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攻めるチームでリーチ マイケルが動く。「まるで会長」の問いには何と?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
写真は28日のリーグワンのプレスカンファレンス(筆者撮影)

 長らくラグビー日本代表の主将を務めたリーチ マイケルは、忙しいのが性に合っているのだろうか。

 9月上旬から約3か月にわたって代表活動に参加し、ニュージーランド代表戦、イングランド代表戦、フランス代表戦といった大一番に続けて先発した。

 さらに帰国して間もなかったはずの11月26日には、所属する東芝ブレイブルーパス東京の練習試合を支援。肉体的な疲労があってもおかしくなさそうななか、本拠地グラウンド脇のグッズ売り場へ立つ。

 ブースの柱にはこうある。

「5000円以上お買い上げの方に選手がサインします」

 選手から出たという着想のもと、リーチは他の代表組と物品購入者へのサイン対応、写真撮影で笑顔を作ったわけだ。

 その様子をカメラに収めていた記者を見つけると、手を振って冗談の口調で言う。

「…○○さん(記者の名前)、5000円!」

 クラブは昨季、母体企業から独立。事業化をしていた。今年からは広告代理店社員、高校教師を歴任した星野明宏プロデューサーを招き、多彩な仕掛けでファンへのエンゲージメントを増やそうとしている。

 29日には、都内で定例会見を実施。ここにはリーチも参加し、代表活動の振り返りのほか、部内でおこなうアジア振興のプロジェクトについて話した。

 その名も「アジアラグビーインターナショナルオンラインサミット」。12月7日に日本、韓国、タイ、ブルネイ、マレーシアの高校生やコーチとリーチが繋がり、英語での自己紹介、「アジアのラグビーを一つに・アジアラグビーを盛り上げるためのアイディア(原文ママ)」といったテーマでの討論などをおこなう。

 15歳で来日したリーチは、かねてアジア振興に積極的だった。

 母校の札幌山の手高校にモンゴル人のダバジャブ・ノロブサマブーを迎えたのは、ワールドカップ日本大会翌年の2020年のこと。人生最大級の大一番へ挑むのと前後し、受け入れの準備をしていたのだ。

 旧トップリーグ時代にあった「アジア枠」という特殊な外国人枠を、現リーグワンにも導入したいと考える。日本をアジアスターの集合地帯とし、プレゼンスを高めたい。

 会見および直後の囲み取材では、将来への展望も口にした。つくづく画期的に聞こえた。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

「今回、アジアプロジェクトの第1歩として、オンラインサミットを企画。僕個人の目的はお互いの環境を知ってもらうことです。僕が最初、日本代表に入った時は、アジア5か国対抗に参加していました。韓国、カザフスタン、タイランドなどの各国の様々な環境を見てきた。

 ただ、いまは日本代表が強くなって、これからそういう大会には参加しないんじゃないかと思います。そこで、日本にいる高校生とアジアの高校生を繋いで、お互いのことを知ってもらうのが大事だと思い、企画しました。継続的にやっていきたいです」

——ブルネイの参加者がいるのは珍しい。

「セブンズ(7人制ラグビー)が結構、盛んです。将来的には長野・菅平でやっているセブンズ(全国高校7人制大会のことか)にアジアから何チームかを呼べたらいいんじゃないかなと。日本人のアジア交流ができる。7人制なら12人程度で来られるから、費用も(15人制の遠征ほどは)そんなにかからない。どんどんやっていきたいです」

——アジア振興を通し、どんな未来を描いていますか。

「アジアの選手は日本でのプレーを夢見ています。昔はアジア枠があって、マレーシア代表のディネスバラン・クリシュナン選手(ヤマハ、日野でプレー)、韓国、タイ、フィリピンの選手もいた。日本でプレーできる環境を作るのがベストなイメージです。

 常にラグビーをやっている国では日本が一番、進んでいる。コーチ陣も優れている。日本にとってお互いレベルアップできるような環境を作りたい。これまで僕個人でやっていたことを東芝と一体になって、第一歩として始める。これを色んなリーグワンのチームが真似して、同じようなことをできるようになったらいいと思います」

——リーグワンでのアジア枠設置へ。

「(もし枠ができず)プレーできなくても、外国人選手のいない春シーズンに東芝の練習生として来てもらうことなどができたらと思います」

——リーチさんは、アジアの「環境」を日本人選手が知る重要性を語っています。リーチさんが知って驚いた「環境」について教えてください。

「カザフスタンに行った時は、バスで乗っていたらでかい穴があって『爆弾を落とされた場所』だと。フィリピンに行った時は、蟻がすごくて。スクラムを組んでいる時に(足元から)蟻が上がってきて、終わったら噛まれて赤くなっていた。これは、有名な話です。

 スリランカも面白かった。イギリスの植民地だったからかもしれないですけど、ラグビーの代表戦が盛り上がっていた。思っているより、やっている人が多くて。スリランカのいい選手、日本でプレーできるようにしたいな。

 アジアの選手会の人と話していると、苦労しているのはコーチのレベル。今回、オンラインサミットをやりますけど、(コーチの)研修会みたいなのを定山渓でやりたいです。ニュージーランドのコーチを呼んで。(定山渓は)北海道だし、環境もいい。アジアとの直行便があって、(航空料金は)安いし」

 つくづく視野が広い。話の内容が、さながらユニオンの会長のようだ。

 もしかして、日本ラグビーフットボール協会の会長になりたい意欲があるのだろうか…。

 その主旨で問われたリーチは、「…言うと、(記者がそう)書いてしまうから!」とどっと笑わせる。

「まずは、自分にできることをやっていきたいと思います」 

 いち選手としては、来秋のワールドカップフランス大会を見据える。12月中旬からの国内リーグワンにおいては、日本代表側が各クラブへ候補選手の出場時間をコントロールするよう要請しているとのこと。しかし現在34歳のリーチは「休んだら負け」。スイッチを切らないほうがコンディションを保てるとの見方を示した。リーチは、忙しいのが性に合うのだ。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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