【パリ】街角もオリンピック。アスリートのおしゃれなユニフォームが買えます。
北京オリンピックたけなわ、ですね。
開会式の様子を見ていて、フランス選手団の入場がなんだか垢抜けて見えた、というのはきっと私だけではないでしょう。
パリ在住の筆者としては、多少の贔屓目があることは確かです。とはいえ、東京五輪閉会式の引き継ぎ映像といい、ここ一番のプレゼンテーションで頭一つ抜けたセンスを見せるのがやはりフランスの強みだろうと思います。
今回の北京もコロナ禍での開会式ゆえ、どの国も少ない数の選手の入場でしたが、フランスチームはその少なさを逆に生かして、Vの字を作って登場したのが印象的でした。
Vといえば、victory(勝利)のV。フランス語だとvictoireですが、やはり綴りの頭文字はVです。
この形に隊列を組んだことで、(少な…。さみしいー)となりがちな印象を大逆転。アメリカや中国選手団のような数にモノをいわせる登場とは対照的な存在感は、そのままお国柄の象徴のように思えます。
復興した老舗ブランドがユニフォームを製作
Vの字の隊列が映えたのは、ユニフォームデザインとの相乗効果もあるでしょう。
今回のユニフォームは、フランスのスポーツウエアブランド「Le Coq Sportif(ル・コック・スポーティフ)」によるもの。国旗の配色を全身で大胆にまとうようなデザインになっています。
「Le Coq Sportif」の創業は1882年といいますから老舗と言えるブランド。パリから東へ車でも列車でも2時間弱、ロミリー・シュール・セーヌという町で誕生しています。
すぐ近くの県庁所在地トロワもメリヤス産業で栄えた歴史がありますが、「Le Coq Sportif」の営みも代表的な地場産業の一つでした。
1912年から72年にかけて、このブランドはフランス代表チームのユニフォームをはじめ、世界各国のスポーツチームのウエアも手がけていて、アルゼンチンがマラドーナの活躍でサッカー世界一になった時のユニフォームもこのブランドのものだったという歴史があります。
そんな老舗ブランドですが、一時期は衰退してしまい、発祥の地にある工場の一部も廃墟のようになっていたようです。ところが、2000年代に入ってから徐々に復興が進み、今回のオリンピックで再び選手団のユニフォームを手掛けるところまで来た、というわけです。
フランス代表ユニフォームの契約は2024年のパリ五輪まで継続。そのため、ロミリー・シュール・セーヌの生産拠点では、大規模な施設拡張が進められていて、近い将来の需要に万全の体制で臨むことになっています。
デザイン先進国フランス
さて、今回のユニフォーム製作にあたっては、まずアスリートたちの声を集めるところからスタート。「エレガントで、フランス代表として誇らしく心地よいものを」とプレスリリースにありますが、まず「エレガント」という言葉が最初にくるあたり、フランスならではです。
具体的にはフランス国旗のトリコロール(3色)を大胆に配していますが、高みを目指すように斜めにデザイン。しかも左右対称ではなく、ほんの少し中心をずらしているあたりがしゃれています。
デザインテーマを言葉で表現すると「Les Rayons de la Victoire(勝利の光線)」。そう聞くと、Vの隊列はこの伏線があってのことと、納得がゆきます。
また、Coq(雄鶏)はフランスを象徴するモチーフで、このブランドのロゴマークにもなっています。雄鶏はたいてい横から見た形が使われるのですが、今回はそこにもちょっと趣向が凝らされています。
オリンピックの聖火のように見えるロゴ。これが実は雄鶏の頭を正面から見たところで、トサカと目が青、そしてくちばしが赤でデザインされているのです。
そしてこの記事のタイトルにもあるとおり。これらのユニフォームは選手団だけのものではなく、一般に販売もされています。
私はこれを着て歩く勇気がありませんが、いつもの街角にこのユニフォームがあると、コロナの禍ためにさらに遠いところで行われていると感じるスポーツの祭典がすこし身近なものになるようで、気持ちが少し上がるのは確か。そして、遠い先のことと思っていたパリ五輪も、もうすぐそこまで来ていることを実感します。