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今年のジャッキー・ロビンソン・デーが「8月28日」である理由

宇根夏樹ベースボール・ライター
昨年のジャッキー・ロビンソン・デー(フィラデルフィア・フィリーズ)(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 例年のジャッキー・ロビンソン・デーは、4月15日だ。1947年のこの日、ジャッキー・ロビンソンはブルックリン・ドジャースからデビューし、メジャーリーグに存在していた「人種の壁」を破った。

 けれども、今年のジャッキー・ロビンソン・デーは、8月28日だ。

 4月15日でない理由は、すぐにわかる。新型コロナウイルスのパンデミックにより、今シーズンは7月23日に開幕した。

 ただ、たまたま、8月28日に決まったわけではない。そこには、2つの理由がある。

 ドジャースのオーナーの一人で、GMも務めていたブランチ・リッキーが、初めてロビンソンと会い、メジャーリーグでプレーすることについて話し合ったのは、1945年8月28日だった。

 当時、ロビンソンは26歳。前年の秋に陸軍を除隊し、この年はニグロリーグのカンザスシティ・モナークスでプレーしていた。リッキーのオフィスで行われた会談は、3時間に及んだという。リッキーがロビンソンに「やられてもやり返さない勇気を持った選手が欲しいんだ」と言ったのも、この時だ。翌年、ロビンソンは、ドジャース傘下のAAA、モントリオール・ロイヤルズの選手として、マイナーリーグの試合に出場した。

 また、1963年8月28日には、ワシントン大行進が行われた。人種差別の撤廃を求めるこのデモには、20万人以上が集まり、マーティン・ルーサー・キングJr.は演説で「私には夢がある」と語った。そこには、すでに選手としてのキャリアを終え、前年に殿堂入りしたロビンソンも、息子を連れて駆けつけた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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