150年以上紡がれる職人技。鈴木亭さんの「杢目羊羹」はどこを切っても美麗な年輪が顔を出す練り羊羹
富山県富山市にお店を構える和菓子屋「鈴木亭」さん。創業なさった1866年といいますと、薩長同盟が結ばれた年。坂本龍馬や西郷隆盛、高杉晋作といったいわゆる幕末の偉人達がその名を轟かせた時代と共に歩んできたお店だと思うと、不思議な感覚ですよね。
当時の和菓子、特に練り羊羹の名店として知られた鈴木越後というお店で修行をしたのち開業した鈴木亭さんの初代は幕府より「鈴木」という苗字と「三つ鱗」の紋を賜るほど、優れたお菓子を作っていたとか。
今回は鈴木亭さんの創業時から今に至るまで愛される、非常に珍しい羊羹「杢目羊羹」を食べきりサイズにしてくださったミニサイズにてご紹介。
立山連峰にそびえる立派な立山杉。その特徴である幅広の年輪をそのまま羊羹に閉じ込めたような、まさに鈴木亭さんにしかなしえない秘伝の技にうっとり。どこを切っても微妙に表情が異なるのもまた一興。
一切れ口に運ぶと、嬉しい衝撃が。なんでしょうこの優しいまろやかな甘味は。一般的に日持ちがする練り羊羹は、保存性を高めるべく糖度を高めに設定しているお店が殆ど。勿論お店それぞれの魅力や味わいがあるのですが、鈴木亭さんの杢目羊羹はキーンと飛び込んでくるようなお砂糖の甘さは皆無。
では何か、と申しますと、おそらく白いんげん豆から炊かれた白餡の羊羹。小豆の羊羹とはまた一味違う、ややライトな口当たりです。そこからじわじわと後を追うように口の中に広がっていく小豆羊羹のまろやかでほんのり素朴な味わい。きちんと小豆の味が立っているのに、素朴のひとことでは片づけられない上品な風味は、やはり白餡の羊羹と織り成す絶妙なこの年輪のおかげかと。白餡と小豆餡を同じ量の配合でただ上下二色にわけただけでは、杢目羊羹の味わいにはならないでしょうね。
年輪模様に見惚れながら勿体ないという気持ちを抱きつつ、美味しいさが勝るのであっという間に完食。
今回は食べきりサイズの小型ですが、これならばミニサイズでなくと大型や棹流しサイズ、もしくはケーキのようなホール型(!)でも、あっという間に完食してしまいそうです。
上品かつ卓越した技術に威厳を感じる羊羹ではありますが、体に染みていくような穏やかな風味は毎日食べても飽きの来ないような親しみやすさを備えており、長年多方面から愛されている理由がわかるような気がしました。
見た目の意外性だけではなく、どなたでも食べやすいテイストという観点からも、サイズも豊富ですしプレゼントにもぴったりかと思います。