前代未聞の無効試合 生涯無敗の重岡銀次朗の今後はどうなる
6日、ボクシングIBF世界ミニマム級タイトルマッチが行われ、王者のダニエル・バラダレス(メキシコ)と挑戦者同級5位の重岡銀次朗(ワタナベ)が戦った。試合は予想だにしない幕切れとなった。
試合について
重岡銀次朗はプロアマ無敗のボクサーで、軽量級とは思えない破壊力を武器にここまで勝ち上がってきた。
デビュー当時から世界王者を期待された存在だ。プロ入りから4年で今回のチャンスを得た。
試合が始まると両者距離を取りながら、様子を見る展開が続いた。
身長152cmと小柄な体格ながら鋭いステップが特徴で、強打を持つ。徐々に重岡が距離を掴み、鋭い踏みこみからの左ストレートが炸裂した。
続くラウンドでは、ボディも駆使してさらに攻勢を強めていく。バラダレスは重岡の勢いに押されクリンチに逃れる。
自分より7cm大きいバラダレス相手に、ヒットアンドアウェイで優位に戦った。
重岡が世界初挑戦とは思えない動きで、王者を圧倒していった。バラダレスは、重岡のスピードとパワーに翻弄されているようだった。
そして3ラウンド目、重岡が中に入って攻めようとしたところにバラダレスの頭がヒット。
バラダレスは、バッティング後に苦しい表情をして試合がストップ。試合続行に向けてインターバルも取られたが、王者は続行ができない。
レフェリーが試合終了を宣言し、3ラウンド負傷によるドロー判定となった(後に訂正されて無効試合)
重岡のペースで進んでいただけに非常に残念な結果となった。
バッティングについて
ボクシングでは、バッティングで試合続行が不可能になるケースはある。多くは顔面のカットにより試合ができなくなる場合が多い。今回のように出血がみられずヘッドバットのダメージで、止められるのは非常に稀なケースだろう。
問題となったバッティングのシーンをリプレイで確認したが、頭突きをしているのはバラダレスの方だった。
重岡が鋭いステップで中に入ろうとした時に、頭を下げたバラダレスのバッティングが当たっている。
バッティングでは、当てた方と当てられた方でダメージも異なる。通常なら当てられた重岡の方がダメージが大きいはずだ。
バラダレスに何らかのアクシデントがあったのは確かだが、あそこまで痛がるのは尋常ではない。
明らかに戦意喪失しており、肉体的なものより精神的なものだろう。重岡の実力が予想以上で、自分のペースに持ち込めなかったバラダレスの心が折れたようにも見えた。
重岡は初の世界戦とは思えないほどいい立ち上がりで、出入りの速いボクシングでペースを掴みかけた時に起こったアクシデントで非常に残念だった。
今回のようなケースを認めてしまうと、王者が不利な場合に意図的なアクシデントで試合放棄が可能になってしまう。現状のルールの改正なども必要になってくるだろう。
今後の両者
試合の翌日には、一夜明けの会見が開かれた。会見には3150Fightの亀田興毅ファウンダーを始め、IBFの立会人のベンジャミン・ケルティー氏、バラダレス陣営のアレハンドロ・ブリトーマネジャー、重岡陣営の渡辺均会長も同席。
亀田興毅ファウンダーは「IBFスーパーバイザーのケイルティ氏が、この試合は再戦すべきだと考えており、IBF本部へリマッチのリクエストを出してくれている。銀次朗もバラダレスも互いにリマッチの意志がある。3150FIGHTとして東京初開催となる代々木第二体育館で4月16日に行われる『3150FIGHT Vol.5』でリマッチの舞台を用意します」と約束した。
重岡は自身のSNSで、下記のように語っている。
世界戦というのは、選手にとっても特別な舞台で大きなプレッシャーがかかる。そのなかでも重岡は持ち前の力を発揮して素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。
世界チャンピオンまであとほんの少しで手が届く状況だっただけに今回の結末は非常に残念だっただろう。
重岡は間違いなく今後の日本ボクシング界の主役になる存在だ。4月に予定されている再戦での完全決着を望む。