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【体が硬い方が足が速い!?】ランニングに適しているのは、体の柔らかさよりも、体の硬さの反発力!

たくや/ランナー医師、ランナー、ランニングコーチ

一般的に、体が柔らかい方が運動に向いていて、怪我をしにくいと思われがちです。ですが自分は非常に体が硬いです。前屈では、反動をつけても地面に手がつきません。そして周囲のランナーを思い出しても、体が硬いのに速いランナーはたくさんいます。実際に体の柔軟性と、ランニングのパフォーマンスには関係があるのでしょうか。

前屈能力が高いほど、ランニングの効率は悪い

前屈能力は大腿部の裏側の筋肉、つまりはハムストリングスの柔軟性をあらわしています。前屈能力とランニング能力の関係については、少人数のものですがいくつか文献があって(1)(2)、前屈能力が低いほど効率よくランニングができるとされています。というのも前屈能力が低いと、ハムストリングスが伸ばされた時に反発力が生じるからとされています。

ハムストリングスの硬い人の走り方のイメージ
ハムストリングスの硬い人の走り方のイメージ

柔らかいばかりのシューズより、適度に硬くて反発力のあるカーボンプレート入りのシューズの方がランニング能力が上がるような理由です。

足首の関節が硬いほど、パフォーマンスがあがる

同様なことは、足首の関節にも当てはまります。過去の研究では、足首の背屈の硬さが硬いほどランニングの効率が高く、5000m走のパフォーマンスが高かったとあります。ハムストリングスと同様に、足首の関節も硬さをバネのように使えるとランニング効率が上がるのです。

足首の関節の硬い人の走り方のイメージ
足首の関節の硬い人の走り方のイメージ

おそらく硬い筋肉や関節の場所、そして程度にもよりますが、体が硬いのはマイナスではなくプラスに働く可能性が高いのです。体が硬いことにより筋肉や関節に負荷がかかり、その反発力が生じて効率よく走ることができるのです。

実際にフルマラソンで調べると、男性では筋肉の柔体性より反発性(バネ)、女性では体が柔らかいと遅くなる?

ここまでは、体の硬さとランニングの走る効率について書きました。ですが実際にパフォーマンス、つまりはタイムには影響がでるのでしょうか。
文献はギリシャからのもので、男性の市民マラソンランナーのフルマラソンのパフォーマンスについて調べたものです。前屈能力、ジャンプ能力、筋力、年齢、体脂肪率やBMIの何がパフォーマンスに影響するかを130人のランナーで調べています。そして解析の結果、年齢や体脂肪率、BMIの他、ジャンプ能力が影響するとの結果になりました。前屈の能力とパフォーマンスについては書いておりませんが、おそらくここでは有意な結果が得られなかったのだと思います。
ですが女性について調べた同施設の同様の研究では、柔軟さとパフォーマンスに関連が見られています。前記の研究と同じく、女性市民マラソンランナー33人について、フルマラソンのパフォーマンスは前屈能力、ジャンプ能力、筋力、年齢、体脂肪率やBMIの何が影響するかを調べたものです。この研究で差異が認められたのは柔軟性だけでした。タイムが4時間45分より遅いグループは、速い(4時間15分以内)や中間(4時間15-45分)よりも前屈能力が高かったようです。

おわりに

自分はランニング歴が40年弱になります。昔は走る前に、しっかり柔軟運動をしていました。そして現在、大会会場でもスタート前に柔軟運動をしている姿を目にします。ですがパフォーマンスに目を向けた場合、柔軟運動は必ずとも必要がない可能性もあります。体が極端に硬い場合を除いて、走る前の柔軟運動は必要ないかもしれません。
なので自分は体が硬いのですが、マラソンの前には柔軟運動はせず、動的ストレッチを軽くする程度にしています。

医師、ランナー、ランニングコーチ

41歳まで某大学病院の消化器肝臓内科で勤務、現在は都内の一般病院で内科医をしています。また、中学でランニングを始めて走歴は約40年、その経験を活かしてランニングステーションでコーチもしています。総合内科専門医・消化器病専門医・肝臓専門医・抗加齢医学会専門医、JMJA公認ランニングドクター他、資格は多数。フルマラソンの完走は67回でベストタイムは2時間50分31秒(2019湘南)。ランナーからよく聞かれることやランナーに伝えたい事を、科学的なエビデンスと経験をもとに記事を書いています。

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