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週1〜2回「6000歩」歩くだけで長生きできる可能性。3000人を10年観察【最新情報】

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター

「歩行」が健康に良いのはもはや常識ですが、問題は「どれほど歩けば十分なの?」という点でしょう。

一般的には「1日8000歩」と言われています。この根拠になっているのは2022年に報告された論文です。15の観察研究に参加した4万5千名強のデータを解析したところ、60才未満では1日「8千〜1万歩」、65歳以上なら「6〜8千歩」歩く人たちで、死亡リスクがそれ以下の歩数に比べて低下していたのです [文末文献1] 。

毎日8千歩も歩けるか?

でも「8千歩」と言えば約1時間。毎日それほど歩けないですよね?

そこで「ならば1日8千歩を歩く日が週に何日あれば長生きできるのか」。この疑問を解くべく京都大学の井上浩輔氏たちが取り組んだ解析が、3月28日、米国医師会雑誌(JAMA)ネットワーク・オープン誌に掲載されました [文末文献2]。その結果が、すでに一部メディアで報道されているように「週に1〜2日、1日8千歩以上で長生きできる可能性」というものです。

8千歩でなく6千歩でもOK。

でもこの話には続きがあります。「1日8千歩」なら「週1日でもOK」、「週2日なら1日6千歩でも長生きできる可能性」も示されているのです。簡単にご紹介します。

今回の研究で解析対象になったのは、2005、6年に無作為に抽出された約3000人の米国住民です。歩数計を7日間連続でつけてもらい、1日8千歩以上歩いた日が1週間中「ゼロ」日、「1〜2」日、「3〜7」日の3群に分け、その後10年間の死亡リスクを比較しました。

その結果、「1日8千歩以上」歩く日が「ゼロ」の人たちでは死亡率が40.7%だったのに対し、「1〜2」日の人たちでは14.1%でした。半分以下に減っていたのです。

週1日だけ「8千歩以上」でも死亡リスク減少

このデータをさらに細かく見ていくと、「1日8千歩以上」歩く日が「1日」だけの人たちでも、「ゼロ日」の人達に比べると死亡率は7%弱ですが低くなっていました。

とはいえ「8千歩は大変だ」という人もいるでしょう。ならば6千歩でもOKです。「1日6千歩」でも、週に「1〜2回」歩いていれば「ゼロ回」の人達に比べやはり、死亡率は半分以下になっていたのです(グラフ)。

「たくさん歩くから長生きできる」のか?「(そもそも)たくさん歩ける人は長生き」なのか?

とはいえ、「たくさん歩くと死亡率が減る」のか「たくさん歩ける人は長生きするのか」、この研究だけではどちらか分かりません。しかしいずれにせよ、結果として「たくさん歩けれは長生きできる」ことに間違いはありません。

スマホやスマートウォッチの歩数計機能を使って、明日から歩数を測ってみませんか?「6千歩」歩くのにかかる時間は60分弱。細切れでも1日合計でそれだけ歩いていれば良いので、ハードルは高くないはずです。

ゲーム感覚で歩数を稼いでいくと、案外、簡単に達成できる数字です。ぜひトライしてみてください。

なお日常生活内の身体活動と健康については以下のような論文紹介記事も書いています。こちらも是非、ご覧ください。ではまた!

今回ご紹介した論文。

  1. 長生きする人は1日8千歩以上歩いていた。[英語]
  2. 1週間の歩数と生存率の関係。[英語]

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【注意】本記事は最新の医学論文についての紹介あり、研究結果の内容はあくまでも「論文筆者」によるものです。また論文の解釈は論者により異なる可能性もあります。あくまでもご自身の見解形成の参考としてお読みください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。15年以上にわたり新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌、会員向け情報誌などに寄稿。近年では医師向け書籍も共著で執筆。国会図書館収録記事数は3桁(含筆名)。日本医学ジャーナリスト協会会員(。

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