昨年より3割も多い熱中症警戒アラート 太平洋高気圧の南縁を西進する台風11号と西日本接近の台風12号
熱中症警戒アラート
熱中症は暑さだけでなく、湿度などとも関係しています。
このため、熱中症対策に使われているのは、「暑さ指数(WBGT:Wet-Bulb Globe Temperature)」です。
「暑さ指数」は、気温だけでなく、湿度、日射・建物や地面からの照り返し(輻射)などの熱も取り入れた数値であり、湿度7:輻射熱2:気温1の割合で算出されるように、湿度の高さが重要な要素となっています。
「暑さ指数」の利用上の目安として、33以上:極めて危険、31以上33未満:危険、28以上31未満:厳重警戒、25以上28未満:警戒、25未満:注意となっています。
熱中症で救急搬送される人を減らすため、環境省と気象庁は共同で「熱中症警戒アラート」を発表していますが、発表基準となっているのは、暑さ指数33以上の「極めて危険」であるときで、前日17時と当日5時に発表となります。
8月30日に対する前日予報では、日本海側の地方を中心に22地域に発表となっています。
熱中症警戒アラートの発表地域(8月30日に対する前日予報)
【東北】青森、秋田、山形
【関東甲信】東京、千葉、神奈川
【東海】静岡
【北陸】新潟、石川
【近畿】京都、兵庫、和歌山
【中国】広島、島根、鳥取
【四国】香川
【九州北部(山口県を含む)】福岡、長崎、熊本
【九州南部・奄美】鹿児島(奄美地方を除く)
【沖縄】沖縄(沖縄本島地方)、沖縄(八重山地方)
令和5年(2023年)の熱中症警戒アラートの発表回数(前日17時と当日5時の発表をまとめて1回として集計)は、7月の前半までは前年、令和4年(2022年)より少ない発表回数で推移していたのですが、7月後半から急増し、8月24日には、前年の発表回数の年間累計である889地域を超えています。
そして、8月24日に初めて北海道の全地域に熱中症警戒アラートが発表となるなど、すでに昨年度の889地域を3割も上回る1153地域に発表となっています(図1)。
熱中症が問題となった前年以上のペースで熱中症警戒アラートが発表となっていますので、引き続き、熱中症対策をお願いします。
今年の猛暑日の推移
8月29日に全国で最高気温35度以上の猛暑日を観測したのが127地点(全国で気温を観測している914地点の約14パーセント)と、一番多くの猛暑日を観測した8月3日の290地点(約32パーセント)に比べれば、観測した地点数はかなり減っています(図2)。
しかし、最高気温30度以上の真夏日を観測したのが691地点(約76パーセント)、最高気温25度以上の夏日を観測したのが821地点(約90パーセント)と、真夏日、夏日ともに高い数値であることには変わりがありません。
東北から九州・沖縄まで厳しい残暑が続いていますが、北海道は秋の気配になっています。
8月25日に南鳥島近海で発生した台風10号は、太平洋高気圧が一時的に弱まったことから北上し、関東の東から三陸沖を北上し、8月29日15時に日本のはるか東で温帯低気圧に変わりました。
そして、太平洋高気圧が再び強まり強い残暑が戻ってきました。
東京の今年の夏の気温
東京の猛暑日が一番多かった年は、これまでは昨年、令和4年(2022年)の16日でした。
それが、令和5年(2023年)は、これを上回って、新記録を更新中です(図3)。
東京も全国的な傾向と同じく、7月後半からの記録的な暑さで猛暑日が多発しましたが、8月21日に猛暑日になってから、一週間ほどは大気が不安定となって降雨があるなどで猛暑日にはなりませんでした。
しかし、8月29日に今年22日目の猛暑日となり、予報通りなら、27日まで年間の猛暑日の記録が伸びます。
また、8月2日以降、最低気温が25度以上の日(事実上の熱帯夜)が連続しています。
そして、予報通りなら、少なくとも9月10日までの40日連続の熱帯夜ということになります。
この記録的な暑さをもたらしている太平洋高気圧が強まっていることから、南海上で次々に発生した台風が北上できずに西進しています。
台風9号に続いて台風11号
フィリピンのすぐ東には非常に強い台風9号があって、北西へ進んでいます。
台風が発達する目安の海面水温は27度とされていますが、台風9号の進む海域の海面水温は29度〜30度です。
このため、中心気圧は940ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は50メートル、最大瞬間風速は70メートルという現在の勢力を落とすことなく西よりに進み、バシー海峡を通って8月31日(木)には南シナ海に達する見込みです(図4)。
沖縄県先島諸島では、台風からのうねりが入ってきますので、高い波には警戒が必要です。
また、フィリピンの東にある台風11号は、発達しながら西ヘ進んでいます。
台風11号が進む海域も、海面水温が29度〜30度と、発達の目安の27度より高いことから発達しながら北上し、8月31日から9月2日頃にかけて強い台風として沖縄に接近する見込みです(図5)。
沖縄では高波に警戒してください。
また、台風の進路等によっては、警報級の高潮のおそれがあります。
奄美の沿岸の海域では、8月31日午後から9月1日頃にかけてうねりを伴った高波に警戒してください。
気象庁は、暴風域に入る3時間ごとの確率を予報していますが、これを利用すると、台風が最も接近する時刻がわかります。
図6は、台風11号に関する8月29日21時に発表した暴風域に入る3時間ごとの確率ですが、鹿児島県奄美地方南部で確率が一番大きくなるのは、9月1日朝の16パーセントです(図6)。
つまり、奄美地方に台風11号が最も接近するのは9月1日朝ということになります。
同様に、沖縄本島地方南部に最も接近するのは9月1日朝、沖縄県宮古島地方に最も接近するのは9月1日夕方ということになります。
台風12号発生も
台風11号のはるか東、マーシャル諸島付近では積乱雲が増えてきました。
タイトル画像の8月29日15時の段階では、まだ熱帯低気圧とはなっていませんが、6時間後の21時に熱帯低気圧が発生しました。
そして、気象庁は今後24時間以内に台風に発達するとして、台風並みの情報を発表しています。
今年の春までは、東部太平洋赤道域の海面水温が平年より低くなるというラニーニャ現象が2年半という長きにわたって続いていました。
しかし、現在は、エルニーニョ現象が発生し、東部太平洋赤道域の海面水温が平年より高くなっていますので、様変わりです。
エルニーニョ現象やラニーニャ現象が発生すると、赤道域で積乱雲の発生場所が変わり、台風の性質などが変わり、地球規模で異常気象が発生するとされています。
気象庁ホームページでは、エルニーニョ現象・ラニーニャ現象と台風との関係は表のようにまとめています。
昨年、令和4年(2022年)はラニーニャ現象の最中でしたが、台風の発生位置は北東にずれて発生していました。
このため、日本近海で発生する台風が多くなり、台風が発生するとすぐに日本に影響したということが多々ありました。
エルニーニョ現象の今年、令和5年(2023年)は、8月末までに平年であれば14個発生するところが、マーシャル諸島で台風が発生しても12個と、やや少なくなっています(表2)。
エルニーニョ現象発生時には、台風発生数が少なくなるという傾向が出ています。
また、台風の発生海域は日本から離れた海域で発生するという、エルニーニョ現象の年の台風の特徴もでています(図7)。
なお、台風8号は、北太平洋中部のハリケーンが西進して日付変更線を越えて北太平洋西部にはいってきたことによる発生で、他の台風とは違います。
表1で気になるのは、エルニーニョ現象の年は、発達して日本を襲う台風が多い傾向があるということですが、すでに、2号、6号、7号で大きな被害が発生しています。
今週後半に沖縄に接近する台風11号、今週末から来週にかけて西日本に接近する台風12号に対して、最新の情報を入手し、警戒してください。
タイトル画像、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供資料に筆者加筆。
図1の出典:環境省ホームページをもとに筆者作成。
図2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。
図3の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。
図6、表2の出典:気象庁ホームページ。
図7、表1の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。