こじ開けられなかった分厚い壁。ヤングなでしこの前に立ちはだかった「世界」とはーー(2)
U-20女子ワールドカップ準決勝で、日本はフランスに延長戦の末、1−2と敗戦。
何が勝利に足りなかったのか。
こじ開けられなかった分厚い壁。ヤングなでしこの前に立ちはだかった「世界」とはーー(1)
【勝利に足りなかったもの】
高倉監督の言葉通り、失点した場面以外は、日本がほとんどの時間をコントロールしていた。唯一足りなかったのがゴールだ。
「もっとシュートを打っていかなければいけなかったと思いますし、『自分が決める』という気持ちを多くの選手が持たないと、こういう舞台では勝てないのかなと思います。」(長谷川)
相手のセンターバックはたしかに強かった。だが、日本はそれを超えるコンビネーションと決定力を試合の中で見せることができなかった。そして、フランスは守備に耐える時間が多い中で、わずかなチャンスを完璧に活かす戦術面のしたたかさと、その機会を忍耐強く待ち続けた精神力の強さが光った。
計算外だったことは、前半のうちに2人の負傷者を出してしまったことである。それまで相手の右サイドを抑えていた宮川が相手と接触した際に手の甲を踏まれてプレーの続行が不可能な状態になり、さらに、58分には上野が接触で膝を痛めて交代した。故意ではないにしても、フランスは競った後のラフプレーが目に付いた。しかし、いくつかのファウルは見逃され、ピッチにうずくまる選手を放置したまま試合が続行される場面が何度かあった。それを差し引いても、フランスのファウルはイエローカード3枚を含め、最終的に24にも上った(日本のファウル数は4、イエローカードはゼロ)。
だが、それは言い換えればフランスの勝利への執念とも言える。
フランスは、2018年のU-20女子ワールドカップと、2019年の女子ワールドカップの開催国でもある。国を挙げて女子サッカーに力を入れていることは、今大会のチームを見てもよく分かる。この準決勝のピッチに立っていた選手たちが、3年後、年齢制限のない代表チームの一員として、再びワールドカップの舞台で対戦することは十分にあり得る。
国内リーグではなかなか味わうことのできない、強さと厳しさを体に染み込ませた選手たちの、今後の成長に期待したい。
【確立された日本のスタイル】
日本は目指していた場所にはたどり着けなかったが、この試合で確信したこともある。
それは、今大会で日本が魅せたサッカーのスタイルが、今後さらに洗練されていくことへの期待だ。
今大会の日本は、準決勝に進出した4チームの中でも特徴的なサッカーのスタイルを持っている。
特に、フランスとの準決勝は、違った特徴を持つ2か国の強さがよく現れたハイレベルな試合だった。
日本は頭と足をフルに活用し、フランスとのスピードやパワーなどのフィジカルの差を、多くの場面で技術と組織力でカバーした。
20代前後でスピードやパワーなど、身体面の飛躍的な成長を見せる欧米各国に対し、日本がどのようにそのウィークポイントを補って対抗していくか。それに対する明確な答えを持ってベスト4まで進んできたことは、誇れることだ。
チームを率いる高倉監督と大部由美ヘッドコーチは、現在、なでしこジャパンの指導も兼任しており、代表選手に求める条件や目指すサッカーのコンセプトは、カテゴリーを超えて共有されている。
今大会で何が通用しなかったのかをあらためて分析することは必要だが、未来に向けて大切なことは、このスタイルをさらに磨き、洗練させ、同時に個のレベルを上げていくことだ。
日本は12月3日に、3位決定戦でU-20アメリカ代表と対戦する。アメリカは育成にも並々ならぬ情熱を注ぐ女子サッカー大国であり、準決勝同様に厳しい戦いになることが予想される。
しかし、負けるわけにはいかない。
このチームで戦う最後の試合を、最高の形で締めくくってほしい。
に続く