シリア軍と正体不明の武装集団の挟撃を受けるトルコ軍、トルコ軍とイスラーム国の挟撃を受けるシリア軍
イドリブ県を中心とするシリア北西部の緊張緩和地帯(第1ゾーン)で、ロシア・トルコが3月5日に停戦合意を交わしてから138日目を迎えた7月21日、シリア軍とトルコ軍の間で再び緊張が高まった。
シリア軍とトルコ軍が砲撃戦
英国を拠点とする反体制系NGOのシリア人権監視団によると、トルコ軍と国民解放戦線(国民軍)が、シリア政府支配下のイドリブ県サラーキブ市、カフルナブル市、マアッラト・ヌウマーン市のシリア軍拠点を狙って砲撃した。
国民解放戦線(国民軍)は、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構とともに「決戦」作戦司令室を主導する組織。この「決戦」作戦司令室に対して、トルコは全面支援を行っている。
また、シャーム解放機構もカフルナブル市の灌木地帯に潜入し、シリア軍拠点を襲撃、兵士多数を殺傷した。
これに対して、シリア軍は「決戦」作戦司令室の支配下にあるザーウィヤ山地方のダイル・サンバル村、バイニーン村、そしてラタキア県カッバーナ村一帯を砲撃した。
トルコ軍拠点が襲撃を受ける
一方、イドリブ県北部のタルマーニーン村に設置されているトルコ軍の拠点が、正体不明の武装集団の襲撃を受け、護衛にあたっていた国民解放戦線の戦闘員1人が死亡、2人が負傷した。
トルコは、停戦を監視するとして「緊張緩和地帯」各所に監視所や拠点を設置しているが、それが襲撃されるのはきわめて異例。
なお、トルコ軍監視所・拠点は、以下70カ所に配置されている。
監視所
- イドリブ県:サルワ村、タッル・トゥーカーン村、サルマーン村、ジスル・シュグール市(イシュタブリク村)
- アレッポ県:登塔者聖シメオン教会跡、シャイフ・アキール山、アナダーン山、アレッポ市ラーシディーン地区(南)、アイス村(アイス丘)
- ハマー県:ムーリク市、シール・マガール村
- ラタキア県:ザイトゥーナ村
拠点
- イドリブ県:マアッル・ハッタート村、サラーキブ市(3カ所)、タルナバ村、ナイラブ村、クマイナース村、サルミーン市、タフタナーズ航空基地、マアーッラト・ナアサーン村(2カ所)、マアッラトミスリーン市、マストゥーマ軍事キャンプ、タルマーニーン村、バルダクリー村、ナフラヤー村、ムウタリム村、ブサンクール村(3カ所)、ナビー・アイユーブ丘、バザーブール村、バータブー村、ラーム・ハムダーン村、アブザムー町、ムシャイリファ村、タッル・ハッターブ村、ビダーマー町(2カ所)、ナージヤ村、ズアイニーヤ村(2カ所)、ガッサーニーヤ村、クファイル村、バクサルヤー村、フライカ村、バルナース村、アリーハー市、ジャンナト・クラー村、バサーミス村、カイヤーサート村、マルイヤーン村、マアッラータ村、タフタナーズ市、マンタフ村、ムハムバル村(2カ所)
- アレッポ県:アナダーン市、アレッポ市ラーシディーン地区、ジーナ村(2カ所)、カフル・カルミーン村、タワーマ村、第111中隊基地、アターリブ市、ダーラ・イッザ市、カフル・ヌーラーン村
- ハマー県:ムガイル村
トルコ軍はこのほかにも、アレッポ市とラタキア市を結ぶM4高速道路沿線に監視ポスト14カ所を設置している。
トルコ占領地でも戦闘
トルコの占領下にあるアレッポ県北部のいわゆる「ユーフラテスの盾」地域でも、戦闘が発生した。
シリア人権監視団によると、シリア軍が「ユーフラテスの盾」地域の拠点都市の一つであるバーブ市西に位置するバッラータ村を砲撃し、住民2人が死亡した。
また、トルコ軍とその支援を受ける国民軍(Turkish-backed Free Syrian Army:TFSA)が、政府と北・東シリア自治局の共同統治下にあるタッル・リフアト市近郊のマルアナーズ村一帯で人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍と交戦した。
イスラーム国がシリア軍を襲撃
このほか、イスラーム国が、ハマー県東部に位置するイスリヤー村東のアレッポ県とラッカ県との県境地帯に展開するシリア軍と親政権民兵の拠点を攻撃、シリア軍兵士14人が死亡した。
(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)