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トルコ軍とシリア・ロシア軍の緊張が高まるなか、今度は米軍がシリア北東部で住民と衝突し、爆撃で威嚇

青山弘之東京外国語大学 教授
(写真:ロイター/アフロ)

シリア北東部で米軍が住民に発砲

ハサカ県では、国営のシリア・アラブ通信(SANA)が伝えたところによると、シリア北東部に違法に駐留を続ける米軍部隊が12日、シリア政府と北・東シリア自治局の共同(分割)統治下にあるカーミシュリー市の東に位置するヒルバト・アンムー村ハームー村で住民に向かって発砲、1人が死亡、1人が負傷した。

住民は、ヒルバト・アンムー村、ハームー村に設置されているシリア軍の検問所前に集まり、米軍車輌4輌の通行を阻止しようとしたが、米軍が実弾や発煙弾を発射し、強制排除しようとした。

両検問所前には数百人の住民が集まっていたという。

米軍は応戦する住民を威嚇するため爆撃を敢行

発砲を受けた住民は、軽火器などで応戦し、車輌4輌を破壊した。

これに対して、米軍は戦闘機を派遣し、ヒルバト・アンムー村の農地を3回にわたって爆撃し、住民を威嚇した。

なお、米軍兵士と破壊された車輌は、衝突の数時間後に現場に派遣された車輌5輌からなる米軍の別の部隊によって回収された。

米主導の有志連合の声明

米主導の有志連合のマイルズ・コギンズ(Myles Caggins)報道官(米軍大佐)は事件に関して、ツイッターを通じて以下のような声明を出した。

2月12日、シリアのカーミシュリー市近郊でパトロールを行っていた有志連合は、親シリア体制部隊によって占領されたチェックポイントに遭遇した。有志連合は一連の警告と緊張緩和の試みを行ったものの、パトロール部隊は何者かから軽火器での発砲を受けた。自衛のため、有志連合は応戦した。事態は緩和し、調査が行われている。有志連合は基地に帰還した。

コギンズ報道官によると、この衝突で米軍兵士1人がかすり傷を負ったという。

クルド民族主義勢力の発表

一方、米軍の支援を受けるクルド民族主義組織の民主統一党(PYD)が主導する北・東シリア自治局に近いANHAは、事件に関して、シリア軍と国防隊(親政権民兵)がヒルバト・アンムー村でメディア関係者と米軍に対して発砲したと伝えた。

シリア人権監視団の発表

また、英国で活動する反体制系NGOのシリア人権監視団は、米軍と交戦したのが「地元住民と体制軍寄りの地元武装集団」だとしたうえで、 米軍の爆撃が威嚇の目的としていたと発表した。

米軍に対峙する住民(SANA、2020年2月20日)
米軍に対峙する住民(SANA、2020年2月20日)

(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)

東京外国語大学 教授

1968年東京生まれ。東京外国語大学教授。東京外国語大学卒。一橋大学大学院にて博士号取得。シリアの友ネットワーク@Japan(シリとも、旧サダーカ・イニシアチブ https://sites.google.com/view/sadaqainitiative70)代表。シリアのダマスカス・フランス・アラブ研究所共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員を経て現職。専門は現代東アラブ地域の政治、思想、歴史。著書に『混迷するシリア』、『シリア情勢』、『膠着するシリア』、『ロシアとシリア』など。ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」(http://syriaarabspring.info/)を運営。

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