジア大会で金メダルを狙うPSG所属の韓国代表MFイ・ガンイン(写真:ロイター/アフロ)

 23日から中国・杭州で開催されるアジア大会だが、韓国で必ず話題になるのが“兵役”の話題だ。

 韓国の成年男子に義務付けられている兵役だが、その期間は約2年。五輪で銅メダル以上、アジア大会で金メダルを獲得すれば事実上の兵役免除(正確には3週間の基礎軍事訓練を受けたあと活動に戻る)となるため、その対象となる選手たちは並々ならぬ覚悟で競技に挑む。

 特にサッカーに関しては、軍入隊を避けなければ、もっとも脂の乗った時期にもかかわらず、選手生命を絶たれる可能性が高い。そのため、世界各国が参加するハイレベルな五輪よりも、アジア大会での金メダル獲得に照準を定めている。

 アジア大会開幕前にサッカー競技はすでにスタートしているが、E組のU-24韓国代表は19日の初戦でクウェートに9-0で大勝。元Jリーガーで韓国代表FWのファン・ソンホン監督にとっては幸先のいいスタートとなった。

 気になるのは22人のメンバーだが、3人のオーバーエイジをフル活用し、パリ・サンジェルマン(PSG)のMFイ・ガンインも招集。ただ、アジア大会は国際サッカー連盟が定めるAマッチデーではなく、所属クラブが応じる義務がないため、PSGがイ・ガンインをアジア大会に参加させるのかどうかが焦点となっていた。

 実際、イ・ガンインは初戦が始まったあとも合流できていなかったのだが、19日の欧州チャンピオンズリーグのドルトムント戦に出場したあとにチームに合流することが正式に決定。

 これにはイ・ガンインだけでなく、ファン・ソンホン監督もホッと胸をなでおろしていることだろう。というのも韓国はアジア大会のサッカー競技で3連覇を目指しており、かつ、イ・ガンインら若い選手たちの兵役免除によって、その後の代表強化につながる側面が大きいからだ。

PSGもイ・ガンインのアジア大会参加を許可

 スポーツ・芸能専門サイト「スポータルコリア」は「イ・ガンインは今回のアジア大会で韓国を牽引しなければならない。今大会の結果でキャリアが変わる可能性があるからだ。アジア大会出場で、国の名誉を輝かせることも重要だが、兵役免除もイ・ガンインには無視できないものだ。PSGがアジア大会出場を許したのもそのためだ」と伝えている。

 たしかにPSGにとっては、本音では獲得したばかりのイ・ガンインをアジア大会に送り込みたくはなかったかもしれない。ただ、これから数年はチームへの貢献が想定される選手でもあるため、アジア大会で金メダルを獲得してもらうほうが、PSGにとっては“有益”と判断したのだろう。

 ただ、それも必ず金メダルを獲得できるとは言い難く、日本をはじめとしたライバルが立ちはだかる。PSGにとっては賭けのようでもあるが、韓国代表選手たちにとっては、その後の人生を大きく左右する重要な大会でもある。

ソン・フンミンやキム・ミンジェらも兵役免除

 それは現在、欧州で活躍する韓国代表の選手の顔ぶれを見ると、兵役免除がどれだけ大切なことなのかがよく分かる。

 過去、2018年ジャカルタ・アジア大会では、オーバーエイジ枠で出場したソン・フンミン(トッテナム)やFWファン・ウィジョ(ノリッジ・シティ)の他、DFキム・ミンジェ(バイエルン・ミュンヘン)、FWファン・ヒチャン(ウォルバーハンプトン)らを擁する韓国代表が金メダルを獲得。彼らもまた兵役免除の恩恵を受けた結果、欧州で伸び伸びとプレーできているわけだ。

 特にソン・フンミンは22-23シーズンのプレミアリーグで得点王となり、キム・ミンジェもセリエAのナポリで優勝し、今季は名門バイエルンへの移籍へとつながった。兵役免除の恩恵がなければ、彼らの名は早い時期に消え去っていたかもしれない。

 そう考えた場合、イ・ガンインもアジア大会の金メダルで兵役免除を勝ち取っておきたいところ。それでも達成できなかった場合は、来年のパリ五輪で銅メダル以上を狙うことになるだろう。

 イ・ガンインは22歳とまだ若いが、4年後のアジア大会まで待ってはいられない。今は金メダルしか頭の中にないはずだ。優勝に向けて本気の韓国が、どのようなサッカーを見せてくれるのか、今から楽しみだ。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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