大阪・本まつばやさんの感性が煌めく淡く優美な色彩美「天の川&織り姫」に隠された柚子と黄身餡を探して
梅雨空になったりならなかったりという天気予報に一喜一憂しがちな日々ですが、いつの間にか七夕まで約2週間となりましたね。
店舗によっては通年のお菓子も七夕使用のデザインに変更されたり、はたまた短冊や笹の葉のディスプレイも目立つようになりました。六月ももう終わりなんだなぁと、まだ一週間。されど一週間と思いながらこちらの文章を綴っております。
さて、和菓子の世界においても七夕というのはそのお店の感性がきらりとひかる時節。今回は一足お先に、大阪は天王寺「本まつばや」さんの七夕の上生菓子をご紹介。
繊細な青の色彩に、思わずため息がでてしまいそうな程美しい「天の川」。寒天などを使うことなく、練り切り餡と手捌きだけで表現なさる、ある意味断端不適かつ綿密に計算された意匠に感服。水の流れによって隔てられているかのような金箔と銀箔は織姫と彦星。
白餡の豊かな甘味はお薄(抹茶)の香りを引き立ててくれるのですが、かといって主張が控え目というわけではなく、一瞬舌にまとわりついてすぐにほどけるような心地よい甘味。その中に潜むこし餡に隠された仕掛けは、なんと柚子。見た目からは全く想像もつかなかった爽やかな遊び心に、思わずにんまり。
こちらも繊細なグラデーションに思わず見とれてしまうような「織り姫」。歯切れのよいもちもち具合にファンも多い外郎性の織り姫。優美な衣の内に除く鮮やかな山吹色の餡は、なんと黄身餡。加熱された卵黄特有のこっくりとした口当たりと香りは非常に濃厚!
微かに、ごくごくわずかに鼻腔を擽る硫黄の感触に好き嫌いが別れるところではありますが、そこに合わせる白餡が全体をうまく包み込んでくれる甘美な役割を担っているので、個人的には好みの味わいです。
天の川も織り姫も、どちらも美麗な意匠ということは確かなのですが、見えない芯の部分でもある中餡に遊び心やサプライズが仕込まれていると、思わず胸がときめいてしまいませんか?もちろんディスプレイや店頭にてどのような構造かは概ね把握できるのですが、知識があったとしても胸が高鳴ってしまうのも練り切りの魅力の一つ。
今年の七夕は、様々なお店の練り切りを見比べてみるのも楽しいかと思います。