Yahoo!ニュース

ともに作って ともに食べて ともに食品ロス問題を考える「ともにキッチン」

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
香川県高松市で開催された「ともにキッチン」。様々な世代が集う(筆者撮影)

2018年3月6日、香川県高松市で「ともにキッチン」が開催された。「ともに作って ともに食べて ともに食品ロス問題を考える」がキャッチコピー。食品ロス削減のためのイベントだ。香川大学の古川尚幸先生と研究室の学生、一般参加の主婦たちがともに集った。

趣旨を説明する香川大学経済学部教授の古川尚幸先生(筆者撮影)
趣旨を説明する香川大学経済学部教授の古川尚幸先生(筆者撮影)

サルベージ・パーティ(通称:サルパ)は、家庭で余っている食品を持ち寄り、その材料を見てシェフ(もしくは料理の得意な人)がレシピ(献立)を作り、調理する場合が多い。この「ともにキッチン」は、余っている食材を見て、全員でレシピ(献立)を考え、足りない食材は参加費を使って買い足し、全員で作って、全員で食べる。

余っている食材の種類とその量がホワイトボードに書き出され、参加者は、それを見て、思いつくレシピを次々挙げていく。

余っている食材がホワイトボードに書き出される(筆者撮影)
余っている食材がホワイトボードに書き出される(筆者撮影)

筆者がかつて参加したサルベージ・パーティでは、参加者の年代の幅は狭かった(年齢が互いに近い世代)。今回の「ともにキッチン」の主役は、大学生と、ベテラン主婦だ。世代の差は・・・40歳以上?

特徴的なのは、野菜がとても多いこと。以前、参加した時には、ほとんどが加工食品だった。

「ともにキッチン」で使う野菜(筆者撮影)
「ともにキッチン」で使う野菜(筆者撮影)

それらの野菜を見ながら、そして、制限時間内に作ることが可能かどうかを考えながら、レシピ(献立)が決定した。

余っている食材を見てレシピ(献立)が決められた(筆者撮影)
余っている食材を見てレシピ(献立)が決められた(筆者撮影)

全員が参加するのがとても新鮮だ。ちょうど、この前日、香川県三豊市で開催された「瀬戸内0円キッチン」に参加した。こちらは主催者が語る「給食当番」のように、作る人は2〜3人だった。出来上がるまで、年配の方達が席について、おしゃべりしながら待っていた。

皆で作る(写真:香川大学学生esdプロジェクト SteeeP 公式Facebookページより)
皆で作る(写真:香川大学学生esdプロジェクト SteeeP 公式Facebookページより)

決められたレシピ(献立)に従って、足りない食材や調味料を買いに行く人、野菜を洗うために洗い場に立つ人、皮をむくので包丁を持ってテーブルに向かう人、鍋やコンロの用意をする人・・・作業はさまざまだ。

菜の花を洗う人、ジャガイモの皮をむく人、買い物へ行く人・・それぞれだ(筆者撮影)
菜の花を洗う人、ジャガイモの皮をむく人、買い物へ行く人・・それぞれだ(筆者撮影)

ベテラン主婦の方々から、女子大学生が教えてもらう場面もたくさんあった。

学生とベテラン主婦(写真:香川大学学生esdプロジェクト SteeeP 公式Facebookページより)
学生とベテラン主婦(写真:香川大学学生esdプロジェクト SteeeP 公式Facebookページより)

家庭で親から料理を教わる機会がある人もいれば、そうでない人もいるだろう。異なる世代が参加することで、あたかも親や祖父母から教わるチャンスを得ているようでもある。

サラダを作る(筆者撮影)
サラダを作る(筆者撮影)

野菜と豚肉を交互に重ねていく。

野菜と豚肉を交互に重ねていく(筆者撮影)
野菜と豚肉を交互に重ねていく(筆者撮影)

詰め終わると、歓声が上がった。

鍋に野菜と豚肉を重ねていった(筆者撮影)
鍋に野菜と豚肉を重ねていった(筆者撮影)

これを蒸して切った切り口は、下の写真のような感じ。

豚肉と野菜の重ね蒸し(筆者撮影)
豚肉と野菜の重ね蒸し(筆者撮影)

菜の花の辛子和えは、春らしく、美しい。

菜の花の辛子和え。筆者がリクエストした(筆者撮影)
菜の花の辛子和え。筆者がリクエストした(筆者撮影)

スープを作り、卵が余った。

野菜と卵のスープ(筆者撮影)
野菜と卵のスープ(筆者撮影)

卵のままならともかく、すでに割って、液体の状態でお椀に入っている。

ここからがベテラン主婦の力の見せどころだった。

「よし、お寿司を作ろう!」

卵液は、フライパンを熱して、炒り卵にした。余っているご飯を寿司飯にし、そこにまた余っている野菜を混ぜて、円形のお皿に詰め、お皿にひっくり返して盛り付けた。

スープ用の余った卵液を使って即興でお寿司を作る(筆者撮影)
スープ用の余った卵液を使って即興でお寿司を作る(筆者撮影)

これは、ちらし寿司風のお寿司になった。

余った食材が変身し、即興で作られたお寿司。手前はジャーマンポテト(筆者撮影)
余った食材が変身し、即興で作られたお寿司。手前はジャーマンポテト(筆者撮影)

余った卵、余った野菜、余ったご飯で、あっという間にこんなお寿司が出来上がることに驚いた。大学生達も驚いていた。

余った食材でできたお寿司(筆者撮影)
余った食材でできたお寿司(筆者撮影)

みるみるうちに、いろんな料理が出来上がっていった。

いろんな料理が出来上がっていった(筆者撮影)
いろんな料理が出来上がっていった(筆者撮影)

出来上がってみると、彩りとしては、緑が多く、健康的な感じ。

緑色の料理が多くなった(筆者撮影)
緑色の料理が多くなった(筆者撮影)

テーブル一面に料理が広がるのは壮観だ。

テーブル一面に置かれた料理(筆者撮影)
テーブル一面に置かれた料理(筆者撮影)

「ともにキッチン」の優れた点

参加してみて、良いと感じた点を挙げてみる。

1、全員参加型であること。「出来上がるのを手持ち無沙汰で待つ」という人はいない。

2、野菜がふんだんに使われていること。

3、臨機応変、融通をきかせることが求められること。

4、食材を購入してもよいこと。

5、世代間交流できること。

6、外国籍の人も参加できること。

7、男性も積極的に参加できること。

筆者は、TOKYO MXの、食品ロス特集のテレビ番組に出演した際、サルベージパーティのVTRを、司会の久保純子さん・島田秀平さんらと一緒に見た。でんぶが使われていたり、オレンジ味の酎ハイで煮込んだり、といった料理があった。たまたまかもしれないが、普段、あまり使わない食材や調理法だと、その場限りであとに続かないような気もした。司会者のお二人のリアクションも薄かったように感じた。

上に挙げた中で、最もよいと思ったのは、臨機応変さ、柔軟な対応が求められる点である。電気が使えない、ご飯が炊けない、さて、どうするか。使い切ろうと思った食材が余ってしまった。など、いろんな事態を解決していく過程に学びのチャンスがあった。これこそ、食品ロスの解決法のキモであると感じた。このような機会を与えてくださった香川大学の古川先生、香川大学学生esdプロジェクト SteeeP と参加者の皆さん、うどんまるごと循環コンソーシアムの久米紳介さん、環境省四国環境パートナーシップオフィスの亀山公実子さんにお礼を申し上げたい。

2018年3月6日「ともにキッチン」参加者。筆者は前列、左から2番目(香川大学学生esdプロジェクト SteeeP 公式Facebookページより)
2018年3月6日「ともにキッチン」参加者。筆者は前列、左から2番目(香川大学学生esdプロジェクト SteeeP 公式Facebookページより)

参考情報

香川大学学生esdプロジェクト SteeeP 公式Facebookページ

スーパーマーケットで食べ物捨てずに「ゆるく細く長く」自然体で惣菜作りと0円キッチン「寛容な社会に」

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

井出留美の最近の記事