アップル、Intel入ってないMac続々 独自半導体で脱インテル加速
米アップルが10月に販売を開始したノートパソコン「MacBook Pro」2機種は、新たに独自設計・開発した半導体「M1 Pro」と「M1 Max」を採用している。これで同社ノートパソコン「MacBook」シリーズは全機種が自社開発の半導体に切り替わった。
アップルによるとM1 ProとM1 Maxは、いずれも2020年に開発した「M1」に比べてCPU(中央演算処理装置)処理性能が最大1.7倍になった。GPU(画像処理半導体)性能はM1 Proが最大2倍、M1 Maxが最大4倍だという。
ロイターは専門家の話として「この電力効率でこの水準のパフォーマンスを実現したのは前例がない」と報じている。「M1でも米インテル製半導体に対する優位性があったが、それが一段と明確になった」と指摘している。
独自半導体計画
アップルは2006年から、パソコン「Mac」シリーズにインテル製の半導体を搭載してきた。しかし、Macの性能向上がインテルの技術開発ペースに制約されるといった課題があった。
そこで20年6月、独自半導体計画を発表。第1弾製品群を発売した後、2年ほどかけてすべてのMacを自社製半導体に切り替えるとしていた。
その後、20年11月にM1を発表した後、同半導体搭載の薄型ノート「MacBook Air」や、高性能ノート「MacBook Pro」の普及モデル、そして、デスクトップ型「Mac mini」を発売。21年5月にはM1搭載のデスクトップパソコン「iMac」も発売した。
1年足らずでほぼすべてに搭載完了
そして今回これらにノートパソコン高性能モデルの上位版が加わった。米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、アップルが販売しているデスクトップパソコンのうち、今もインテル製半導体を搭載しているのは4機種のみ。そのうちの2機種は旧型のiMac、1機種は旧型のMac mini。これらのデスクトップ機はいずれもすでにM1搭載の新モデルが発売されている。残る1機種は価格が6000ドル(66万円)以上の「Mac Pro」だ。
こうしたアップルの独自半導体への移行計画について同紙は、「予定よりもかなり早く進んでいる」と報じている。アップルがM1を発表してから1年足らずで、ほぼすべてのMacへの移行を完了したからだという。
Mac販売も好調
この戦略は販売にも寄与した。米調査会社のIDCのアナリストは、「M1は成功を収めている」と指摘する。
IDCによると、アップルは20年に2310万台のMacを出荷した。この台数は前年に比べ29%多い。また同年10〜12月期におけるMacの出荷台数は734万9000台で、前年同期から49.2%増加した。
Macは21年に入ってからも好調だ。M1搭載Macが初めて四半期全体を通して販売された21年1〜3月期の出荷台数は、前年同期比2.1倍の669万台だった。
アップルは10月28日に21会計年度の決算を発表した。Macの年間売上高は前年比23%増の351億9000万ドル(約4兆100億円)に達した。この金額は過去最高で、Macが同社唯一の製品だった時代の全売上高の6倍以上に相当する(図1)。
英フィナンシャル・タイムズによると、今年インテルのCEO(最高経営責任者)に就任したゲルシンガー氏はアップルの半導体について聞かれ、次のように述べたという。
「アップルは、当社よりも優れた半導体を開発できると考えた。そして彼らはうまくやった。私がこれからやるべきことは、アップルが開発したものよりも優れたものをつくることだ」(ゲルシンガー氏)
- (このコラムは「JBpress Digital Innovation Review」2021年10月21日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)