Yahoo!ニュース

【東京都台東区】創業70年以上!鶯谷の歴史を見守る激安酒処「炭焼きやきとり ささのや」

デヤブロウ街歩きWebライター(東京都台東区)

 居酒屋激戦区・鶯谷にあって、独特のオーラと超激安で存在感を放つ「炭焼きやきとり ささのや」。地元民にはお馴染みのお店ですが、実は創業から半世紀以上の深い歴史があることをご存知でしょうか?
 「ささのや」は昭和25年に創業し、それから70年以上も地域に愛されてきました。「ささのやを知ってはいるけどまだ入ったことがない」という方に魅力をお伝えします。

◆鶯谷の戦後史を見続けてきた「煙もくもく&外飲み客たくさん」の店先

 「ささのや」はJR鶯谷駅南口の改札を出て、左に進んで徒歩約2分の陸橋を渡って階段を降りたすぐ先にあります。
 店先は炭火で鶏を焼く煙がもくもくと漂い、他の居酒屋とは異なる独特な気配が店を包んでいます。

 お客さんの大半はサラリーマンやご老人で、そこに若い方も数人。道路上にいくつか置かれた立ち飲み用テーブルもあります。お店の入り口では店員さんが豪快に鶏串を焼き、その周りでも飲兵衛さんたちが立ち飲みに興じています。

 最初に書いたように「ささのや」の創業は昭和25年。その頃からこうした風景があったかもと想像すると、ちょっとしたタイムスリップ感を覚えます。実際、お店の前にあるスロープ部分の壁は、約30年前に壁面が塗り直されたのを除けば、開業当初から殆ど変わっていないそうです。

 終戦から5年後の創業当時、日本を占領中だったGHQの指示により、都内の美観維持のため屋台街が次々と撤去されました。屋台の人々は元の仕事場を失った代わりに都のあっせんした区画へ移動し、あちこちに新しい飲食店街を作ります。鶯谷で「ささのや」のある一帯も、その区画の一部です。

 治安・衛生の悪化などと戦いながら、鶯谷の人々は懸命に現在の街を作り上げました。その歴史を「ささのや」が街の成り立ちから見守り続けてきたと考えると、どこか感慨深くもあります。

◆安さの殿堂!ひと串80円の超コスパ

 街の歴史に思いをはせつつ店内に入ると、立食いカウンターが少々と、その奥には2〜4人用テーブルがいくつか。

 壁には見てのとおりメニューがびっしり。いかにも昔ながらの酒飲み処という雰囲気です。

 ここの最大の特徴はなんといっても、焼き鳥の圧倒的コスパ…!

一串80円。

80円!

 ニンニク以外の全種1串頼んでも80円×10串で800円。いつ見ても圧巻のロープライスです。
 焼き鳥以外の冷奴や枝豆なども、多くの品は他店より100円〜200円ほど割安。飲み助にとってはこのリーズナブルさが本当に嬉しいです。

 ちなみに焼き鳥のお値段、「ささのや」開業当初はひと串15円だったそうです。日本円の価値変動に伴う変化もあるので、単純に値上がりしたとは言えませんが、焼き鳥串の値段から日本経済の移り変わりも見えそうで面白いですね。

 安さの理由を注文時にさりげなく聞いてみたのですが、これについては「企業秘密」とのこと。
 正確な答えを聞けなかったのですが、そのぶん「歴史のあるお店だし、地域の肉屋さんとも長い親交があって、鶏を安く仕入れられたりするのかも…?」などと想像が捗ります。何にせよ、このご時世に美味しさと安さを提供してくれる「ささのや」は非常にありがたい存在です。

 さっそくビールを頼んで、乾杯!

◆伝統のぬか床に漬け込んだ、お新香の奥深い味わい

 まずはお新香から。

 ここのお新香はキュウリとカブのぬか漬けに、アクセントのカリカリ梅が基本。
 ぬかの風味が良く染みており、塩気と酸味が焼き鳥の油分を和らげるのにちょうどよく、控えめながら深い味わい。シャキシャキした食感もクセになります。

 尋ねてみると、この自家製ぬか漬けには長年継ぎ足し続けた伝統のぬか床を使っているとのこと。さりげないサイドメニューにもお店の歴史の深さが伺えますね。

◆品切れ閉店注意!安い早いウマい三拍子そろった焼き鳥

 続いて焼き鳥を「メニューのココからココまで一本ずつ、塩で!」と注文したのですが、この時は「タンとナンコツ売り切れです〜」とのことでした。残念…。
 「ささのや」は人気店だけに、焼き鳥の品切れも早め。串が全て無くなると閉店です。閉店は夜10時ですが、夜8時前後で品切れで閉店ということも。土日はちょっと要注意です。

 焼き鳥の塩串を5本頼みました。店頭の炭火で焼いており、少し小ぶりです。味は程よい油分と塩味でお酒が進み、お新香と交互に食べるとお腹の負担も抑えられ、サッパリ美味しく食べられます。まさに古き良き焼き鳥屋スタイル!

 次はタレ串を食べることに。普通に店員さんへ注文しても問題ないですが、ここの場合は…

 なんと入り口の焼き台前から直接持って行ってOK!炭火の煙をかき分けながら、自分好みの焼き鳥を好きな本数だけ貰っていけます。
 運が良ければ、目の前で焼かれてタレに漬けられた直後の串をそのままゲット!なんてことも。ただし、立ち飲みしている他のお客さんの邪魔にならないよう気をつけましょう。

◆ビギナーも歓迎!にぎやか・アットホームな店内の雰囲気

 「ささのや」の雰囲気はとても大らかで、良い意味で大雑把。常連さん同士、あるいは常連さんとお店の人とで大声の談笑は当たり前です。

 以前、記事執筆のため店を訪れた時も、隣で飲んでいたおじいさんが慣れた様子で店員さんとテイクアウトする焼き鳥を選んでいました。「家族へのおみやげ」だと朗らかに笑うおじいさんと、品切れの串やオススメの串を親切に伝える店員さん。こうした情景がここでは日常です。
 コロナ禍を挟んで4年ぶりに来店したお客さんもいるとのことで、「ささのや」がどれだけ地域から愛されているかが窺えます。

 そんな常連さんだけでなく、「この店に来るのが初めて」というビギナーさんも大らかに受け入れてくれるのが、「ささのや」の素晴らしいところ。
 常連さんによる占有席や謎ルールの押し付け、特定のお客さんに店員さんがベッタリといった、ローカル居酒屋あるあるの「閉じた」雰囲気はありません。

 店内で酒を飲み、焼き鳥を食べ、初めての人も常連さんも楽しそうに過ごしています。海外国籍のお客さんにも、お店の方は滑らかな英語で接客対応しています。

 こうした温かい雰囲気も、「ささのや」が長年に渡って培ってきた接客ノウハウや、地域との深い信頼が生み出しているのかも知れません。

 見た目のインパクトに負けずにエイヤッと入ってみれば、誰でも気取らず、意地を張らずゆったりできる焼き鳥屋さんです。

 また、飲み終わったら鶯谷駅からJR山手線に乗ってサッと帰っても、夜の上野公園に向かってブラブラ散歩してもOK。こうした立地の良さも「ささのや」の良い所です。今度の週末や仕事終わりに、足を運んでみてはいかがでしょうか。

炭焼きやきとり ささのや

【住所】
 東京都台東区根岸1−3−20
【最寄駅】
 JR山手線・鶯谷駅南口改札から徒歩2~3分
【営業時間】
 月~土:15:30〜22:00
(※焼き鳥が無くなりしだい閉店)
【定休日】
 日曜日
【電話番号】
 03-3872-1997

街歩きWebライター(東京都台東区)

カフェ・居酒屋探し、博物館・美術館見学、銭湯巡りや寺社探訪など、都心部の街歩きが大好き!特に都内で暮らし始めた頃に住んでいた浅草近辺、博物館・美術館が沢山ある上野界隈など、台東区内を月に2~3回は散策しています。東京23区でも面積最小ながら、歴史と見所が詰まった台東区の魅力を積極的に発掘・発信していきます!

デヤブロウの最近の記事