中国の脅威に備え台湾でミサイル演習
台湾軍は、4日、南部屏東県でスティンガーミサイルの実射演習を行った。一方、台湾との中間線越えを常態化させている中国軍は、この日も複数の軍用機を台湾側に侵入させており、緊張が高まる台湾海峡の現実を反映する日ともなった。
台湾軍の演習が行われたのは南部、屏東県の海岸。筆者が現場付近に到着したのは、午前7時半頃だったが、浜辺にはすでにミサイルの発射台が設置されており、迷彩色の軍用車両と軍人が行き交っていた。晴天に恵まれ、深緑を背景に青い海と空が広がる麗しい自然とは場違いだった。
アメリカ製の地対空ミサイル「スティンガー」の実射訓練は「神弓演習」と名付けられ、防空能力の向上を目指す。台湾の国防部によれば、演習には2連装スティンガーシステムと軽車両からスティンガーを発射できるアベンジャー防空システムを用いた。
演習は海上上空に打ち上げた標的やドローンに向け、浜辺から素早く照準を合わせ、スティンガーを発射し破壊するもの。ミサイルが目標に命中すると、まず閃光と煙が目視でき、その後、数秒してドーンという打ち上げ花火のような低い音が響いてくる。大部分のミサイルは目標に命中したが、目標をはずしたり海に落下したりしたように見えるミサイルもあった。
取材に応じた陸軍砲兵訓練指揮部の陳郁文中佐によれば、訓練では目標の発射から7秒から12秒で照準を合わせミサイルを射つ技術が求められるという。
一方、中国軍による挑発行為はこの日も続いた。台湾国防部の発表によれば、同日午前8時ごろ中国の戦闘機や爆撃機など合わせて24機の活動を確認し、そのうち9機が中間線を越えて台湾の西南空域に侵入したという。
「神弓演習」が始まったのは午前9時過ぎ。空域は違うものの台湾からすれば、その約1時間前には中国軍機が中間線を越えて自陣側に迫るプレッシャーを受けていたことになる。演習の撮影をしようとスタンバイしている台湾人の中には、無線を傍受して中国軍機の行動を察知した強者もいた。
台湾では、今月下旬にも大規模な軍事演習「漢光演習」が予定されており、日本からの旅行客の玄関口にもなっている桃園国際空港も演習の舞台になる。台湾の人々の日常生活は、確実に中国の脅威の影響を受けている。