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西日本を中心に長引く湿った危険な暑さと大災害をもたらす台風が多く発生するマリアナ海域で台風13号発生

饒村曜気象予報士
台風13号の雲と今後の動向の注意が必要なフィリピンの東の雲(9月11日15時)

続く大気不安定

 大気下層に、暖かくて湿った空気の流入が続いています。

 暖かくて湿った空気の流入は、熱中症になりやすい危険な暑さになりやすく、同時に大気を不安定にさせますので、熱中症と局地的な落雷や豪雨がセットで続いているのです。

 令和6年(2024年)9月11日も、東シナ海を北上して中国大陸に上陸した熱帯低気圧の周辺にある積乱雲の塊がかかったことから雷を伴った激しい雨が降った南西諸島を除き、ほぼ全国的に晴れる所が多くなり、強い日射とあいまって気温が上昇しました(図1)。

図1 地上天気図(9月11日21時)と予想天気図(9月12日9時の予想)
図1 地上天気図(9月11日21時)と予想天気図(9月12日9時の予想)

 しかし、午後は、大気が不安定となり、山沿いを中心として雨や雷雨になっています(図2)。

図2 24時間降水量(9月11日0時から24時)
図2 24時間降水量(9月11日0時から24時)

 そして、12日も似たような天気が続きそうです。

 気象庁と環境省が共同で発表している熱中症警戒アラートは、9月9日の12地域、10日の11地域に続き、12日は千葉県と西日本の19地域に発表となっています(図3)。

図3 熱中症警戒アラートの発表状況(9月12日)
図3 熱中症警戒アラートの発表状況(9月12日)

 3日連続で10地域以上の熱中症警戒アラートの発表となりましたが、熱中症警戒アラートが発表となっている地域は勿論、発表がない地域でも、暑さ指数が31以上の「危険」となる地域が西日本から新潟県・福島県まで広がっています。

 暑さ指数31以上のところは、高齢者においては安静状態でも発生する危険性が高い地域です。外出はなるべく避け、涼しい室内に所に移動してください。

 熱中症警戒アラートの発表回数は、9月12までで、のべ1566地域と、早くも記録的な暑さだった昨年を27パーセント以上も上回っています(図4)。

図4 熱中症警戒アラートの発表回数(令和4年・令和5年と令和6年の比較)
図4 熱中症警戒アラートの発表回数(令和4年・令和5年と令和6年の比較)

 例年であれば、9月に入ると、熱中症警戒アラートの発表は殆どなくなりまう。記録的な暑さだった昨年もそうでした。

 しかし、今年は、9月中旬に入っても熱中症警戒アラートの発表が続いています。

 それだけ、ことしは、熱中症になりやすい湿った暑さの日が多く、しかも長く続いているといえるでしょう。

 来週になれば、熱中症になりやすい危険な暑さは収まると思われますが、そのきっかけとなるのが、マリアナ諸島にある台風13号の北上です。

台風13号の北上

 令和6年(2024年)は、台風の発生が遅く、第1号がフィリピン近海で発生したのは、5月26日でした。

 台風の統計が作られている昭和26年(1951年)以降、台風1号が一番遅く発生したのは、平成10年(1998年)の7月9日で、令和6年(2024年)は、史上7番目の遅さということになります。

 強いエルニーニョ現象が終息した年は、台風1号の発生が遅いという傾向がありますが、今年、令和6年(2024年)も非常に強いエルニーニョ現象が終息した年です。

 そして、5月31日には、南シナ海で台風2号が発生したのですが、その後は、約2か月にわたって台風の発生がありませんでした。

 台風3号が発生したのは7月20日で、フィリピンの東海上でした。翌21日には南シナ海で台風4号が発生しましたが、平年であれば7月までに8個位発生しますので、平年の約半分という、かなり少ない発生数の年であったということができます。

 しかし、8月は平年並みの6個発生し、9月1日21時に台風11号がフィリピンの東で、9月5日15時に日本の東で台風12号が発生しました。

 そして、9月10日21日にマリアナ諸島で台風13号が発生し、発達しながら南西諸島に接近する見込みです(図5)。

図5 台風13号の進路予報と海面水温(9月12日0時)
図5 台風13号の進路予報と海面水温(9月12日0時)

 台風が発達する目安の海面水温は27度以上ですが、台風13号が進むとされる海域は29度以上もあります。

 このため、台風13号は、今後も発達しながら日本の南を北上し、14日(土)から15日(日)頃にかけて、暴風域を伴って強い勢力で南西諸島に接近するおそれがあります。

 せっかくの三連休ですが、南西諸島では、次第に風が強まり、14日以降は大荒れや大しけとなるおそれがあります。

 気象庁は暴風域に入る確率を、3時間ごとに予想していますが、これを見ると、台風13号が最も近する時刻がわかります。

図6 暴風域に入る確率(上から、奄美南部、沖縄本島南部、宮古島)
図6 暴風域に入る確率(上から、奄美南部、沖縄本島南部、宮古島)

 例えば、奄美大島で、一番確率が高いのは9月14日の夜遅く(21時から24時)ですので、この頃に台風13号の最も接近すると考えられます。

 また、沖縄本島は、14日夜遅くから15日未明(0時から3時)に最接近と考えられます。

 真夜中の災害が発生しやすい時間帯に最接近ですので、早目の台風対策、明るいうちの台風対策をお願いいたします。

マリアナ海域の台風

 マリアナ海域は、日本に大災害をもたらした台風が多く発生する海域です。

 ただ、今回の台風13号は、過去の大災害をもたらした台風と違い、熱帯低気圧の段階から、5日先まで、進路予報や強度予報が発表となっています。

 精度が悪く、24時間先がやっとの時代には、大災害となっても、被害、特に人的被害が減らせるのが現在です。

 ただ、これは、精度が良くなっている台風予報を使ってのことです。

 現在、台風13号とフィリピンの間には、発達した積乱雲が密集しています。

 この積乱雲の中から、次の台風14号が発生するのか、新たな台風が発達しない代わりに台風13号がより発達するのか不詳ですが、いずれにしても動向を注意すべき雲が近くにあります。

 台風13号だけでなく、その周辺も考慮したで台風情報が発表されますので、常に最新の台風情報の入手につとめ、人的被害を防いでください。

 台風は、他の自然災害と違い、被害、特に人的被害を防ぐことができる自然現象です。

タイトル画像、図2、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図1、図6の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:環境省ホームページ。

図4の出典:環境省ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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