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「若い選手はお嫌いですか?」。日本代表エディー・ジョーンズ大敗後記者に問う【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 現実を知った。

 ラグビー日本代表は9月21日、東大阪市花園ラグビー場でパシフィック・ネーションズカップ(PNC)の決勝でフィジー代表に17―41 で敗れた。

 日本代表は互いのミスが重なる序盤戦を経て、前半37分からの数的不利を強いられた約10分間を無失点で切り抜ける。その時点でスコアを10―10とタイに持ち込んでいたが、徐々に自軍のエラーと向こうの推進力に苦しんだ。

 10―13と3点差を追う後半16分ごろには、自陣からのアタックでパスを乱してその3分後に失点。10―20とされた。

 その後、ハーフタイムが明けてから初めて敵陣22メートル線エリアで球を持つ機会を得たが、起点のラインアウトを確保できず、まもなく「50・22」のキックを決められる。

 そのまま自陣ゴール前に滞留し、パワープレーでインゴールを割られたのは27分のことだった。スコアは10―27。

 直後の攻防でも被ターンオーバー、大外の防御の失敗が重なり、31分までに10―34とされた。

 フィジー代表は、日本代表が予選敗退していた昨年のワールドカップで8強入り。今大会には若手主体で臨んだが、同様に若返りを図る日本代表にとってはやや強敵だったか。

 試合後、エディー・ジョーンズヘッドコーチが立川理道主将とともに会見。質疑のさなか、怒気を含んだ言い回しも聞かれた。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

「まずは勝利したフィジー代表におめでとうございますと申し上げたい。ティア 1 のチームとしてタレントの育成に成功しているいいモデルを築いていると思っています。ほとんどのプレイヤーはフィジアンドゥルアでプレーをしていますし、選手層もとても深いものを培っている。タフなテストマッチをしていました。

我々ジャパンに関しては、エフォートはとてもよかったと思いますが、まだまだレベルが満たない部分がありました。

(強豪との試合で)ハードワークをもう少し長い時間し続けるレベルにはまだ達していませんし、その域に達するために今後もハードワークを続ける必要があると思います。本日は実力が不足していた」

——相手ボールの接点でジャッカルができなかった。

「今回の試合に関してはどこの部分でもフィジー代表に勝る面がなかった。セットピースでのコンテスト、ブレイクダウン、空中戦…。ですので、質問においては仰っている通りです。ハードワークは続けていますが、やはり我々の実力が不足していた。しかしながら、このハードワークを続けることで、2027 年までにはいいレベルに持っていけると思っています。

本日の試合は我々の現状を確認する、とても良い機会になったと思いますし、我々が不足している部分が何なのかといったところがうまく確認できるようなものだったと思います。痛みはもちろん伴いますし、悔しいですが」

——収穫は。

「チームは、やはり、強くなった。ハル(立川主将)のリーダーシップのおかげで、チームとしてのコネクション、連携は深まりました。フィールド上でのワークといったところでの連携もとてもよくなっている。チームカルチャーもうまく育成できている。ラグビーに関して、我々のアタックが最高にうまくいっていた局面も見られました」

——自陣からの脱出に手間取った。圧力がかかったのか。

「プレッシャーがかかった状況では、我々の何名かのプレイヤーに古いくせが戻ってしまった。オーソドックスなプレーに戻ってしまった。そういったジャパンでは、やはり強くないと実感できたと思います。

我々が他のチームと差をつけるところは、スピードであり、大胆さであり、果敢な判断ができるところだと思いますが、(この日は)相手のプレッシャーに負けてしまうところはあった。若い選手にとっては大きな学びだった」

——今大会を通じて、バックドア(後方のラインへの深い角度のパス)が繋がらないシーンが散見された。

「スキルです。その他に、何をどのようにお答えすればいいでしょうか?

 対戦相手が誰だったのかにもよると思います。カナダ代表やアメリカ代表が相手の時は我々のスキルが長けているように見えたかと思いますが、本日のフィジー代表のような相手に対してはどうしても時間とスペースを奪われる(よってミスが増える)。高いレベルの相手と対戦した時にも、ハイスキルをうまく使わないといけない。

 私は 30 年間、コーチングはしておりますが、スキルを伸ばすのにどれくらいの時間がかかるのかといった答えは持ち合わせていません。プレイヤーにもよると思います。早く学ぶプレイヤーもいれば時間がかかるプレイヤーもいる。こういったところを踏まえると、時間は必要だと思います。

 とても興味深いことに、ラグビーでキャリー(突進)を効果的に行うには2 つの方法があると思っています。

パスをしないか、もしくはパスを3回繋げるか。

 パスをしないでキャリーをするとなると、やっぱりサイズ、フィジカルなないと不可能です。今日に関してはフィジー代表がピック&ゴー(接点の位置から直進するプレー)を多用して、我々のディフェンスラインに立っている人数を少なくし、そこからパスを展開するアタックがうまくいっていたと思います。

 我々ジャパンとしては、3回パスを繋げるラグビーで世界一になっていきたいと思っています。3回パスを繋げてキャリーをすることで、ディフェンスにどんどんプレッシャーをかけていくことができます。しかしながら、先ほど皆様(報道陣)のなかにファイルを落とされた方がいるように——ここは冗談です——どうしてもボールを落としてしまうと、相手にプレッシャーをかけ続けることができません。日本代表にとって、ボールを落とすことがいかに致命的か…」

——10―10と同点で迎えた後半12分に、ヘッドコーチが全幅の信頼を置いていたという立川主将を交代させました。意図は。

「試合のペースをもう少し上げる必要があると判断しました。立川本人はもちろん言い訳はしないと思いますが、足の部分で苦戦しているところもあったと思います。そこで試合のペースを上げるために李(承信=フルバックで先発)を 10 番(スタンドオフ=立川の位置)で起用し、交代するという判断をしました」

 今後、真っ先に解決したい課題は何か。そう聞かれれば、10月26日のニュージーランド代表戦へ視線を向けた。

「これからジャパンは少しの間お休みに入りますが、やはりここから大事なことは、いかにニュージーランド代表に勝つかです。ゲームプランを立てる必要はあると思います。ニュージーランド代表はフィジカル面に長けたチームとなりますので、我々はスピードに乗ったプレーをしたいですし、戦術もスマートな形にして挑んでいきたい。

 これまでジャパンはニュージーランドに相手に接戦に持ち込めたこともないと思いますが(2022年に31―38と肉薄)、我々としては史上初めてニュージーランドに勝つチームになりたいと思っています。最後の最後まで相手を追い詰めていくことに集中していきたい。過去は過去ですので、いまは次に起こることに集中しています」

 やや気色ばんだのは、ここからだ。ニュージーランド代表戦を含めた秋のツアーのメンバー構成について聞かれ、記者へ問い返す局面があった。

——秋に向け、現在離れているリーチマイケル選手、姫野和樹選手をはじめとした年長者をカムバックさせる考えは。

「何度もお伝えしますが、本日もまたお伝えします。前回のラグビーワールドカップフランス大会では年齢層が高いオールドスコッドでした。今回就任時に任されたのは新スコッドの形成。これは何度もお伝えしている。その答えから、考えていただきたいです。

若い選手はお嫌いですか?

だから、私はそういった質問を何度も受けるのでしょうか。

100パーセント確信していますが、私は次の世代のラグビー選手たちを輩出しなければいけない。前回のラグビーワールドカップではずっと戦っていた選手に頼っていた。フレッシュなタレントの発掘が課題です。

 これまで私のフィロソフィー、目指すところが伝わっていなかったのであれば謝罪申し上げますが、100回でも何回でも繰り返して伝えます。新しいスコッドが必要です」

 チームの成長速度について見解を求められ、こう強調した。

「どうしても結果ベースでのご質問、答えになってしまうと思います。それは私としては望んでいることでは全くない。プレイヤーのエフォートをベースに答えるとしたら、私としてはある程度は思っていたよりも先に進んでいると感じています」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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