家庭内暴力や問題行動はどこに相談したらいいのか
さまざまな人間関係のトラブルでも、家族や身内で起こることは当事者間での解決を求められがちだ。また、家庭内は外から見えづらく、外に助けを求めるのは地域の目や世間体が邪魔をする。
特に「暴力」が介在するとき、実際に身体的な被害があると警察に相談するというのは思い浮かぶが、日常的な暴力がありながらも、身の危険を感じるが直接的な暴力行為がないときなどは、どこに相談していいのかわからないのではないか。
あまり知られていないかもしれないが、2015年に施行された少年鑑別所法により、少年鑑別所の業務として一般からの相談を受け付けることが正式に位置付けられた「法務少年支援センター」という公的機関が全国にある。
少年鑑別所は、家庭裁判所からの求めに応じて少年の「鑑別」をして家庭裁判所にレポートするとともに、少年鑑別所に収容される少年の観護処遇を健全育成の観点から行うところである。非行や問題行動を取る少年たちを幅広く観る、かかわる場所だ。
その少年鑑別所および法務少年支援センターが、三つ目の役割として「地域社会における非行及び犯罪の防止に関する援助」を担うことになった。これまでいくつかの法務少年支援センターの関係者と話をするなかで、学校や地域、NPOから研修講師の依頼などはある一方、一般からの相談依頼は思ったほど増えているわけではないということだ。
しかし、法務少年支援センターの存在が広く認知されれば、いますぐにでも話を聞いてほしい、解決に向けた協力を依頼したいというひとたちは少なくないのではないだろうか。実際、さいたま法務少年支援センターへの昨年の相談件数は過去最大となる257件あった。
法務少年支援センターの職員は、少年非行・少年犯罪にかかわるプロフェッショナルであり、少年院等で24時間365日少年とかかわる経験は、家庭内での暴力や問題行動の助言者として大きな助けとなる。
また、相談業務だけでなく、一定の条件の下でさまざまな心理検査等も行っているということだ。そこである法務少年支援センターに、どのような心理検査があるのかを問い合わせた。すべての法務少年支援センターで全部の検査をやっているかは不明だが、かなり広範かつ多様な心理検査を受けることができる。
WAIS-4
WISC-4
K-ABC2
長谷川式認知症スケール(HDS)
精研式SCT
親子関係診断検査(FDT)
職業適性検査
東大式エゴグラム
ロールシャッハテスト
TAT
P-Fスタディ
バウムテスト
HTP
風景構成法
その他
※上から3つは筆者がローマ数字を変換した
少年や保護者のみならず、さまざまな少年にかかわる機関との連携も行われているため、ケースによっては法務少年支援センターに行くことが難しい保護者や少年のために、支援機関連携によって包括的に支えていくこともできる。
家庭内暴力はわかりやすい言葉だが、問題行動が示す範囲は非常に広いため、「少年鑑別所被収容者の非行名別構成比(男女別、年齢層別)」(平成30年版犯罪白書)が参考になる。近年、男子少年では特殊犯罪が増えてきているという。また、女子少年は虞犯(ぐはん)- このままだと犯罪を起こす、巻き込まれる恐れのある状態- が男子少年とは異なる特徴である。
子どもが犯罪を犯す、犯罪に巻き込まれるという危機感をあおりたいわけではない。むしろ、このような少年たちと日々接してこられた知見や経験をもとに、法務少年支援センターという公的支援機関が存在することをより広く知っていただくことを目的に本稿を執筆した。
もちろん、「相談をする」という行為そのものが難しいということは理解している。
・戸惑うひとこそ「まずは相談」が難しい(工藤啓)- Y!ニュース
しかし、冒頭でも触れたように、家庭内のトラブル、特に暴力などが介在するものは相談先を見つけることが簡単ではない。だからこそ、法務少年支援センターという公的支援機関があることをより広く社会で共有しておきたい。