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あの優良助っ人が太鼓判を押したジャスティン・スモークが巨人打線をパワーアップさせる

横尾弘一野球ジャーナリスト
2009年のワールドカップに出場し、日本戦で一発を放ったジャスティン・スモーク。

 巨人の新外国人ジャスティン・スモークが、エリック・テームズとともに4月16日に行なわれたイースタン・リーグの東北楽天3回戦にスタメン出場。1回表無死満塁から右前に2点タイムリーを放ったのをはじめ、2安打のデビューを果たした。新型コロナウイルスの影響で来日が3月29日までずれ込み、2週間の隔離措置を経て4月13日から練習に合流。ようやく実戦出場に漕ぎ着けたわけだが、日本でのデビューはまずまずという印象だ。

 6年前のことである。第17回パンアメリカン競技大会の取材でカナダ・トロント郊外の野球競技会場に足を運び、当時は巨人の国際部駐米スカウトだったフェルナンド・セギノールに会った。2002年のオリックスを皮切りに日本で8年プレーし、左右打席本塁打9回の日本記録を持つセギノールだ。

 この時は、巨人でプレーしていたフレデリク・セペダとエクトル・メンドーサがキューバ代表で大会に出場していたため、彼らのコンディションを球団に報告しながら新たな助っ人候補をチェックしていた。そんなセギノールに、日本で成功する確率が高い打者はどんなタイプか尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「選球眼のよさは必要だろう。ただ、それ以上に普段とは違う環境への適応力がポイントだと思う。だから、代表チームでプレーする国際大会でのパフォーマンスを見ているんだ。キューバ人が世界中どの国でも力を発揮できるのは、代表や国際大会での経験が豊富で対応力に優れているからだと考えている」

 そうして、アメリカ代表のブライアン・ボグセビック(2016年にオリックスでプレー)やドミニカ共和国代表のロニー・ロドリゲス(今季から北海道日本ハムでプレーする)を候補に挙げていたセギノールが、「この選手を知っているか?」と聞いてきたのがジャスティン・スモークだった。

2009年のワールドカップでMVPに輝いたスイッチヒッター

「もちろん。2009年のワールドカップでMVPに選ばれた一塁手ですね」

 すると、大きく頷いたセギノールは、打つべきボールをしっかりと見極められる点やスイッチヒッターであることをはじめ、スモークの魅力をいくつも教えてくれた。

 2008年のドラフト1巡目で、サウスカロライナ大からテキサス・レンジャーズと契約したスモークは、AA級とAAA級でプレーした2009年にアメリカ代表入りし、ヨーロッパ各国で開催された第38回ワールドカップに出場。三番ファーストで、二次ラウンドの日本戦では右打席で特大の2ラン本塁打を放つなど、目立つ活躍で優勝の原動力となり、MVPとベストナイン一塁手に輝く。ちなみに、準優勝だったキューバ代表のアルフレド・デスパイネ(現・福岡ソフトバンク)は、本塁打王とベストナイン外野手だった。

 メジャーへ昇格した2010年シーズンの途中で、シアトル・マリナーズへトレード。2012年に日本で行なわれたオークランド・アスレチックスとの開幕シリーズでは、ベテラン右腕のバートロ・コロンから左打席で東京ドームのレフトスタンドへ一発を叩き込んでいる。

 その後も2ケタ本塁打をマークしてキャリアを積み重ね、2015年はパンアメリカン競技大会が開催されていたトロントを本拠地とするブルージェイズでレギュラーになっていた。だから、セギノールのリストからは外れたのだが、ここ2~3年は再び調査対象になっていたようだ。

 30歳だった2017年にマークした38本塁打をピークに、スモークの長打力は落ちてきたと見られている。また、コロナ禍のメジャーでは、巨人が提示したとされる年俸3億1000万円の2年契約という条件は得られないだろう。「日本行きはまったく頭になかった」とコメントしたスモークも、「十分にあり得る選択肢」と前向きに受け止めた。

 今季の巨人では攻撃面でのキーマンと目されていただけに、4月15日まで18試合で打率.215と低調な打線のカンフル剤となってもらいたい。カギを握るのは、セギノールの以下の見方ではないか。

「大学時代から、スモークはチパー・ジョーンズと比較されることがあったが、私は違うタイプだと思う。スモークの持ち味はホームランではなく、外野手の間をライナーで抜いて打点を稼ぐこと。それに徹することができれば成功するだろう」

 セギノールの談話から6年経ち、34歳になっているからこそ、スモークには一発よりも勝負強い打撃を期待したい。

(写真提供/小学館グランドスラム)

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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